皆の答え。
ー怜燈視点ー
優夜に手を汚させてから、ようやく自分の間違いに気づいた。
皆は言わなくても、大丈夫。
その考えがいけなかった。
それぞれの形で家族を想っているのに……
俺は、皆の兄だ。
家族には、綺麗な世界だけを見て生きてて欲しい。
そう思っても、俺だけじゃ役不足だった。
時雨も、優朝、優夜も影で動いてくれていた。
知っていたのに……
「言わないと伝わらない。」
鈴音にもそう言われてしまった。
謝罪は意味がない。
そう思っていた。
だけど、行動だけが全てではない。
言葉にすることこそが、本当の行動じゃないか。
「申し訳なかった。」
たった一言、それだけで皆は許してくれた。
「いいよ!」
その一言に救われた……
「怜燈兄がそうしたいなら、私はついて行くよ。」
「俺も、怜燈兄さん、決めたならいい。」
鈴音と凪は、快諾してくれた。
「俺は、安全が絶対保証されないなら反対です。」
「怜燈兄さん。人間に誓約をさせてください。
それなら、私はなにも言わないわ。」
「……姉様が、いいなら私はそれでいいわ。」
時雨と、響は慎重だった。
紫音も、響がいいなら文句はないみたいだった。
「わかった。皆の安全は、確約させよう。」
「……その中に、怜燈兄さんはちゃんといる?」
桜花が突然口を開いた。
「あ、あぁ。もちろんだ。」
「なら、私もいいよ。」
桜花は、全てを見透かしていたのかもしれない。
俺は、つい自分のことは後回しにしてしまう。
それこそ皆を悲しませることなのに。
「蓮華、無理に皆に合わせる必要はない。
家族の誰か一人でも嫌なら、取引はしない。
蓮華が、決めればいい。
優朝も優夜も、責任を取ろうなんて考えなくていいんだ。
嫌なら嫌と言えばいい。
俺は、皆の本当の気持ちが知りたい。」
「……怜燈お兄ちゃんは、神族なら誰でも信じる?」
蓮華は意を決したかのように尋ねた。
「いいや。
俺は人も神族も、本質は同じだと思う。
良いも悪いもその者次第だ。」
「あの人間は、信用できるって言えるの?」
「それは……」「「言えないよ!」」
俺の言葉を遮って優朝と優夜が言った。
「あの人間は、濁ってる!」
「あの人間は、良くないことしてた!」
「なにが見えたんだ?」
「時間がなくて、途中までしか見えなかったけど、
人を刺してた……あの人間と似た顔、多分兄弟だよ。」
「綺麗なところもあるけど、一部がすごく濁ってる。
変な感じがする。」
優夜は、後ろめたそうに、
優朝は、困ったように言った。
「……人間と過ごしてどうだった?」
「「楽しかった。」」
優朝と優夜は迷うことなく答えた。
「二人は、人間と暮らすのは嫌か?」
「嫌じゃない、でも怖い。」
「嫌じゃない、けど、僕は琰陽の大事な人壊したから……」
知ってしまったから、出てきた迷いなのだろう。
「私は、二人がいいならいい。」
蓮華が言った。
「それが蓮華の答えか?」
「うん。
何も知ろうとしなかった私が、文句を言うのは違うから。
私は、知ろうとした優朝と優夜の意見に従う。」
俺以外にも、ハッとした者がいたようだった。
ただ、蓮華は二人を見ていた。
氷のように輝く水色の瞳が、双子を真っ直ぐ見つめていた。
「怜燈お兄ちゃん、俺はどうしたらいいの?
俺は、気絶してただけだから、俺はどうしたらいいの?」
「優朝がしたいようにすれば良い。
どんな答えでも、俺は優朝のこと責めないから。」
「俺は……」
「僕は……」
「「償いたい!」」
二人が同時に言った。
償いたい。
それは予想外の答えだった。
「……どうしてだ?」
「蓮華が言ってくれたみたいに、俺は知ろうとしてなかった。
だから、機会があるなら今度はちゃんと知りたい。」
「僕は、輝鞠を刺した。
偽物だから、いなくなってもいいって思ってた。
だけど、琰陽にとっては仲間のままだった。
僕は琰陽に、謝りたい。」
それが二人の答えだった。
「わかった。
教えてくれてありがとう。
皆、人間。いや、琰陽のところへ行こう。」
そう言って俺達は、琰陽のところに向かった。




