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十色の追想  作者: 詩庵
人間と神族編
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迷いと覚悟。

ー琰陽視点ー

「いらしたんですね。」

怜燈達の顔は、穏やかそうに見えた。

「怒って、ないのか?」

「怒ることなんてありますか?」

「だって、全部聞いたんだろ?」

「聞きましたよ?」

「じゃあ、怒ってるんじゃないのか?」

「どうしてですか?

琰陽さんは、何も悪くないではありませんか。」

怜燈は不思議そうに首を傾げた。

「……怜燈、許して欲しいなんて言わない。言い訳もしない。

すまなかった。」

俺には、それ以外の言葉が思いつかなかった。

意図したわけじゃない。

けれど、彼らを傷つけた事実は変わらなかったから。

「申し訳なかった。」

鷹丸も頭を深く下げていた。

怜燈達の目が怖くて、頭を上げることはできなかった。

「琰陽さん、鷹丸さん、頭を上げてください。」

怜燈が言った。

「ありが……」「俺の名前……」

礼をいうより先に、鷹丸が呟いた。

「あぁ。申し訳ありません。我々に名を呼ばれるのは不快でしたか?」

「い、いや。てっきり知らないもんだと。」

「……えぇ、知りませんよ。ただ、そう呼ばれていたので呼んだまでです。」

怜燈は笑っていた。

「そうか。」

「はい。これから知っていこうかとは思ってはいますよ。

ですから、改めまして私は怜燈です。」

「俺は、影来鷹丸だ。」

「ご丁寧にありがとうございます。」

「怜燈さん、貴方は、何を、企んでるのですか?」

鷹丸は緊張したままだった。

「おい、鷹丸、何言ってるんだよ。」

「おかしいだろ。あれだけ警戒されてたんだぞ。

こんなに急に態度が変わるなんて、何か裏があるに決まってる。」

「そんなわけないだろ。」

「そんなことあるんですよ。鷹丸さん、ご明察です!」

怜燈が手を叩いていた。

「怜燈?」

「琰陽さん、前も言ったかもしれませんが、

あまりすぐに信じない方がいいと思いますよ。」

心配するかのように言われてしまった。

「何が目的だ?」

鷹丸は、かなり警戒しているようだった。

「それは、当初の予定通り琰陽さんの里に行きたいなっと。」

「それは無理だ。あんた達はすでに目をつけられてる。

言ったところで始末されるのがおちだ。」

「ご安心ください!そこはちゃんとどうにかいたしますよ!」

その言葉には、何故か違和感があった。

「どうにかって。」

思わず聞くと、

「そうですね、里の人間全員の記憶弄るのと、

長を始末するのどちらがいいですか?」

「え……?」

「怜燈お兄ちゃん!それ僕頼りだよね!?」

「まぁそうなるな。」

「えー……」

「優夜、頑張れ。」

「優朝まで酷いよ!」

困惑する俺をよそに怜燈達は会話していた。

「そんなのいいわけないだろ!」

鷹丸が叫んでいた。

「なんでですか?あ、別に記憶を弄っても健康には問題ないですよ!

個人的には穏便な方がいいので、記憶改竄がおすすめです!」

「いや、そうじゃないだろ……」

鷹丸は戸惑うばかりだった。

「怜燈、記憶改竄ってどれくらいかかる?」

「は?琰陽、お前何言ってるんだよ。」

「そうですね、優夜どれくらいかかる?」

「あの規模なら、ざっと一か月じゃないかな。」

「だそうです。」

「具体的には、どうするつもりだ?」

「そうだね、まず輝鞠関係の記憶を消して、琰陽が帰って来た記憶も消すよ。」

「可能なのか?」

「おい!」

「鷹丸、少し静かにしてくれ、頼む。」

「琰陽……」

「できるできないじゃなくて、やるの。」

「少しずつやるのか?」

「そうだよ。少しずつしかできないしね。」

「違和感出るだろ?」

「そうかもね。」

「思い出すかもしれない。」

「そこは上手くやるから。

琰陽は、記憶を弄るって方向でいいんだね?」

「あぁ。」

「琰陽、それで本当にいいのか?!」

「鷹丸、俺なりに考えたよ。

でも、このやり方が一番確実だ。

俺はもう信用されてない。普通に帰っても意味なんてない。」

「そうかもしれないが、記憶を弄るなんて聞いたことない。」

「そりゃそうだよ。僕達は神族だもん。」

「罪悪感はないのか?」

「え、なんで?悪いことしてないよ?」

優夜は、分かっていないみたいだった。

「琰陽、本当にいいのか?」

「鷹丸、ごめん。約束なんだ。」

「……本当に、正しいのか?」

「正しくない。だけど、一番上手くいくから。

それに、俺は親父を殺したくない。

優夜、本当に誰も傷つかないんだよな?」

「それは、僕の神族の名にかけて保証するよ。

誰も傷つけない。」

「……」

鷹丸は納得できないようだった。

俺だってできない。

けれど、そうするしかなかった。

「鷹丸、俺の勝手に巻き込んでごめん。

でも、一緒に背負ってくれないか?」

「……俺は納得できない。

でも、琰陽を信じるって約束した。

……分かったよ。でも、俺は納得はできない。それだけは忘れないでくれ。」

鷹丸は、相当迷った上で俺を信じてくれた。

「あぁ。忘れない。」

その信頼を裏切ろうとは、思わなかった。

これは、俺が俺のためにしたことなのだから……

ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます。

これにて三部は完結いたしました。

ですが、物語はまだまだ続きます。

これからもよろしくお願いいたします。

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