話のその先。
ー凪視点ー
怜燈兄さんが、難しいこと言ってる。
そう思った。
「この世界は、創造神クレアシオンに創られた。
ここまでは皆知ってるだろ?」
「ええ。
そのあと、クレアシオン様は他の属性の神をお創りになった。
だったかしら?」
「姉様、それって御伽話の話?」
「そうよ。昔母様が聞かせてくれたでしょ?」
「うん。
全部で三十一柱の神様が創られたって言ってたわ。」
「そうね。流石紫音!偉いわ!」
「もう!姉様、子供扱いしないでよ!」
「紫音が可愛すぎるんだもの!」
響姉さんと紫音がそんな話しを始めてしまった。
「響姉さん、創造神が創った、のは七柱じゃない、の?」
「え?」
「ちょっと凪!姉様の話が間違ってるって言ってるの?」
「いや、そうじゃない。俺の母さんの話し、違う。」
「……そう。」
そう言うと紫音は何も言わなくなった。
「まぁまぁ、その話は地方性が出るからまた今度な。
で、話しを戻すが、とりあえずクレアシオンは神を創ったんだ。
そして、人間を創ったのもクレアシオンだ。」
その話に皆が頷いていた。
「人間は、クレアシオンが創った唯一の種族なんだ。
そして、創られ方は神族と同じなんだ。」
「人間は神族ってことなの?」
桜花が首を傾げていた。
「桜花、神族が神族たる理由は知ってるか?」
「体内に神力があるかでしょ?」
「半分当たりで半分間違いだな。」
「違うの?」
「そうだな、神力の有無は確かに神族か見分ける点に置いては重要だ。
だけど、どうして神族は神力を持ってると思う?」
「神族だからじゃないの?」
「いいやそれはな……」
「役割があるから。」
突然蓮華が言った。
「あぁ、その通りだよ蓮華。」
「役割?」
「うん、神族は役割を持って神に創られた種族なの。」
「わからない。」
「怜燈兄さん、それがどうしてさっきの話と繋がるんですか?」
桜花と時雨は理解できていないみたいだった。
「簡単に言うとな、その役割を遂行するために神力が与えられたんだ。」
「そこじゃなくて、さっきの人間を嫌えないの方です!」
「あぁ、それは今から言うんだけど、
クレアシオンは、人間を創った時なんの役割も与えなかったんだ。
だから人間には、神力がないんだ。
でもその代わり、心を与えたんだよ。」
「心ですか?」
「そう。
自身で考え行動し、感じる力を与えたんだ。」
「神族には、心がないんですか?」
「それは違う。違うんだよ。
神族は、鈍いんだ。
自分のために、心を使えないんだ。」
怜燈兄さんの声は、憐れむようだった。
「それと、クレアシオンは人間に大きな祝福を与えたんだ。」
「祝福?」
その言葉に鈴音が反応していた。
「愛の祝福だ。」
「愛の祝福?」
「神と神族が人間を愛さずにはいられなくなるほどの祝福だ。」
「……それって、アウラが私のこと、好きって言ってくれてるのも?」
「鈴音、ごめん。言い方が悪かったな。
アウラ様は鈴音のこと、自分の意思で愛してるんだ。
アウラ様の想いは本物だから、な?」
怜燈兄さんは慌てて、泣きそうな鈴音に謝っていた。
「ねぇ、凪お兄ちゃん、凪お兄ちゃんはこの話しの続き知ってるでしょ?」
突然蓮華にそう言われた。
「え、俺?」
「うん。凪お兄ちゃん、神族だよね?」
「そ、そうだけど、別に神話、詳しくないから……」
「神話じゃないよ。事実を聞いてるの。」
皆が俺を見ていた。
怜燈兄さんは、鈴音を宥めるのに苦労していて、
蓮華は、真っ直ぐ俺を見つめていた。
俺は、あまり話したくなかった。
「凪、速くしろ。」
時雨にそう言われてしまっては、逃げれなかった。
「愛の祝福、強くない。大切にしたくなる、くらい。」
頭ではちゃんと言えるのに、声は上手く出なかった。
「凪、大丈夫だ。ちゃんとわかるぞ。」
「神族、もの捨てられない。手放せない。」
「手放せないの?」
「うん。心変わらない。
神族、長生き。好き、ずっと好き、変わらない。」
自分で言ってて恥ずかしくなった。
「蓮華、変わって。」
「私詳しく知らないわ。」
絶対嘘だ。
そう思うのに、言えなかった。
「鈴音、こっちにいらっしゃい!」
響姉さんが、鈴音に優しく呼びかけた。
「響姉……」
「ほら、もう大丈夫よ。大丈夫。
……怜燈兄さん、速く凪と変わってあげて。」
「あ、あぁ。それでな、」
怜燈兄さんと変わってもらってようやく解放された。
「神族は、疑わないんだよ。
一度そうと言われれば、そうなんだ。
だから、人間にどんなことをされても、完全には嫌えないんだよ。」
「最初から、そう言ってよ。」
紫音は不満気だった。
「いや、どう話していいかわからなかったんだよ……」
「で、それはそうとして、嫌えないから家族が危険でもいいとは言わないわよね?」
紫音が鋭い視点を投げていた。
「それは絶対ない。
それに、俺達は忘れてはいけないんだ。
俺達がされたこと、したこと。
だけど、選択はできるんだ。」
「選択ですか?」
「あぁ、ここ一ヶ月、人間がずっと側に居たよな。
そして、思うことあったんじゃないか?」
怜燈兄さんは俺達に問いかけた。
「響、どう思った?」
「わからないわ。だけど、琰陽さんは悪人じゃないと思う。」
「蓮華は?」
「人間は嫌い。けど、生活は楽しそうだった。」
「時雨は?二人で話してただろ?」
「怜燈兄さん、見てたんですか?」
「いいや、聞こえたんだよ。」
「尚更嫌です!」
「で、どう思った?」
「どうって、人間ってそれぞれ、違うなって、思いましたよ。」
「そうだな。優夜、優夜はさっきどんな記憶を観たんだ?」
「襲ってきた人間は、琰陽の国の人間だった。
だけど、琰陽達も狙われてた。」
「優夜、ありがとう。」
怜燈兄さんは、ゆっくりと皆を見回した。
「……実はな、俺達の存在、結構知られてるんだ。」
別の意味で動揺した。
この人、世間知らずだ。
そして、前も言ってた。
多分、皆同じ意見だったと思う。
驚きではなく、気まずさの沈黙が流れた。
沈黙を破ったのは、響姉さんだった。




