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十色の追想  作者: 詩庵
変化編。
156/163

平穏。

ー鷹丸視点ー

俺はやっぱり怜燈達が怖い。

そしてなにより神族が怖かった。

琰陽を信じるとは言ったものの、恐れている自分がいた。

あの日以来、彼らは穏やかに接してくれていた。

三食全て作ってくれるし、会話もしてくれた。

「響ちゃん、ご馳走様。今日も美味しかった。」

「はい。それは良かったです。」

これが響ちゃんとの毎回のやりとりになっていた。

響ちゃんは常に笑顔で、穏やかな口調で話す。

まるで春の日差しのような子だ。

なのに、ずっと一緒にいると何故か落ち着かなかった。


「あの、鷹丸さん。ちゃん呼びやめませんか?」

ある朝食後、いつものやりとりをして去ろうとすると響ちゃんに呼び止められた。

「えっと、嫌だったか?ごめん。」

「い、いえ。その多分鷹丸さん達と私そんなに歳離れてないので……

その、何か落ち着かないと言いますか。」

そう言った響ちゃんの顔は、少し気まずそうだった。

「響ちゃん、今いくつ?」

「今年で十六歳です。鷹丸さん達はおいくつですか?」

「それくらいだよな。俺達は今年十九歳だ。」

「……十九歳ですか?」

響ちゃんは驚いたような顔をしていた。

「見えないか?」

「いえ、怜燈兄さんの一つ上だなって。」

響ちゃんは、いつもの笑みを浮かべて笑った。

「呼び方変えようか?何がいい?」

「いいえ、今まで通りで大丈夫です。

変なこと言ってすいませんでした。」

そう言って響ちゃんは足早に去っていった。

どうしていいか悩んでいると、

「鷹丸?何してんだ?」

琰陽に声をかけられた。

「響ちゃんと年齢の話してたんだ。響ちゃん十六歳だってさ。」

「まぁ、そんなもんだよな。

さ、少し動こう!」

琰陽はそう言って歩き出した。

「そうだな。」

琰陽の横に行くと、

「でも、少し大人びすぎてるよな……」

琰陽は独り言のように、小さく呟いていた。


ー紫音視点ー

私がお皿を洗っていると、姉様が戻ってきた。

「姉様、お皿持ってきてくれたの?」

そう聞くと、

「え、あっ。

紫音ごめん、お皿置いてきちゃった今取ってくるわ!」

姉様は急いで戻っていった。

そして、

「遅くなってごめんね、これお願いします。」

そう言って人間達の使ったお皿を置いた。

「わかったわ。けど、姉様どうしたの?何かあった?」

手を止めて姉様の方を見ると、

「なんでもないわ!」

姉様は笑っていた。

「人間に虐められたの?嫌なこと言われた?

待ってて今すぐ私が」「違うわ。」

姉様が私の言葉を遮った。

「違うのよ、ただ年齢を聞いたら思ったより年上で驚いたの。」

「いくつだったの?」

「十九歳だそうよ。」

「え……」

予想もしていなかった年齢、驚いてしまった。

「てっきり、十五、十六歳くらいかと思ってたわ。」

「そうよね。」

私がそう言うと、姉様は安堵したようだった。

精神が幼い。

年齢を聞いてそう思ってしまった。

だけど、そう思うほど彼らの言動は幼く見えた。

人間は精神の成長が神族よりゆっくりだとはいえ、しっくりこなかった。

怜燈兄さんに騙される様子や理想を語る様子、とても大人とは思えなかった。

「で、でも人間の大人は二十歳なのでしょう?

そういうもんよね!」

姉様は無理やり納得しようとしていた。

「そうよ、それに男は元々いつまでも成長しないっていうしね!

凪!掃除する時はいつも窓開けてって言ってるでしょ!」

返答しつつ、私は家の掃除をする凪に言った。

「あ、ごめん、紫音忘れてた……」

毎度のやりとりに呆れつつも、嫌だとは思わなかった。

「よし、水拭き終わったわ!

姉様、凪の掃除手伝ってくるわ!」

「紫音いつもありがとう!

じゃあ私は、洗濯をしてくるわ!」

そう言って姉様も去っていった。

こうしていつもの日常が、始まるのだった。

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