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十色の追想  作者: 詩庵
出会い編。
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暴走。

ー怜燈視点ー

俺はなんと愚かだったのだろう。

俺のせいだ。

俺のせいで、二人を、皆を傷つけた。

俺が傲慢だってせいだ。

何が王だ、神だ。そんなものは何役にも立たない。

俺が、もっとしっかりしていれば、早く戻れていれば、

皆んなをここに連れて来なければ、そんな後悔ばかりが俺の心を蝕んだ。

ああ、もう嫌だ、どうして俺ばっかり俺達ばっかりこんな思いをするんだ。

憎い。

世界が、人間が、憎い。

プツっ胸の奥で何かが切れる音がした。

俺の意識は、闇に沈んでいった。


ー優夜視点ー

苦しい、辛い。僕は生まれて初めて感じる痛みに苦しんでいた。

身体が痛いわけでない、胸が、心が苦しい。

きっかけは些細な事だったのかもしれない。

それが今では、大きな負の連鎖を巻き起こしていた。

優朝が苦しんでる。

優朝は感情に人一倍敏感だ。

感じ取りたくもない感情が、勝手に流れ込んでくる。

いつもなら、どうにか処理するところなのだろうけど、今回はタイミングが悪かった。

皆が色々な感情を爆発させてしまったのだ。


その感情は優朝に流れ込んだ。

そして、耐えきれなくなった優朝は、

全ての感情をそのまま皆に返した。

どうにかしなければ。

僕は苦しみながらも、ゆっくりと身体を動かし優朝を抱きしめた。

「大丈夫。大丈夫。痛いの痛いのあっちのお山に飛んでいけ。」

怪我をした時によく響お姉ちゃんが言う言葉だった。


「……優夜、ごめん。ごめん。」

「大丈夫だよ。優朝は悪くないよ。悪くない。だから、僕を見て。」

しばらくして、優朝とようやく目があった。

「俺なんてことを……」

「優朝。僕を見てよ。笑ってるでしょ、僕痛くないよ。だから大丈夫。」

「嘘だ、そんな笑顔見たことないよ。」

「そうかな、こないだ優朝が柱にぶつかった時くらい笑ってるよ!」

「なんだよ、その例え、てか笑うなよ!」

「ごめん、笑っちゃった。

僕らは二人で一つだからさ、優朝が痛いのは僕が半分もらうよ。

だから、優朝は僕の半分笑ってよ。」

「なんだよそれ、意味わかんないよ。」

「でも、少しは元気出たでしょ?」

「出た、ありがとう。俺頑張るよ。」

そう言って優朝はゆっくりと立ち上がった。


「我、感情の番人なり。我が名に従い苦しみよ去れ。」

優朝がそう唱えると、先程の状態からは信じられないくらい心が軽くなった。

皆もそうみたいで、少しずつ落ち着きを取り戻していた。

響お姉ちゃんにも少し効果はあったみたいで、また眠ってしまった。

ただ、

「朧一族の童よ、よくやった。だが、少し遅かったみたいだな。」

その呟きに顔を上げると目の前には、

狼のような狐のような耳を生やした怜燈お兄ちゃんがいた。

その様子はいつもとは違い、目が真っ赤に染まり苦しんでいた。


「皆の者!早くこの場から離れるぞ!グラシエも手伝え!」

「分かりました!」

アウラ様に抱えられ、気付けば僕たちは山の麓まで降りていた。

「あれは?」

時雨お兄ちゃんがそう問うと、

「月夜一族の本来の姿だ。ただしあれは、暴走している。止めるには……」

「止めるには?」

「殺すか、封印するかだ。」

「「「「それはダメ!!」」」」僕達は声を荒げてそう叫んでいた。

「殺すのは絶対ダメです。」代表して時雨お兄ちゃんがそう言った。

「だが、あれは災害だ。放っておけばお前達だけでなく国すらも滅ぶぞ。

それに放っておいても彼奴は死ぬ。

それならば、誰かを手にかける前に楽にしてやった方が彼奴のためなのではないか?」


「ですが、怜燈さんは、俺達の兄で、家族です。俺達は怜燈さんを失いたくない!」

「封印!封印するかって言ってましたよね!

それができれば怜燈兄さんは死にませんよね!」

懇願するかのように紫音お姉ちゃんが問いかけると、

「封印できるのは、月夜の血族でも限られたもののみ。私達ではできぬ。」

そう冷たく返された。


気づけば、

怜燈お兄ちゃんの身体は完全に狐へと変わっていた。

身体は徐々に大きくなり、唸り声まで聞こえてきた。


「……気は進まぬが、グラシエ。やるぞ!」

アウラ様の掛け声と共にグラシエ様が、手を翳したその時、

「ダメーー!」

桜花お姉ちゃんがグラシエ様に飛びついた。


「何をする!あれは放置できぬ存在だ。

お前達のためにも消えた方が良いのだぞ!」

「ダメ!やめて!怜燈兄さんを、いじめないで!」

桜花お姉ちゃんがまともに話した初めての言葉だった。


「そうです!やめてください!

俺達からこれ以上何も奪わないでください。お願いします。」

時雨お兄ちゃんが頭を下げた。

「私達だって望んでしているわけではない。

そうするしか、世界のためにはそうするしかないのだ、今までもそうだったのだ。」


「そんなの知らない。そんなの間違ってる。そんな世界なら、いらない!!」

桜花お姉ちゃんがそう叫ぶと、

共鳴するかのように周りの木が形を変え、アウラ様とグラシエ様の視界を遮ったのだ。

桜花お姉ちゃんが走り出した。

それに続くように僕たちも後を追ったのだった。

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