表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
十色の追想  作者: 詩庵
人間と神族編
134/153

水辺。

ー琰陽視点ー

嫌なのに、嫌いになれない。

私は、人間が嫌い。

蓮華ちゃんは、はっきりそう言っていた。

意味がわからなかった。

嫌いなら、嫌いじゃないのか?

すっきりしないまま、俺は近くの水辺へ向かった。

水辺には、一人の男の子がいた。

俺を見たとたん、男の子は逃げるように水に飛び込んだ。

「危ない!」

男の子に続いて俺は、飛び込んだ。

ズサッ

足が付く前に、水に足を取られてしまった。

「ゲホッ!ゴボゴボッ!」

口と鼻から、水が流れ込んできた。

溺れる!

そう思った直後、俺は誰かに引き上げられた。

「ゲホッゲホッ!」

「なにしてるの、人間……」

目の前には、困惑の表情を浮かべた男の子がいた。

「ゴホッゴホッ!君!大丈夫か?」

「……大丈夫。人間、大丈夫?」

「俺は、大丈夫だ。

君が助けてくれたのか?」

「うん。」

男の子は頷いた。

「ありがとう。」

改めて男の子を見ると、その足は人間の足ではなかった。

「君、その、足、は……?」

俺が近づこうとすると、男の子はビクッと身体を震わせ水に飛び込んだ。

「お、おい!」

男の子を引き上げようと、慌てて水に近づいた。

「近づかない、で、迷惑。」

水から顔だけ出した、男の子にそう言われてしまった。

「ごめん、君は、怜燈達と一緒にいた子だよな?」

「……そう。」

「なにしてるんだ?名前は?」

「水浴び。名前、言っちゃ、駄目、時雨。」

「しぐれ?」

「ち、違う!時雨違う!仕事!」

男の子は慌てたように、言い直した。

「言っちゃ駄目な仕事なのか?」

「……」

男の子は、どうしていいかわからないようだった。

「!時雨!駄目!しゃがんで!」

「え?」

思わずしゃがみ込むと、頭のすぐ上を刃が掠めていった。

「……凪、なんで言った?」

いきなり現れた、橙色の髪をした少年は水中の男の子を見ていた。

「怜燈兄さん、お客、いじめちゃ駄目って……」

「これは、正当防衛だ。」

「俺は、襲われてない……」

「俺は、凪のためを思って言ってるんだ。

俺がいない時に、水浴びなんて行くな。」

「で、でも、時雨、いなかった。」

凪と呼ばれた男の子は、悲しそうに俯いた。

「……悪かった。」

時雨と呼ばれた少年は、心配そうに凪を見つめていた。

「おい、そんなに怒ることないだろ?」

時雨の肩を掴もうとすると、

「触るな。」

冷たく刀を突きつけられた。

「時雨!」

「人間、どうしてこいつに近づいた?」

「お、俺はただ、水を汲みに来ただけだ。」

時雨は、落ちていた水筒に目を向けると素早く水を汲み取り、投げてきた。

「ならば、さっさと去れ。」

「あ、はい……」

俺は、引き下がるしかなかった。

時雨の後ろでは、凪が困ったように俺を見ていた。


ー凪視点ー

時雨が人間を追い返してしまった。

「時雨!どうして?!」

「……凪、無事で良かった。」

時雨は俺を抱きしめた。

雪山の件からか、時雨は俺を一人にすることはなかった。

俺もその方が、怖くないから別に気にしていなかった。

だけど、時雨がここまで過敏になるのは初めてだった。

ドッドッドッ

時雨の鼓動は、とても速かった。

「時雨、俺、大丈夫だよ。」

言葉は前みたいには、話せない。

だけど、人間は前ほど怖くはなかった。

「凪、いいんだ。

凪は無理しなくていい。

俺がちゃんと守ってやるから。」

「時雨、ここは安全。」

「駄目だ。凪、一人で行動するな。

頼むから……」

時雨の声は、震えていた。

時雨が責任を感じることは何一つないのに。

俺の言葉は、時雨には届いていないみたいだった……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ