兆し。
ー怜燈視点ー
皆の所へ帰ると、気まずそうな空間が出来上がっていた。
色々なことが起こった場所であり、神もいるためだろう。
「ごめん、お待たせ……」
そう声をかけると、いきなり紫音が飛びついてきて静かに泣き始めた。
「え、どうした、大丈夫か……」
混乱して、周りを見ると皆声を押し殺して泣いていた。
皆に説明を求めるのは難しいだろう。
そう思いグラシエへと視線を向けた。
「……なんだ。」
「いえ、別に、ただ説明していただけたらなーって思いまして。」
「……俺は何もしておらんぞ。したのは、あの子供だ。
それにしても、歳の割に皆大人びているのだな。普通なら、泣き叫んでもおかしくはないぞ。」
そう言って優朝を指さした。
指さされた優朝は、ビクッとして時雨の影に隠れてしまった。
ただ、その顔はとても苦しそうだった。
「おいで、大丈夫。怒らないよ。」
そう呼びかけると、優朝はおずおずとこちらにきて抱きついてきた。
その途端、強い不快感と共にたくさんの感情が流れ込んできた。
悔しさ、苛立ち、悲しみ、恐怖……後悔。
様々な感情が、ごちゃごちゃに混じった感情だった。
精神だけは人より成熟している俺でさえ、苦しくなる感情だ。
幼い心で耐えられるものではない。
そう思い俺は祈るのだった。
「我、月の加護を宿すもの。我が名に従い、その恩恵を与えたまえ。」
そう呟くと、あたりは静寂と光に包まれたのだった。
ーアウラ視点ー
転移した場所は牢屋だった。
そこには酷い怪我の凪と、青白い顔をした響が倒れていた。
来るのが、遅かったようだ。
「遅くなってすまない。帰ろう。」
そう呟き私は転移した。
雪山に戻るとそこはあたり一面、金色の光に包まれていた。
光は優しく、照らすものの心と身体を癒したのだった。
「王の祝福か。」
その光に、私も少し救われた気がしたのだ。
「……ここは?」
響が目を覚ました。
「あっ、あ、あ、いやーー!!触らないで!やめて!」
響は気が動転したかのように叫び狂った。
「響、ごめん。ごめん。助けられなくて、ごめん。」
そばに駆け寄った怜燈は、泣き喚く響と、眠る凪を抱きしめてそう呟くだけだった。
神の加護を以てしても、心までは癒せぬか……
今後、この傷は言える事はないだろう。
今回の事件は、彼らには過酷過ぎたのだ。
年端もいかぬ彼らには、この世界は残酷すぎる。
響と凪もそうだが、他の子達の傷も相当だろう。
怜燈よ、やはり神と神族と人は相容れぬのだ。
私は、どうする事もできなかった。
ただ、神の資格を持ちながらも神にはなれぬ、哀れな王を、神族を、
怜燈を見つめることしかできなかった。




