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十色の追想  作者: 詩庵
変化編。
154/163

潜入。

ー怜燈視点ー

皆本当に大丈夫だろうか……

家族が素直すぎて心配になった。

皆優しいから、いつも俺の演技で騙されてる気がする。

善意を利用してるようで、少しだけ胸が痛んだ。

それでも、俺が止まることはないだろう。

だって、それが最善なのだから……


俺は今、再び紅蓮の門の前に来ていた。

記憶の改竄は優夜なら容易だろう。

けれど、一つ懸念があった。

襲撃してきた人間達は思っていたより強かった。

だからこそ、知る必要があった。

里に入るには、特殊な結界を潜らなければいけなかった。

別に害はないが、潜れば侵入はすぐに気づかれてしまうだろう。

俺は待った。

火の国の隠れ里「紅蓮」には、多くの人間が出入りしていた。

もちろん検査はあるが、その荷物に上手く潜り込めば簡単だった。

警備体制見直した方がいいんじゃないか……?

紅蓮は隠れ里には見えないほど栄えた街だった。

多種多様な店があり、ものがあった。

まるで、普通の街だ。


「パパ!あれ買って!」

「駄目だよ、ママに怒られちゃうぞ。」


「また明日!」

「またねー!」


「今日飲みに行くか?」

「行く行く!」


平和だった。

そんな人混みを抜け、俺は里の中心へ向かっていた。

「静音透過。」

俺は気配と姿を消し、ある建物に入り込んだ。

コンコン。

コンコン。

コンコンー。

音が変わった。

「……解除。」

隠された扉はすぐに開いた。

扉の先は、下りの階段が続いていた。

そして、壁は土製なのに階段は金属製だった。

まずいな……

俺は狐の姿で、先に進むことにした。

階段を下り切った先には、一つの部屋があった。

「北門、二十二時異常なし。」

「南門、異常なし。」

部屋の中央には、大きな水球が浮かんでいた。

それを十人がじっと見ていた。

所々に小さい水の波紋が見えた。

おそらく人の動きだろう。

下には大きな術式陣が描かれていた。

無理だな。

俺は諦めて、その場を去ったのだった。


「で、怜燈兄さん。兄さんは、一体、なにをしていたのかしら?」

目の前には、響のしかめ面があった。

「いや、な?あの、調べ物と言いますか。」

「諦めて帰ってきたんでしょ?

全く、怜燈兄さんは、どうして一人で勝手に動くんですか?」

響は笑顔だった。

「……すいません。」

「本当に、なんで怒られてるか、分かってますか?」

「一人で行ったからでしょうか?」

「そうです。

一人での勝手な行動は駄目だと、いつも言ってるのは誰ですか?」

「俺です……」

「言うことは?」

「勝手に隠れ里に行ってすいません。

これからは、お土産買ってきます。」

「違うでしょ!

一人で行かないでしょ!!」

俺は今、響に怒られている。

こっそり行ったはずなのに、夜更けに家に戻ると響がまだ起きていた。

外で正座しながらかれこれ一時間小言を言われていた。

「……怜燈兄さん、私だって言いたくはないわ。

でも、単独行動は危険だわ。」

「そうだよな、響ごめん。」

「いいのよ。それで、里には忍びこめそうなの?」

「微妙だな。

入るなら門を潜るのが一番いいけど、多分人の姿では難しい。

それと想定よりは人が多いな。」

「そう。だと、難しいわね。」

「全員となるとほぼ不可能だな。」

「当たり前よ。するなら身近な……そういえば、優朝と優夜が連れてきた人間は?」

「それなら昨日優夜が記憶消して近くの村に置いてきただろ?」

「そうじゃなくて、あの人間は里抜けしたんでしょ?

なら、普通に記憶改竄しなくてもいいんじゃないかしら。」

「と言うと?」

「だって、あの里はほとんどが裏の人間でしょ?

里抜けなんて普通は許されないんじゃないの?」

「そうなのか?」

「琰陽さんが言ってたのよ。」

響の話しが本当なら、仲間殺しの疑いは晴れる。

後は誓約の記憶さえどうにかできれば……

「なるほど。誓約は後々どうにかできるな。

すると、長だけどうにかすればいいな。」

「そこが難しいんじゃない?」

「そうだな、でも琰陽さんが穏便にって言ってたしな。」

「約束守る気あったのね。」

「そりゃね。その方がいいしな。」

ガタッ。

「?!あ、凪と時雨か。どうした?」

「凪が厠に行きたいって。」

「時雨!」

「ほんとだろ?」

「ほんとだけど、言わなくても……」

「凪、時雨、入り口で騒がないの。皆が起きちゃうわ。」

「やば、凪行くぞ。」

そう言って時雨は凪を連れて行った。


「怜燈兄さん、さっきの話しって人間の里の件ですよね?」

戻ってきた時雨が聞いてきた。

「そうだな。」

「怜燈、兄さん。俺思ったけど、どうして人間、神族欲しいかな?」

突然凪が言ってきた。

「それは、戦力が欲しいからだろ。」

時雨が言うと、

「別に、今でも足りてる、と思う。人間、強かったから。」

「!!わかった!!わかったぞ凪!流石だ!」

凪の言葉でようやく合点がいった。

「何が?」

「それはな……」

「怜燈兄さん、静かに!」

言う前に響に注意されてしまった。

「それは?」

「多分、近いうちに大きな戦が起きるからだ。」

「「「え……」」」

三人は驚くばかりだった。

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