再確認。
ー琰陽視点ー
怜燈が、他の子供達を連れて戻ってきた。
「お待たせ致しました。
まずは、私の家族が色々と無礼を働いたことお詫び申し上げます。」
怜燈は、静かに謝罪の言葉を述べた。
怜燈がしたわけではないので、当然なのかもしれないが、
表情には反省の色はなかった。
「……かまわない。」
「ありがとうございます。
では、一つご提案があるのでお聞きください。
火駆琰陽さん。私達と取引致しませんか?」
怜燈は言った。
「今回のことが、貴方の国に伝われば、
私達は、悪とみなされ討伐されます。
それは、私達も望むところではありません。
ですので取引をしようかと。」
「……一体なんの取引をするつもりだ……?」
「私達を最初の目的通り、貴方の里に連れて行き、
守ってください。
そうしていただけるならば、私達の力の援助をお約束しましょう。」
怜燈はまるで、絶対に断られないと確信しているようだった。
「それを俺が受けると思うか?」
「えぇ。受けると思いますよ。
仲間じゃない者の命で、本当の目的が達成されるのですよ?
受けないという理由が、ないではありませんか。
それと断られた場合は、
輝鞠さんが琰陽さんを裏切って逃げた。
という記憶にするので、断っていただいても構いませんよ。」
仲間じゃない。
怜燈達にとっては、そうとしか見えないのだろう。
けれど、俺にとっては一緒に頑張ってきた大切な仲間なのだ。
たとえ敵だったとしても、俺の見てきた輝鞠を信じたかった。
「……どうして俺を、殺すという選択肢はないんだ?」
「これ以上殺しても利益にならないからです。
輝鞠は、貴方の里とは無関係の侵入者でしたので、
最悪、問題はありませんでした。」
「記憶がある以上、皆は知っているんだぞ。」
「記憶はただの記録です。
不要であれば、書き換えてしまえば良いので問題ありません。
それとも、本来の記憶を戻しましょうか?」
怜燈は、事実を言っているのだろう。
だけど俺は、受け入れることができなかった。
ー凪視点ー
また余計なことを言っちゃった……
黙っていれば怒られなかったのに、響姉さんに怒られた。
「全く!洗濯物は乾かすの大変だし、
臭うから中途半端に濡らすのは、駄目でしょ!」
多分論点が違う気もするけど、怒られたことに変わりはなかった。
とりあえずわかったのは、響姉さんが怒ったのは、
人間に嫌がらせしたことではないみたいだった。
「人間について行こうと思う。皆はどうしたい?」
怜燈兄さんは珍しく、俺達に聞いてくれた。
「私は嫌よ。家族以外の人間は信用できない。」
「私も嫌、人間はいつか裏切るもの。」
紫音と蓮華が即座に拒絶した。
「怜燈兄さんはどうして、人間と行こうと思ったの?」
「……俺達は今、かなりの数の人間に、追われているんだ。」
響姉さんの問いかけに、怜燈兄さんは渋々話し出した。
「もう何人かは知ってると思うが、俺達は目立ちすぎたんだ。
色々と目をつけられ始めてる。
これまでにも、裏の人間が来ていてそれを追い返してたんだ。
な?時雨、優朝、優夜?」
怜燈兄さんの目線を避けるように、時雨達が目を逸らした。
「俺は、気絶はさせましたが、記憶を飛ばすようなことは、
してませんし、できません。」
「……怜燈お兄ちゃん。誤解だよ。」
「うん?次は六回か?」
ニコッ。
「……ごめんなさい。」
怜燈兄さんの笑顔の圧に優夜が負けた。
「まぁ、俺はそのことについては怒ってない。
むしろ、守ってくれてありがとう。」
そう言って怜燈兄さんは、時雨達の頭を撫でた。
「それで、怜燈兄さん。
その事と、今回の話がどう関係するんですか?」
「そうだな。
直接的に関係があるかと言うと微妙だが、
今回は、侵入者だったとしても、向こうから見れば仲間が死んだことになる。」
「じゃ、じゃあ、僕が記憶を消せば、いいんだよね……!」
優夜が弾かれたように叫んだ。
「そう言う訳にはいかないんだ。
輝鞠のことは里のかなりの人間が知っているようだった。
全員の記憶を消すのは、現実的じゃない。」
「……僕の、せいで……ごめん、なさ、い。」
優夜は今にも泣きそうだった。
「……いや、俺のせいだよ。
心配させたくなくて、言わなかったから、
皆が考えて動いてくれた。
俺がちゃんと伝えて、話し合っていれば、
優夜に、辛い決断をさせることはなかったんだ。
ごめんで済むことじゃないことは、わかってる。
これからは、ちゃんと皆に伝える。
だから、皆の気持ち、教えてくれないか?」
「怜燈兄。そこは、ちゃんとごめんって言えばいいよ。
言わないと伝わらないって、言ったのは怜燈兄だよ?」
鈴音が、言った。
その言葉は、皆の気持ちを代弁するかのようだった。
「そっか、そうだよな。
皆、勝手に行動して申し訳なかった。」
「「「「「「「「「いいよ!」」」」」」」」」
怜燈兄さんはどこまでいっても、怜燈兄さんだ。
俺は、そんな怜燈兄さんだから好きなんだ。
やっぱり、怜燈兄さん達と旅に出て良かった……




