裏切り。
ー優夜視点ー
怜燈お兄ちゃんが出かけた今が、良い機会だと思った。
人間がいるから、怜燈お兄ちゃんは僕達を見てくれない。
それなら、人間がいなくなればいいんだ!
優朝にそのことを話すと、
「確かに、そうだよね!」
すぐに同意してくれた。
その後は、簡単だった。
時雨お兄ちゃん、紫音お姉ちゃんは徹底して人間に近づかなかったし、
響お姉ちゃんも、積極的に関わるようなことはしなかった。
人間は、僕達が遊びに誘うと喜んでついてきた。
少しずつ、確実に。
僕達は準備を進めた。
「「琰陽ばいばい!」」
僕達は人間を突き落とした。
人間は面白いくらい簡単に下へ落ちていった。
「優朝、終わったね!帰ろう!」
「うん!帰ろう!」
家に戻ろうとすると、急に眩暈に襲われた。
頭が処理しきれず、止まる感覚。
この感覚には覚えがあった。
まるで、記憶が無理矢理流れ込んでくる感覚だった。
「優朝、頭痛い。」
「……」
優朝は返事をしなかった。
「?優朝、優朝?どうしたの?」
ドサッ
優朝の肩を叩くと、優朝は崩れ落ちた。
「?!優朝!……優朝!」
呼びかけても返事はなかった。
「やっと、隙をみせたね。」
突然そんな声が聞こえた。
目の前には、もう一人の人間輝鞠がいた。
「僕達に、なにしたの……?」
朦朧とする頭で聞くと、
「そんなの、あんたが一番わかってるんじゃない?」
平然と言われた。
僕が一番わかってる……?
なんのことか、わからなかった。
「やっぱり、半端者じゃわかんないか。
あの世への土産話に教えてあげる。
私の名前は、霞原輝鞠。
あんたの遠い親戚よ。」
言われた瞬間、頭を鈍器で殴られたような痛みが走った。
親戚?
話しを理解する間もなく、再び痛みに襲われた。
「ッ、オエッ。」
酷い頭痛に吐き気が起こった。
「理解しなくていいわ。すぐ楽にしてあげるわ。」
目の前から、輝鞠の姿が消えた。
嫌な予感がした。
優朝を思いっきり引っ張った次の瞬間、
ズッサッ!
何かが突き刺さる音がした。
地面に、輝鞠の短剣が突き刺さっていた。
(優朝ごめん……)
優朝を思いっきり投げ飛ばし、輝鞠の足にしがみついた。
「……動かない方から殺ろうと思ったけど、あんたからにするわ。」
「混廻。」
短剣は僕に刺さらなかった。
寸時のところで、ずらすことができた。
けれど、僕の手には大きな切り傷ができた。
血が流れるのを感じた。
「……ッ、この一族の恥晒し!」
輝鞠は、さらに苛立ったようでめちゃくちゃに刃を向けてきた。
ギリギリのところで避け続けた。
けれど、僕の身体には切り傷が増える一方だった。
頭の痛みはさっきよりマシになっていた。
今僕が殺られれば、優朝が死んじゃう。
決死の思いで僕は、輝鞠の足を掴んだ。
「いい加減、死ね!!」
輝鞠が大きく武器を振り上げた。
術が切れた。
次、輝鞠が外すことはないだろう。
覚悟を決めて、目を瞑った。
優朝、ごめん……
キーン
耳元で、金属がぶつかる音がした。
「怜燈お兄ちゃん……?」
「違う。琰陽お兄ちゃんだ。優朝、大丈夫か?」
突き落としたはずの人間、琰陽がいた。
「大丈夫じゃない、それと僕、優夜……」
嫌いなのに、なぜかほっとする自分がいた。
「琰陽……どうして、生きてるの?」
輝鞠がありえないと言う顔をしていた。
「いや、普通にあの高さなら俺達は死なないだろ。
それより、輝鞠。どうして優夜達に武器を向けているんだ?」
「琰陽には関係ない。
そこどいて。邪魔しないなら琰陽は殺さない。」
「……輝鞠、やめてくれ。
俺は、輝鞠と戦いたくはない。」
琰陽の声は震えていた。
怒ってるのだろうか……?
裏切られたなら、さっさと捨ててしまえばいい。
そう思うのに、琰陽を馬鹿だとはもう思わなかった。




