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十色の追想  作者: 詩庵
人間と神族編
148/159

後始末。

ー琰陽視点ー

目の前で沢山の人が死んだ。

ほんの一瞬の間に、片手では足りない数の命が消えた。

怜燈達はそれを平然と受け入れているように見えた。

それに、この惨状を起こしたのは彼らだ。

けれど、守ってくれたのも彼らだった。


「響ちゃん、怪我は?」

「琰陽さん、怖がらせてしまって申し訳ありません。

琰陽さんこそお怪我はありませんか?」

響ちゃんはそう言って手を伸ばしてきた。

「あ、あぁ……」

バッ!

その手を俺は、何故か弾いてしまった。

響ちゃんは桜色の瞳を大きく見開いた。

「あ、ごめんなさい。急に触ろうとしてしまって。

驚きましたよね……」

響ちゃんは小さく笑って離れていった。

「こちらこそごめ……」


「怜燈お兄ちゃん!これどうする?」

少し離れたところでは、双子のどちらかが死体を集めていた。

「優夜!頼んでいいか?」

「わかったよ。」

優夜は死体に手を当てた。

そして放したかと思うと、次に手を当てていた。


「姉様!ここはこの形でいいの?」

「えぇ。こっちの方が丈夫になるわ!」

「桜花!これ貼ってきてくれない?」

「紫音姉さん、わかった。」

紫音は桜花に何かが描かれた紙を渡していた。


「蓮華!終わった!」

「優夜お疲れ様。後は私がするわ。」

「氷結。」

そう言った蓮華は、死体の山を凍結させていた。


まるで怜燈達だけが、日常にいるかのようだった……


「鷹丸、大丈夫か?」

「……」

「鷹丸?鷹丸!」

「え、あ、すまん。考え事してた。どうかしたか?」

「いや、鷹丸の顔色が良くなかったから、大丈夫か?」

「大丈夫だ。俺のことは気にするな。」

「そんなこと言うなよ!」

「じゃあ聞く。琰陽はさっきのあいつらを見て、どう思った?」

「どうって、それは……」

「怖かったか?かっこよかったか?頼もしかったか?

なぁ、教えてくれよ。」

「俺は、ただ、すごかったとしか……」

「聞き方を変える。

あれが、もし、俺達に向けられていたらどう思う?」

「それは、……死んだと思う。」

「そうだ、俺達はあいつらにとっていつでも殺せる存在なんだぞ?!

それでも、お前はまだあいつらに固執するのか!?」

「固執だなんて、鷹丸、一旦落ち着けって。」

「これが落ち着いていられるか?!

目の前で沢山の人が死んだんだぞ?それに、あれは……」

「鷹丸?どうしたんだ?」

「あ!いたいた。琰陽さん、聞きたい事があるんだ!」

ビクッ

鷹丸の身体が大きく震えた。

「鷹丸?」

「まぁまぁ、そんなに怖がらないでよ。

いきなり変なことはしないからさ!」

優夜は笑って言った。

「優夜、どうしたんだ?」

「琰陽さんまで、そんなに緊張してどうしたの?」

「いや、別に……それより優夜で合ってるか?」

「うん!合ってるよ!」

「良かった、聞きたいことって?」

「あー、こっち来てよ!」

優夜に案内された先には、人が倒れていた。

「これ知ってる?」

優夜は勢いよく倒れている人の髪を掴み上げた。

「ちょっ、何してるんだ?!」

「え?顔見せてるだけだよ?」

「じゃなくて、髪の毛は掴んじゃだめだろ?!」

「……そうだよね!」

ドサッ

優夜は、パッと手を離した。

「よいしょっと。これで見える?」

そこにいたのは、泡沫のおじさんだった。

「そ、それって……」

「殺してないよ。気を失ってるだけ。」

「どうしてここに、まさか連れて来たのか?!」

「違うよ。逃げてたから捕まえただけ。」

「逃げてた?」

「うん。逃げてた。」

「その人達をどうするつもりだ?」

「え、始末するけど?」

「……それはやめてくれないか?」

「なんで?」

「その人は、友達のお父さんなんだ。」

「へー、で?」

「だから、殺さないでくれ!」

「…………わかった。記憶だけ消すね。」

「あ、ありがとう!」

長い沈黙の後、優夜はそう言った。

「じゃあ次。襲ってきた奴のこと知ってる?」

「え、そんなの知ってるわけないだろ?」

「ふーん。そっちの人間は知ってるみたいだけどな。」

そう言った優夜は、鷹丸を見つめた。

「し、知らない!俺は何も知らない!」

普段の冷静な態度からは、想像できない姿だった。

「知らないならいいよ!」

優夜は笑っていたけど、目は笑っていなかった。

「僕が教えてあげるね!」

優夜は始終笑顔だ。

けれど、俺には何故か歪に見えていた。

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