肯定。
ー怜燈視点ー
「……ここは?」
「私の膝の上よ。」
「……?!ご、ごめん。」
「いいのよ、気にしないで。」
響は優しく微笑んだ。
「どれくらい経った?」
「一時間くらいかしら。」
「皆は?」
「さぁ、蓮華達はさっき一度戻ってきて、
兄さんが寝ていたから、また来るって言ってたわよ。」
「蓮華、怒ってなかったか?」
「多分怒ってはないと思うわ。
むしろ、申し訳なさそうな感じだったわ。」
「そっか……俺の方が悪いのにな。」
「その通りね。」
「あぁ。」
「……響お姉ちゃん、怜燈お兄ちゃん起きた?」
響の後ろから、小さな声が聞こえた。
「あら、蓮華。起きてるわよ。
怜燈兄さん、そろそろ降りて。」
「あ、ごめん。」
俺は急いで響の膝から降り、人の姿に戻った。
「あ、あの、怜燈お兄ちゃん。
さっきは、嫌いって言って、ごめんなさい。」
蓮華は目に大粒の涙を浮かべていた。
蓮華が謝ることなんて一つもないのに……
「蓮華が謝ることはないよ。」
「それはそう。」
蓮華は言った。
「……でも、それは怜燈お兄ちゃんに、嫌いって言っていい理由じゃないもん。」
「蓮華、本当にごめん。
いや、申し訳なかった。
蓮華のことちゃんと考えてなかった。」
「……いいよ、きっと何か考えがあったんだよね。
それに、怜燈お兄ちゃんは怜燈お兄ちゃんだもの。」
蓮華は多分許してくれている。
だけど、同時に呆れられている気がした。
「あのー、蓮華さん?怒って」「怜燈兄さん!起きたんですね!」
「あ、あぁ。起きたよ。」
「怜燈お兄ちゃん、今なんて?」
「いや、なんにもないよ……」
「そっか。」
タイミングを逃してしまった。
「時雨!優朝達のこと連れてきてくれたのか?」
「はい!ちょうど起きたところだったので、連れてきました!」
「ありがとう。
優朝、優夜調子はどうだ?」
「俺は落ち着いたよ。」
「僕は、まだ少し……」
顔色の戻った優朝に対し、優夜は悩んでいるようだった。
「優夜、どんなに悩んでも死は覆らないよ。」
「ちょっと!怜燈兄さん!」
響に止められた。
「響お姉ちゃん。大丈夫だよ。
怜燈お兄ちゃん、わかってる……わかってる。
けど、僕は間違った。」
「優夜は間違ってない!」
優朝が叫んだ。
「優朝、ありがとう。
だけど、わかってるだろ。僕なら輝鞠を戻せた。
琰陽の知ってる輝鞠に戻せたんだよ。」
「それは……」
優夜は苦しそうだった。
「優夜、何言ってるんだ?
優夜はあれが、人間の知ってる輝鞠でも、殺したと思う。」
「どうして……?」
凪の言葉に優夜が聞き返した。
「だって、あの殺意、全ての輝鞠、持ってたものだろ?
それなら、人間知ってる輝鞠も、同じことしたと思う。」
「どういうこと?」
優夜は理解できていないみたいだった。
「優夜、凪はな、輝鞠が優夜達を殺そうとしたことは、
人間とは関係ないって言ってるんだ。
どんな輝鞠でも、そこは変わらないんじゃないかって言ってる。」
「でも……」
「優夜。優夜は、あの輝鞠が人間の知る輝鞠なら大人しく殺されたの?」
「桜花お姉ちゃん、それは……」
「違うでしょ?
輝鞠がどうであろうと、優夜の行動は変わらなかったはず。
優夜は何を悩んでいるの?」
「……僕は、本物を殺したから。」
「優夜は間違ってない。
危険は排除すべきだった。」
優夜は次々とかけられる言葉に、戸惑っているようだった。
「優夜、全部背負おうとしなくていいんだ。
俺達は優夜を責めたりしないよ。」
「でも……」
「優夜。後悔してるなら、強くなれ。
強くなれば、違う選択ができる。」
俺が言う前に時雨に言われてしまった。
だけど、時雨の言葉だからこそ優夜には届いたのかもしれない。
「時雨お兄ちゃん……」
「優夜!俺も強くなる。
今度は、絶対気絶したりしないから!」
「優朝……お兄ちゃん、お姉ちゃん、皆ありがとう。
今度は、誰も気づかないように、ちゃんとするよ。」
優夜は頬を軽く叩いた。
何か違う気はするが、優夜が元気になって良かったと思った。
ー優夜視点ー
記憶を観て、僕は後悔した。
偽物なら良いと思って刺した輝鞠の中には、本物の輝鞠もいた。
僕がもっと上手く動けていれば。
そう思わざるを得なかった。
輝鞠が生きていれば、僕達は難なく琰陽の里に入れたのに。
それに、琰陽への借りもなくなったはずだった。
自分の軽率さに嫌気がさした。
嫌悪、後悔、怒り、感情が制御できなかった。
そのせいで優朝にも負担をかけてしまった。
だけど、誰も僕を責めなかった。
口を揃えて
「優夜は間違ってない。」
そう言ってくれた。
皆は優しい、つくづく思った。
責めてくれた方が何倍も気が楽だった。
僕は思った。
なら、誰にも知られなければいい。
そうだ、誰も知らなければそれはないものと同じだ。
僕は頬を叩いた。
ジンジンと痛む頬は、僕を冷静にしてくれた。
僕は家族が好きだ……




