去る者。
ー琰陽視点ー
「鷹丸!もう行こう!風南達が心配だ!」
既に霧は晴れていた。
しかし、鷹丸はいつまで経っても動こうとしなかった。
「待て、もう少しすればこっちに来る。」
「さっきからそればっかりだ!」
「わかった、じゃもう三歩左に行ってくれ。」
「……わかった。」
すると、草陰から女の子が出てきた。
「あら、いらっしゃったんですね。忘れ物ですよ。」
女の子はそう言って、風南を投げてきた。
「おい!なにすんだよ!」
「なにするもなにも、連れてきてあげたのよ?」
女の子は、すぐに身を翻して姿を消した。
次に現れたのは、二人の男の子だった。
火笑、瘉果、透、鏡悟、歌水を連れていた。
「お客様、お忘れ物ですよ。」
橙色の男の子は、にこりと笑い消えていった。
しばらくすると、鏡悟が目を覚ました。
「……ここは?」
「森のはずれだ。一体なにがあった?」
「あの子供、今度あったらただじゃすまさねぇ!」
鏡悟はかなり怒り心頭のようだった。
「鏡悟、なにがあったんだ?」
「チッ、子供に殴られて気絶した。これで満足かよ?」
「落ち着け」
鷹丸が宥めていた。
「……私は、一体なにを……」
「わからない。」
風南達も目を覚まし始めた。
しかし記憶は曖昧のようだった。
「「時間切れだよ!!」」
元気な声が響き渡った。
「誰も捕まえられなかったね!」
「誰も捕まらなかったね!」
双子は楽しそうに笑っていた。
「「これも返すね!」」
今度は輝鞠が飛んできた。
「うわっ!」
「うーん。あとなんだっけ?」
「なんだっけ?」
「残りの三人!」
「そうそう!三人だ!」
「ねぇ!お客さん!残りの三人どうする?」
「いる?いらない?」
三人、一体誰の……!
土虎、火雷、朝緋の三人がこの場には居なかった。
「土虎達も返してくれ!」
「どうする?優夜?」
「どうしよっか?優朝?」
双子は嗤うばかりだった。
「「ねぇねぇ!火事の原因知ってる?」」
「……火事?なんのことだ?」
「知らないって、優朝。」
「そうだね、優夜。」
そう言って双子は歩き出した。
「待ってくれ!」
双子を追いかけて、捕まえようとすると。
「「触らないで。」」
すごい力で突き飛ばされた。
「琰陽!大丈夫か?」
「あぁ。だけど、今度は土虎達が……」
「まだ生きてると思う。」
「それがわかればいい。俺は行く!」
「私も行く。」
「俺も。」
皆がそう言って次々立ち上がった。
双子の背は、遠のいていくばかりだった。
俺達は、急いで家があった場所に戻った。
しかし、そこに家はなかった。
居たのは、荷車に荷物を積み終えた響ちゃん達だけだった。
「どうかしましたか?」
響ちゃんは、笑顔で聞いてきた。
「待ってくれ!土虎達は?!」
「そちらにいらっしゃいますよ?」
目線の先を見ると、土虎達が横たわっていた。
「必要ないのでお返しします。
ですが、これからは連れる者は選んだ方が良いと思いますよ?」
冷たい声がそう告げた。
「待ってくれ!話を聞いてくれ!」
「聞きませんよ。
お客様は勝負に負けました。
二度と会わぬことを、切にお祈り申し上げます。」
今度は金色の少年が、突き放すようにそう言ったかと思うと、
彼らの周りが輝き始めた。
いきなり誰かに突き飛ばされた。
目を開けると、そこは知らない場所だった。
「怜燈兄さん、お客様が着いてきてるわ。」
「本当だ。」
「斬りますか?」
「毒でも盛る?」
「どっちもなしだ。全員、手を出すなよ。」
恐る恐る顔を上げると、目の前には金色の少年がいた。
「どうして、お二人は着いてきたんですか?」
その声に横を見ると、輝鞠がいた。
「輝鞠、どうして……」
「気づいたら?」
輝鞠も予想外だったみたいだ。
「あの、俺の話聞いてもらえるか?」
「……どうしてそこまで。」
「どうか、お願いだ。」
「里に行くと言う話なら、聞けませんよ。」
「図々しい、怜燈兄さん。やっぱり消しましょう?」
「いや、斬るに決まってるだろ?」
「それなら、記憶を限界まで弄った方が面白いよ!」
「いっそ突き落とすとか?」
少年の後ろから、物騒な会話が聞こえてきた。
「皆駄目だ。良い加減にしなさい。」
少年の声で、後ろの子は黙った。
「お二人はどうしますか?
ここに連れてきたのは、私のミスです。
歩いて帰られるなら、一カ月もあれば火の国には着くはずです。
それか、次の満月まで待たれますか?」
少年は静かにそう聞いてきた。
だけど、目は少しも笑っていなかった。
「怜燈兄さん!人間と何日も一緒に暮らすなんて嫌よ!!」
紫の女の子は相当俺達のことが、嫌みたいだ。
「紫音、ごめん。今日はもう翔べないんだ。」
「じゃあ、すぐに帰らせてよ!」
「ここは、花の国の近くなんだ。
帰るには、ラヴァオロスを通らなくてはいけない。
責任が取れない。」
「勝手に着いてきたのは人間よ!
怜燈兄さんが責任を負う必要はないわ!」
「紫音……」
響ちゃんは、何か言いた気だった。
「お二人はどうしますか?」
「俺達は……」




