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十色の追想  作者: 詩庵
人間と神族編
112/135

決断。

ー桜花視点ー

多分、怜燈兄さんの言ってることは間違ってないと思う。

だけど、私の大切なものを否定されたみたいで悲しかった。

「兄さんは、家族が同じ状況でも見捨てるの……?」

嫌な質問をしてしまった。

兄さんが本当は、誰より家族を大切にしてるの知っていたのに。

「……」

いつまで経っても答えは返ってこなかった。

「怜燈兄さん!答えてよ!」

「桜花、俺は……」

「怜燈兄、桜花姉?」

鈴音の声が聞こえた。

「あ、鈴音、蓮華。」

「二人とも、なにしてるの?」

「なんでもないよ。」

「桜花お姉ちゃん。木を凍らせたのは私。ごめんなさい。」

蓮華が謝ってきた。


「……気にしてないよ。」

「ううん。凍らせるって決めて実行したのは私。

怜燈お兄ちゃんだけじゃない……」

「二人のこと責めてないよ。ただ悲しくて……」

「桜花お姉ちゃん。木はまだ生きてる。

だけど、今のままじゃ生き続けられないと思う。」

わかっていた。

わかっているからこそ、気持ちの行き場がなかった。

命がずっと続かないこと。

全てを助けられるわけじゃないこと。

わかってる。

だけど、大切だから諦められなかった。

「……このまま置いておけば、

木は生きてはいないけど、死にはしないよ。」

蓮華がそう言った。

「寝てるの?」

「……止まってるの。

全ての活動を止めただけ、だから何もわからないし考えられない。」

私の問いに蓮華は、丁寧に答えてくれた。

「綺麗なのに、木は見れないのね。」

鈴音が呟くのが聞こえた。


怜燈兄さんは、一度決めたら意見を変えることはない。

怜燈兄さんも蓮華もどちらも理性的だ。

鈴音は木の声なんて聞こえない。

私はどうすればいいんだろうか。

「桜花、木を延命させるのはやめてほしい。」

怜燈兄さんが口を開いた。

「兄さんには、関係のない存在だから?」

「そうじゃない。桜花が危ないかもしれないから……」

「兄さんは、私の想いより私が大事なの?」

「……当たり前だ。」

「私が私じゃなくても、私の形であればいいの?」

「そう言うつもりじゃ……」

怜燈兄さんは苦しそうだった。

「桜花お姉ちゃん!怜燈お兄ちゃんは……」

「蓮華、大丈夫。言わなくていいよ。」

「でも……」

「桜花は、神様じゃない。

奇跡を何度も起こせば、壊れてしまう。

……俺も、本当の神様にはなれない。

全てを救うわけにはいかないんだ。

だけど、俺は家族のことだけは諦めたくない。

こんな答えじゃだめかな……?」


怜燈兄さんの目は、真っ直ぐだった。

「私のため?」

「違う。俺のためだよ。

俺が、桜花と居たいから我儘言ってるんだ。」

「……蓮華。氷溶かして。」

「……いや。」

「大丈夫。皆が悲しむことは絶対にしない。」

「……わかった。信じる。」

「氷解。」

蓮華が唱えると、美しい景色はみるみる変わった。

目の前には、黒く焼けた木々があるだけだった。

「……みんなごめんね。」

もう意識があるのかもわからない木々達が揺れた気がした。


私はそっと地面に手を当てた。

黒の中に、色とりどりの花が咲き乱れた。

「怜燈兄さん。さっきはごめんなさい。

言い過ぎた。これならやってもいい?

私ができる最後の贈り物。」

「……美しい景色だと思う。きっと、木も喜んでる。」

私の言葉に怜燈兄さんは、答えを返さなかった。

だけど、その言葉こそが答えなんだと思った。


「鈴音、蓮華、ありがとう。怜燈兄さんも戻ろう。」

「うん。」

「いいよ!」

「そうだな。その前に、」

「「「「お客の回収!」」」」

私達は顔を見合わせて笑った。

これから、もっと大きな選択をしなくちゃいけないかもしれない。

その時は正解じゃなくても、後悔しない選択をしたい。

「ありがとう。」

たくさんの優しい声が聞こえた。

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