襲撃者。
ー琰陽視点ー
「凪……」「凪!ごめん!ありがとう!」
怜燈が大声で、叫んでいた。
そんな怜燈は、少し離れたところで三人を一気に相手していた。
「怜燈!大丈夫か?!」
「琰陽さん!まだいます!
鈴音!索敵!蓮華は凪と協力して皆を守れ!」
「うん!」
「わかった。」
「はい!!」
三人が一斉に返事をした。
「風廻。」
「水壁。」
周囲に風が吹き荒れ、水の壁が俺達を囲んだ。
「蓮華!北西と南西!」
「氷槍!」
「後ろ!」
「氷壁!」
「水鏡!」
蓮華が氷を放った瞬間、どこからか風の刃が飛んできた。
刃は、蓮華の壁を壊し凪の技も貫通した。
「土壁!」
ぶつかる寸前で、鷹丸が蓮華を守った。
「無茶すんな!」
「ご、ごめん、な、さい……」
蓮華は、驚いたようだった。
辿々しく謝っていた。
「ご、ごめん。言い過ぎた。」
「皆もう少し、真ん中寄って!」
黄緑色の少女が叫んだ。
その顔には、大粒の汗が浮かんでいた。
「鈴音!風壁、解け!」
「駄目だよ!凪兄の水壁だけじゃ危ないもん!」
「……」
その言葉に凪は項垂れていた。
「凪!しっかりしなさい!
今は、どうにかすることを考えるのよ!」
響ちゃんが凪を叱咤した。
「わかってる、けど、多い、強い。
鈴音、負担、大きい。」
「鈴音、風壁を解いて。
私が代わりに、動くから索敵だけお願い!」
「わかった……」
「解。」「水激!」
響ちゃんは凪の水壁に沿うように、激流を流した。
「北、南、東南。」
鈴音は、次々と攻撃を予測した。
「氷槍!」
蓮華が次々と攻撃を相殺しているが、少しずつ精度が落ちているように見えた。
響ちゃんの表情も、徐々に苦しそうなものに変わっていった。
「鈴音、あとどれくらい?!」
「響姉……どうしよう。
わからないの……たくさん、知らない人間。」
鈴音は動揺していた。
「鷹丸!どうにかできないのか?!」
「無理だ、今あの子が攻撃できているのは、
黄緑の子が完璧な予測をしてるからだ。
俺達はこの激流のせいで、視界が良くない。」
「じゃあ、激流を止めれば!」
「駄目だ、この激流がなくなれば、今度は囲んでる奴らが襲ってくる。
ただでさえ、彼女達が無茶苦茶してるんだ。
下手に動けば足を引っ張ることになる!」
「それでも!これ以上無茶をさせれば全員動けなくなるんだぞ!」
「わかってるよ!
それでも、俺達にできることなんてないんだよ!
俺達は所詮人間だ!」
「そんな……」
「琰陽さん!避けて!」
「風壁!」
俺の前ギリギリで、矢が止まった。
「鈴音ちゃん、ごめん。」
「戦う気がないなら、伏せててよ!!」
その目に余裕はなかった。
俺達は伏せることしかできなかった。
「響姉!北側の西側の流れ強くして!」
「わか、った、わ!」
「蓮華!全面に氷壁!
凪兄!水厚くして!」
「氷壁!」「水壁!」
「私が合図したら皆伏せて!」
鈴音が叫んだ。
「五、四、三、二、一、伏せて!」
俺達が伏せた瞬間、すごい勢いで何かが通り過ぎた。
耳が聞こえなくなるほどの静寂が訪れた。
「混沌。」「混在。」
静寂を切り裂くように、二人の声が重なった。
「グ、グァーー!」
「ギャーーー!」
断末魔にも似た叫び声が響いた。
それも、次第に静かになっていった。
「怜燈兄さん!響姉さん!皆!無事か?!」
焦った声で、時雨が叫んでいた。
「「「解。」」」
全員が一斉に術を解いた。
ゆっくりと顔をあげると、そこは血の海だった。
氷槍に射抜かれた敵より、何かで真っ二つにされた死体の方が多かった。
「皆無事か?!」
怜燈が急いで駆けてきた。
「え、えぇ。なんとか……」
そう答えた響ちゃんの声は、とても小さかった。
「姉様!」
突然俺を押し退けて、紫色の少女が響ちゃんに駆け寄った。
「姉様!大丈夫?!
私が離れたばっかりにごめんなさい!」
「紫音、落ち着いて。
私は大丈夫よ、怪我一つないわ。」
「大丈夫なんかじゃないわ!
こんなにも汗をかいて!
脱水を起こしたらどうするの!」
「紫音……心配させてごめんね。
私は大丈夫だから、落ち着いて。」
響ちゃんは、優しく紫音と呼んだ少女を抱きしめた。
「怜燈兄さん、一体なにが……」
「わからない、だけど腕は良かったよ。」
「そうみたいですね。
隙を狙ったはずなのに、避けられました。」
「驚いたよ。」
「怜燈兄さんは、気づいてましたよね?」
「いや、直前まで気づかなかった。」
「そんなわけないじゃないですか!」
「時雨が腕をあげたんだよ。」
怜燈と時雨が話すのも聞こえてきた。
一体何が起こったのか、理解すら追いつかなかった。




