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十色の追想  作者: 詩庵
変化編。
155/163

厄災。

ー響視点ー

「ちょっと行ってくる!」

そう言い残し、怜燈兄さんはどこかに行った。

そんな兄さんは、夕飯の時間になっても帰ってこなかった。

行き先を言ってとか、帰る時間を約束してとか言いたいことが沢山あった。

だから私は兄さんに呆れつつも帰りを待つことにした。

紫音達が寝たのを確認し縫い物をしていると、そっと扉を開ける音がした。

扉に目を向けると、怜燈兄さんがこっそり入ってくるところだった。


「怜燈兄さん、何か言うことがあるんじゃない?」

「……え、えー、あー、こんばんは?」

「明日の朝食は十一人前で良さそうね。」

「響ごめん!」

「何について謝ってるのかしら?」

「それは、夕飯いらないって言い忘れたこと、とか……?」

「……怜燈兄さんにまともな答えを期待した私が馬鹿ね。

帰ってきたらなんて言うの?」

「あ、ただいま。」

「よろしい、じゃ怜燈兄さん外に出ましょうか!」

「……はい。」

私は、怜燈兄さんと外でたっぷりお話しした。

様子を見るに、少しは反省したみたいだった。

怜燈兄さんと出会って、もう八年が経っていた。

八歳だった私は十六歳に、怜燈兄さんはもう十八歳だ。

なのにどうして年々残念さが増しているのだろうか……

たまに怜燈兄さんが弟のように見える。

「わかったならいいんです。」

そう話を切り上げ、話を聞いた。

怜燈兄さんは予想通り、火の国の隠れ里紅蓮に行っていた。

あまりの無茶苦茶振りに、また小言を言ってしまった。


「多分、近いうちに大きな戦が起きるからだ。」

いきなり怜燈兄さんはそう言った。

思わず動揺してしまった。

だけど、それは時雨と凪も同じようだった。

「あ、別にすぐじゃないぞ!

多分百年内には起こるかなって。」

怜燈兄さんが慌てたように訂正していた。

「そっか、わかった。」

何故か凪だけは納得していた。

「怜燈兄さん、どういうことか説明してください。」

時雨が聞いていた。

「それはな、人間で言う厄災がそろそろ起こるんじゃないかなって。」

「厄災ですか?」

「あぁ、だいたい千年周期で起こる厄災なんだ。

そろそろ千年だなって思い出したんだ。」

「……」

時雨は困ったように黙ってしまった。

「怜燈兄さん、厄災ってどういうことなの?」

「……そうだな……響と時雨は、知っておいた方がいいかもしれないな。」

怜燈兄さんは悩んだようだったけど、意を決したように話し始めた。

「この世界には三つの世代があるのは知ってるよな?」

「神世代、真世代、新世代でしたっけ?」

答えたものの、全部読み方は一緒だった。

「合ってるよ。

それで今からするのは、神の楽園と呼ばれていた神世代が終わった話だ。

響と時雨は、どうして終わったか知っているか?」

「……神が表舞台から姿を消したからでしたっけ?」

時雨が答えた。

「当たらずとも遠からずってとこだな。

正しくは、三柱の神が消えて色々あったからなんだ。」

「色々って……」

「そこはどうでもよくてだな、原因は破壊神なんだ。」

「怜燈兄さん、破壊神なんて神聞いたことないわ。」

「だろうな。歴史にはほとんど残ってないと思うぞ。」

「ならどうして知っているの?」

「人間の歴史にはないが、神族の歴史には残ってるんだ。」

「なるほど、それで破壊神がどうしたの?」

「破壊神は、まぁ色々良くないことをして時空間に封印されたんだよ。

だけど、だいたい千年周期で時空間がこの世界と繋がって影響を受けるんだ。

簡単に言うと、危険な何かが生まれるんだ。」

怜燈兄さんは強引に話をまとめた。

「それがどうして、神族を引き入れることに繋がるんですか?」

よくわからない話を聞いても時雨は冷静だった。

「それは生まれる厄災の強さが想定できないからだろう。

記録も残ってるか怪しいくらいだ。」

「それで、神族をですか……」

「あくまで俺の予想に過ぎないけどな。」

怜燈兄さんの話は、正直理解できなかった。

どこか遠い他人事のような気がした。

「はい!この話はおしまい!皆寝よう!」

そう言って怜燈兄さんは、私達を家に入れ布団に寝かしつけた。

その日の夜はなかなか眠れなかった。

よくわからない不安だけが、胸につかえていた。

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