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十色の追想  作者: 詩庵
人間と神族編
118/144

霞。

ー怜燈視点ー

お客がいる手前、迷惑はかけられない。

そう思い、俺は近くに拠点があった山賊の一団を潰しに行った。

潰すのにはそう時間はかからなかった。

後処理を済ませて家に戻ると、鈴音が駆け寄ってきた。

「鈴音、ただいま。」

「怜燈兄!早くこっち!!」

鈴音に手を引っ張られきたのは、崖の上だった。

そこには、優夜を殴ろうとする人間と、

優夜を庇おうとする、響の姿があった。

「俺の家族に手を出すな。」

俺はすぐに止めに入った。

「邪魔すんな!

こいつは、輝鞠を殺したんだ!」

琰陽は怒り狂っていた。

「響、優夜と後ろに下がってくれ。

優夜、本当か?」

琰陽から少し距離を取らせた。

「本当だよ。

……でも、苦しめてない。」

優夜はそう言った。

ただその音は、とても不安定だった。


「怜燈お兄ちゃん。琰陽を離して。

……琰陽、僕が憎いなら殺せばいいよ。

それは、琰陽の権利だ。」

優夜は突然言い放った。

「優夜?!一体なにを……」

「大切な人を殺されたんだ。

当然の権利だよ。僕だったら迷わない。」

その顔に死への怯えは少しもなかった。


「……どうして?どうしてだ?!

どうして輝鞠を、殺したんだ?!!」

琰陽は優夜を責め立てた。

「……負けたからだよ。

輝鞠は、僕達を殺そうとした。だから殺した。」

「お前は生きてる!生きてるだろ?!

なのにどうしてだ?!!!」

「殺そうとするなら、殺される覚悟を持つべきだよ。」

優夜は淡々と言い放っていた。

だけど、その音は言動に対してだんだん荒れていった。

「いい加減にしろ!

まずは、輝鞠に謝れよ!!逃げようとすんなよ!!」

とうとう琰陽が怒鳴りつけた。

「謝っても、輝鞠は生き返らないよ。」

「うるさい!!」

「うるさいのはお前だ人間。」

「沈静。」

優朝の声と共に、術が発動した。

「…………」

琰陽は急に静かになった。

「優夜、ごめん。

遅くなった。

優夜、守ってくれてありがとう。」

そう言って優朝は優夜を抱きしめた。

「……ッ、優朝!優朝!優朝ー!」

優夜は泣き出した。

そんな優夜の背を、優朝は撫で続けた。

「優朝、優朝……優朝……」

「大丈夫。俺が側にいるよ。」

「……うん。」

「人間、少しは落ち着いたか?」

「落ち着けるわけない。

こっちは仲間が死んでるんだぞ?!」

「知ってる。」

「じゃあ、どうしてそんなに冷静なんだよ。」

「そいつは本当に仲間だったのか?」

「仲間だ。輝鞠は、俺の仲間だ!」

「嘘偽りの記憶でもか?」

「……さっきから一体なにが言いたいんだ?」

「そいつは、記憶の神族。霞一族だ。

お前の中の記憶は、ほとんど全て捏造だ。」

「そんな、わけ、こんなに鮮明なんだぞ?!」

「それが、神族の力だ。」

「信じられるわけないだろ……」

「俺達と遊んで五日間の記憶も、捏造だと言えば信じるか?」

「……」

「霞一族は、裏社会に生きる神族だ。記憶の捏造は、難しくない。」

優朝は続けた。

「どっちにしろ、そいつは生きられなかった。」

「助けられたかもしれないだろ?!」

「無理だと思うよ。

霞一族はどこにでもいる。

違和感を抱かせないほど、馴染んでいたのが証拠だ。」

「最初から居たかもしれない……」

「そいつの記憶、丁寧過ぎた。

はっきり言ってつまらない。

神族特有の、作られた記憶と感情だったんだよ。」

「つまらないわけない!!」

「そう思うなら、ここに残るべきじゃなかった!

そいつは迷ってたよ。お前が帰れば一緒帰ったはずだ!」

「……俺の、せい……?」

優朝は人間に、可能性を突きつけた。

顔が青ざめていった。

自分のせいで、仲間が死んだ。

その事実を、この人間は受け入れられるだろうか……

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