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十色の追想  作者: 詩庵
人間と神族編
133/153

喜び。

ー琰陽視点ー

「ねぇ、聞いていい?」

「あ、あぁ。」

後ろからの声に驚いた。

「ありがとう。

人間、人間は、どんな暮らしをしてるの?」

……?人間?

そういえば、どうして怜燈達はたまに俺のこと人間と言うのだろう。

間違ってはないが、俺は名乗ったはずだ……

「えっと、俺琰陽って言うんだけど。」

「うん。」

「知ってる?」

「うん。」

女の子は頷いた。

「君の名前は?」

「……教えな……蓮華。」

蓮華ちゃんは言った。

「蓮華ちゃん、俺の名前は?」

「琰陽。知ってるよ人間。」

蓮華ちゃんは不思議そうだった。

「じゃあどうして人間って言うんだ?」

「人間だから。」

蓮華ちゃんは当然のように答えた。

「わかった。どんな暮らしをしてるのか知りたいんだよな?」

コクッと、蓮華ちゃんは頷いた。

「変わったことはないぞ。」

「いい。」

「そ、そうか。

朝起きたら、里のお弁当屋でおにぎりを買うだろ。

そのあと、職能団体の建物で仕事を確認するんだ。

後は仕事をして終わったら帰る。

こんなものだな。」

「わかった。ありがとう。」

「待ってくれ!」

去ろうとする蓮華ちゃんの手を、掴もうとすると、

「いや!」

パァン!

すごい勢いで、手を払われた。

「ご、ごめん。」

「……いい。」

蓮華ちゃんは、気まずそうに目を逸らした。


「……俺のこと嫌いか?」

聞いてしまった。

「…………嫌い、じゃない。だけど、嫌い。」

長い沈黙の後、そう返ってきた。

「どうして……」

「人間は、私達をいじめるから。」

「いじめる?」

「嫌なのに、嫌いになれない。

私は、人間が嫌い。

でも……教えてくれてありがとう。」

蓮華ちゃんは、どこかへ走っていってしまった。


ー鈴音視点ー

「鈴音、蓮華はなにしてるんだ?」

「あ、時雨兄。」

人間に話しかける蓮華を視ていたら、時雨兄に声をかけられた。

「視てる。」

「……鈴音、鈴音は嫌じゃないか?」

「……どうして?」

「怜燈兄さん達は神族だ。

だけど、俺と鈴音は人間だろ?だから、な?」

時雨兄は、どうしたらいいかわからないみたいに視えた。

「私は、人間のことちゃんと嫌いになれるよ。

嫌いになれないのは、怜燈兄達の方だよ。」

「そんなわけ……」

「人間に関わろうとしてるのは、怜燈兄達の方。

時雨兄も怜燈兄達と同じだよ。」

「違う、俺は人間だ。」

「時雨兄は、人間を嫌いにはなれないと思うよ。」

「鈴音、どうしたんだ……」

時雨兄は困惑したようだった。

「時雨兄は、怜燈兄達が人間を嫌うのを見て、

私を心配してくれてるんでしょ?」

「いや、そ、そうだな。

俺は、鈴音が心配だ。

だけど、人間とかじゃなくて鈴音だから心配なんだ。」

少しびっくりした。

時雨兄はいつも私の欲しい言葉をくれる。

「ありがとう。私は大丈夫。

私は神族にはなれないけど、人間にもなりきれないから」

「鈴音……」

「勘違いしないで。

私は神の愛し子であることに、苦しんでないよ。

愛し子だから、会えたもん。」

「苦しくないか?」

「祝福なの!私は、選んだの!

時雨兄もそうじゃないの?」

「俺は、俺の意思で選んだよ。」

時雨兄は、はっきり言った。

「私も私の意思で、選んだの。

私は、幸せだよ。」

「そうだな……鈴音の言う通りだな!」

時雨兄は、私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

「時雨兄!髪型崩れる!!」

「おっと、すまなかった。」

「いいよ!」

「鈴音、お姉ちゃん!聞けた!」

蓮華が息を切らせて走ってきた。

「あ、時雨お兄ちゃん、なにしてるの?」

「乙女心は繊細だって話だよ。」

「そうだよ!時雨お兄ちゃん!

髪結べないくせに、ぐちゃぐちゃにしないで!」

「ごめん、ごめん。二人が可愛くって!」

「「知ってる〜!」」

私と蓮華の声が重なった。

「あはは!」

「うふふ!」

「ははは!」

私達は顔を見合わせて笑った。

やっぱり、家族といるのが一番楽しい。

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