願望。
ー琰陽視点ー
「よく聞いてね!」
そんな優夜の言葉から始まった話は、想像を絶するものだった。
「まず、敵のことね!
実は、あいつら紅蓮の人間でしたー!」
パチパチ!
「は?おい!どう言うことだよ?!」
「次!目的がね、誓約の媒体の破壊と琰陽達の始末でしたー!」
「え……」
「で、最後はね。
ここにいる琰陽のお知り合いは、他国からの侵入者で、
情報漏洩してましたー!
ちなみに二人の知る輝鞠は、大量にいる複製体の一つでしたー!」
パチパチ!
「ちょっ、いきなりどう言うことだよ?!冗談か?」
「冗談って思ってもいいよ!
……事実は変わらないけどね……」
「いきなり意味がわかんねぇよ!」
「別にいいよ。わかって欲しくて話したわけじゃない。」
「じゃあ、なんで……」
「うーん。聞きたかったんだ!
僕の家族を危険に晒した気分はどう?」
「え……それは……」
「答えられないよね!わざとじゃないもんね!」
「いや、その……」
「何?言いたいこと、あるなら聞くよ?」
「いい加減にしてくれ!
俺達人間は、お前ら神族の玩具じゃないんだぞ!」
突然鷹丸が叫んだ。
「玩具だなんて!玩具に失礼だよ!」
優夜は声を上げて嗤っていた。
「お前さっき言ってたよな。
敵は、俺達を始末しようとしてたって。
なら、俺達は被害者だろ?!」
「そうだね!」
「それに、誓約の媒体の破壊だって……」
「うんうん。わかるよ!
理不尽だよね!怒りたいよね!」
優夜は嗤うばかりだった。
「でもね、僕思うんだ!
全ては人間のせいじゃないの?
だってね、人間達が僕達のところに来なければ、
そこの人間がもっと馬鹿だったなら、
琰陽が欲を出さなければ、
この出来事は起こらなかったはずだよ?
全ては人間の選択が招いたことだよ。」
「誓約をさせたのも、殺したのも、全部お前達だろ!」
「そうだよ。
でも、そうさせたのは人間だよ?
人間が僕達の世界に入ってこなければ全ては、起きなかった。
そうでしょ?琰陽。」
「琰陽!聞くな!聞かなくていい!」
「いい、いいんだ。優夜の言う通りだ。
俺が甘かった。」
「その通りだよ!」
「でも、それは、命を粗末に扱っていい理由にはならない!」
「は?」
優夜の声が一気に険しくなった。
「粗末に扱うね、誰のこと言ってるの?」
「そ、それは……」
「命を粗末に扱ってるのは、人間の方だよね?」
「そんなわけないだろ!」
「うるさい、誰が喋っていいって言ったの?
僕は今、琰陽に聞いてるんだよ?」
そう言った優夜の声は、恐ろしかった。
「人間が、神族に、そう言う、扱いをしてるのは、知ってる。
だけど、だけど、俺達がしてるわけじゃない。」
「そう。そんなのどっちでもいいよ。
この際だからはっきり教えてあげる。
僕は人間も神族も嫌いなんだ。家族以外、皆嫌いなの。
意味、わかる?」
「じゃあ、どうして、俺を生かす。」
「琰陽には、助けられたから。」
「本当にそれだけなのか?」
優夜は怖い。
けれど、それだけじゃない気がした。
「お、おい、琰陽、それ以上は……」
鷹丸が小さい声で俺を止めていた。
「……それだけだよ。」
「俺が助けたのは、あの一度きりだ。
それに、前ヒントを教えてくれた時に貸し借りないだって……」
「記憶力はいいんだね。」
「優夜、優夜はまだ、襲ってきたやつのこと、
怜燈に言ってないんじゃないのか……?」
「…………」
「そう、なのか?」
「好きに思えば?
ただ、僕達は、人間が嫌いなんだ。」
優夜の顔は、先程までとは少し変わって悲しそうだった。
「言えばいい。」
「え?僕の話聞いてた?」
「聞いてた。だから、言えばいい。
優夜達を襲った奴らが、俺達の里の人間だったこと。
侵入者を見逃していたこと、
欲を欠いたこと、
全て事実だ。だから、言えばいい。」
「なんで……」
「俺は、俺は優夜達のこと嫌いじゃない。
それに、優夜達のこと、信じたい。」
「そんなの、理想論だ!」
「そうだ、ただの理想論だ。
だけど、それを唱えるのが人間だ。」
「……琰陽、やっぱり琰陽は愚かだよ。」
「そんなことはない。
どうせ里からも消される運命だ。
なら、優夜達を信じてからでも遅くはない。
鷹丸、そうだろ?」
「……なわけ……いや、でも……
…………わかった。俺は、琰陽を信じる。」
鷹丸は、悩んでいた。
けれど、俺を信じてくれた。
「琰陽、わかった。
だけど、この先誰がどう出るかなんて、僕にはわからないよ。
琰陽のことは嫌いじゃない。
だけど、僕の一番は家族だから。」
優夜は、そう言い残し去っていった。
それが、どんな結果をもたらすかなんて俺には予測もできなかった。
ゴンッ
後頭部から鈍い音が響いた。
「琰陽!正気か?!」
「鷹丸、俺はいたって正気だ。」
「嘘つけ!正気ならさっさと逃げるだろ!」
「ここで逃げても、俺達は助からない。
どうせ、長の命令だろ。
それなら逃げ帰っても、意味はない。」
「それでも、もしかすれば……」
「失敗しても、結果が速まるだけで済むんだ。
たまにはいいだろ?
それに、俺が生きてる限りは、責任取るからさ。」
ゴンッ、ドスッ。
今度は後頭部とお腹に衝撃が走った。
「痛っ、なんだよ!」
「お前について行くのは、俺が決めたことだ!
無理矢理なんかじゃない!」
「死ぬのが怖いんじゃないのか?」
「怖いよ。でもな、それ以上にお前に全部押し付けるのが嫌だ。」
ペタ。
「……熱はないな。とうとう恐怖で頭がやられたか……?」
「うっせぇ!俺は正常だ!
もうやけだ!琰陽、お前の選択に全部賭けてやるよ。行くぞ!」
そう言って鷹丸は、怜燈達の元に進み出した。
やっぱり、鷹丸壊れたな……
俺はそう思わずにはいられなかった。
怜燈達の元に戻ると、既に怜燈達は集まっていた。




