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十色の追想  作者: 詩庵
人間と神族編
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別れ。

ー琰陽視点ー

「「琰陽ばいばい!」」

双子に崖から突き落とされた。

今まさに俺は、落ちていた。

双子の違和感は最初から感じていた。

けれど、突き落とされるとは夢にも思わなかった。

流石にこのまま落ちれば、怪我をしてしまう。

「飛翔。」

俺は崖に戻った。

崖に戻ると、輝鞠が優朝を刺す直前だった。

声をかけると、

「大丈夫じゃない、それと僕優夜……」

少し睨まれた。

生きていてよかった。

その憎まれ口に、安堵した。


しかし、問題は輝鞠の方だった。

「琰陽には関係ない。

そこどいて。邪魔しないなら琰陽は殺さない。」

いつもの輝鞠とは違う、冷酷な声だった。


丁寧な口調の博愛主義者。

それが輝鞠だった。

そんな彼女が今、優夜達を殺そうとしているのだ。

「輝鞠!どうしたんだ?!

なにがあったんだ?!俺は生きてるぞ!!」

「琰陽の生死はどうでもいい。

私の仕事は、この双子を殺すこと。」

「……なにを言ってるんだ?!

俺達の受けた任務は、そんなんじゃなかっただろ!」

「私は、里の人間じゃない。

琰陽の知ってる輝鞠は、最初からいない。」

輝鞠の言っていることが、わからなかった。

だって俺と輝鞠は、養成学校からの仲だ。

たくさんの任務を一緒にこなしてきた。

なのに、最初からいない?

じゃあ、俺が一緒にいたのは誰なんだ……

「輝鞠は、輝鞠だろ!」

「……琰陽。」

輝鞠は少し悲しそうな顔をした。

そんな表情が見えたのも一瞬だった。

「邪魔、消えて。」

今まで感じたことのない殺気だった。

その動きに躊躇いはなかった。

俺を狙うだけなら良かった。

けれど、俺の隙を狙って輝鞠は優夜達を殺そうとしていた。

このままでは、拉致があかない。

なにか方法を探さないと……


俺の後ろで、小さな音がした。

ちらっと後ろを見ると、優夜が消えていた。

「優夜!大丈夫?!」

少し離れたところに、響ちゃんが双子を抱えていた。

「チッ。」

輝鞠は舌打ちしたかと思うと、急に向きを変えた。

「風斬り!」

そう叫んだかと思うと、風の刃が響ちゃん達に向かっていた。

「危ない!!」

「風斬り。」

響ちゃんが、同じ術で相殺していた。

「ごめんね、優夜。今治すわ。」

「再生。」

響ちゃんがそう唱えると、優夜の傷がみるみる塞がっていった。

「させるか!」

輝鞠が飛びかかるのを俺は止めた。

「離せ!」

輝鞠は暴れた。

その力は、とても強かった。

「混廻。」

まだ幼さの残る声が響いた。

「戦いの最中に、隙は見せたらだめだよ。」

優夜が立っていた。

「グッ……」

輝鞠が苦しそうな声をあげた。

「迷昏。」

「やめ、ろ……」

暴れていた輝鞠が急に静かになった。

「輝鞠!輝鞠!」

声をかけても、彼女から返事が聞こえることはなかった。

「無駄だよ。今はなにも聞こえてない。」

「輝鞠になにをしたんだ?!」

「深く意識を飛ばしただけだよ。」

「そいつを渡して。」

優夜は輝鞠を指さしていた。

「嫌だと言ったら。」

「……琰陽の意見は聞いてない。」

一瞬、眩暈がしたと思うと俺の手から輝鞠は消えていた。

輝鞠はいつの間にか、優夜の足元に移っていた。

「輝鞠を返せ!」

「なに言ってるの?

こいつは危険だよ?記憶弄られすぎて壊れた?」

「……どういうことだ……?」

「こいつは神族だ。人間じゃない。」

優夜は、輝鞠が神族だと言った。

だけど、神族だからなんだというんだ?

輝鞠は、輝鞠だ。

「神族だろうが、人間だろうが関係ない!!」

「本当にそう?

神族は、駆除対象なんでしょ?

都合の良いこと言わないでよ。」

優夜の声には、怒りがこもっていた。

「?!おい!待て!!」

優夜の手には短剣があった。

それを迷いなく、輝鞠に突き刺した。

「なにするんだ?!」


奪い返した輝鞠からは、徐々に血の気が引いていた。

頭が真っ白になった。

輝鞠は、俺の大切な仲間なのに……

許せなかった。

俺は優夜に殴りかかろうとした。

だけど、その手が届くことはなかった。

「俺の家族に手を出すな。」

そこには怜燈が立っていた。

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