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十色の追想  作者: 詩庵
人間と神族編
141/154

知るということ。

ー琰陽視点ー

「さて、何が聞きたいのですか?」

怜燈は静かに腰を下ろした。

「怜燈達のことを知りたいんだ。」

「琰陽さんはそればかりですね。

知ってなにか変わりますか?」

その声はとてもめんどくさそうだった。

「……もしかして隣の彼の入れ知恵ですか?

彼頭が良さそうですもんね。」

怜燈は小馬鹿にしたように笑った。

「違う、これは俺の意思だ。」

「それなら馬鹿の一つ覚えですよ。

生物全てが自分を見てもらえば心を開くとお思いですか?」

「俺は、別に怜燈達に受け入れてもらいたいわけじゃ……」

「取り繕う必要はありませんよ。

琰陽さん、貴方は俺達の力が欲しい。

それでいいではありませんか。」

「それは……」

「当たってるでしょ?」

「それは言い過ぎだ!

そっちこそ琰陽のこと、知りもしないで好き勝手言い過ぎだ!」

「知ってますよ。

俺達は人間のこと、人間より知ってますから。」

「なにを知ってるんだよ!」

「貴方の醜さ、矛盾ですかね。」

「な……」

「当てましょうか?

大きく開いた同行、周囲への警戒心の強さ、安定しない脈拍。

さらに……」

怜燈はゆっくりと鷹丸に手を伸ばした。

「やめてくれ。」

俺は、鷹丸と怜燈の間に入った。

「えぇ。で、これらは不安や恐怖を感じている時に出る症状です。

鷹丸さんは私達にそんな感情を抱いているんですよ。」

「そんなの、仕方ないだろ!」

鷹丸が焦ったように叫んだ。

「そうですね、仕方ないです。

それは私達にも言えるのではないですか?」

「「……」」

俺達は何も言えなかった。

「お二人は、私達の過去を知りません。

そして私達は、過去を知られたくない。それだけです。」

とても平坦な声だった。

「じゃあ、どうして俺を助けたんだ?」

「面倒くさいからですよ。」

「……それだけなのか?」

「えぇ。もっとわかりやすく言いましょうか?」

「もういい。」

「はい、ではお帰りください!」

「それはできない。」

「…………あぁ、誓約の件ですね。」

怜燈は納得したかのように、懐から玉を取り出したかと思うと、

空へ投げた。

「灯火。」

玉は真っ直ぐ怜燈の指先に灯った炎めがけて落ちてきた。

ジュッ。

水が蒸発するような音を立てて、玉は消えた。

「はい!これで誓約は無くなりました!

これでいいですか?」

「あ、あぁ。でも、どうして……」

「こんな誓約必要ありませんから。」

怜燈の行動が、わからなかった。

「理解できない……」

「理解していただく必要はありませんよ。

これで用事も済んだことでしょう。

お気をつけてお帰りください。」

「怜燈、庇ってくれて、助けてくれて、ありがとう。」

「……どういたしまして。」

怜燈はにこりと笑った。

「決めた。俺は帰らない。」

「え……」

怜燈はかなり驚いたようだった。

「怜燈達全員のことちゃんと知るまで俺は、帰らない!」

「なん、で……」

怜燈達は戸惑っているようだった。

「琰陽さん、それは無茶苦茶ですよ。」

響ちゃんが、咎めるように言ってきた。

「鷹丸、お前は帰ってもいい。

後は俺が……」

ペシッ!

「鷹丸、どうした?」

「勝手に決めんな。

お前に着いてくって決めたのは俺だ。

帰る時はお前と一緒だ。」

「そうだったな。」

「そうだ。」

その直後、

「伏せろ!」

誰かが叫ぶ声が聞こえた。

カーン!

何かを弾く音が、すぐ近くで聞こえた。

「なんだ?!」

「風壁!」

可愛らしい声と共に、大きな風の壁が展開された。

「怜燈兄!敵!」

そう叫んだ、黄緑色の少女に誰かが迫っていた。

「危ない!」

慌てて少女を引っ張り抱え込んだ。

迫ってきた何者かは、風壁をすり抜け、

先程少女がいた場所を貫いた。

「あ、ありがとう。」

「あぁ。君は危ないからもっと真ん中に行くんだ。」

「う、うん。でも、ここ真ん中……」

少女はとても困ったように言ってきた。

その言葉に笑う間もなく、敵は迫ってきた。

「風斬り!」

「岩崩し!」

俺の斬撃を受け止めた瞬間、鷹丸が術を発動した。

地面は一気に沈む、敵を落とした。

「岩鳴り。」

敵がそう唱えたかと思うと、地面が大きく揺れた。

ジジッ。

何かに火をつける音がした。

爆発の前兆だった。

「風壁!」「土壁!」

咄嗟に風壁を展開した。

それに反応するかのように、鷹丸も土壁を展開していた。

けれど、あと少し足りなかった。

「水球、水鏡。」

爆発の直前、辺りは水の膜に包まれた、

次の瞬間、膜を破るかのように衝撃が走った。

しかし、いつまで経っても爆風が吹き荒れることはなかった。

地面が大きく揺れた。

「間に合った?」

俺達の前には、凪が立っていた。

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