表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
十色の追想  作者: 詩庵
人間と神族編
139/153

旅は道連れ世は情け。

ー琰陽視点ー

「すいません!泡沫のおじさん!

急用なんです!」

「はい。あ、琰陽君か。

こんな夜遅くどうしたんだい?」

「……その、輝鞠のことなんですが。」

「輝鞠か。あの子は確か琰陽君と長期の任務じゃなかったか?」

「そうだったんですが。その……」

泡沫のおじさんを前に、輝鞠の件は言いにくかった。

「俺が言う。」

俺を押し除けて鷹丸が前に出た。

「輝鞠は、亡くなりました。」

「え?なんだって?輝鞠が?

鷹丸君、夜遅くに冗談は……」

泡沫のおじさんは、そう言って笑い飛ばそうとした。

「琰陽。」

鷹丸に促され、俺は輝鞠を見せた。

ただ眠っているように見える。

だけど、彼女はもう生きていないのだ。

「輝鞠……輝鞠……」

泡沫のおじさんは、膝から崩れ落ちた。

「おじさん、輝鞠は最後まで立派でしたよ。」

「琰陽君、嘘は言わなくて良いんだ。

里から直接通達がないってことは、そう言うことだろう。」

泡沫のおじさんの声には、力がなかった。

「本当に申し訳ありません。」

「いいんだ。いいんだよ。琰陽君こそ大丈夫かい?」

泡沫のおじさんは俺の肩にそっと手を置こうとした。

パチッ。

どこからか、火花が散るような音が聞こえた。

「おじさん?」

「あ、なんでもないよ。

今日はもう、帰ってくれないか。

二人もゆっくり休んでくれ。」

「はい。本当に申し訳ありませんでした。」

「いや、こちらこそ連れて帰ってくれてありがとう。」

そう言って泡沫のおじさんは、足早に家に入って行った。


「鷹丸。ありがとう。」

「俺は言っただけだ。大したことはしてない。」

「俺じゃ言えなかったからさ。ありがとう。」

「いいんだ。俺達親友だろ?」

「あ、あぁ!」

街灯が、冷たく夜道を照らしていた。


「……琰陽、本当は何があったんだ?」

鷹丸は、意を決したように聞いてきた。

「何がだ?」

「本当は、あいつらが殺したんじゃないんじゃないか?」

「どうしてそう思うんだ?怜燈が殺したって言ってただろ?」

「事務的すぎるんだ。

お前と、泡沫のおじさんとの会話。

普通、あんな冷静でいられるか?

仮にも娘が死んで戻ってきたんだぞ?」

「それは、わからない。

俺にも、わからないんだ。」

「やっぱりお前、記憶がないのか?」

「あるよ。だけど、確信がないんだ。」

鷹丸に本当のことは言えなかった。

そう言って良いのかすらわからなかった。

「……これからどうするんだ?」

「怜燈達を探す。」

「どうやってだ?」

「それは、お前に……あ。」

「ようやく気付いたか。

わけを知らなきゃ進めないだろ?」

「わかった。だけど、もう少し待ってくれ。

確かめたいことがあるんだ。」

「……信じるぞ。」

鷹丸は、勢いよく俺の背中を叩いた。

「イッッテ!やったな!」

俺も鷹丸の背中を叩き返した。

「イッッテー!まじ手加減しろよな?」

「お前もな!」

俺達は、笑った。

すっきりはしなかった。

けれど、夜が明けたような気がした。


「鷹丸、本当にいいのか?

いつ戻れるかわからないんだぞ?」

「琰陽、しつこいぞ。

そんなのわかってるに決まってるだろ。

親友舐めんな。」

「舐めてない。信頼してるんだ。

だけど、俺のせいで……」

「気にすんなよ。旅は道連れだろ?」

「お前される側な?」

「そうだったわ。」

鷹丸といると、自然と笑いが込み上げてくる。

鷹丸がいて、本当に良かった。

「鷹丸!ありがとな!」

「あぁ!」

「……そうだ、一つ行きたい場所があるんだ。」

「森か?」

「そうだ。」

なんとなく、そこに行かなくてはいけない気がした。

「鷹丸、行こう!」

里の門を背に、俺達は走り出した。

次がいつになるかなんてわからない。

だけど、前を向ける。

そんな気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ