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十色の追想  作者: 詩庵
人間と神族編
110/134

力。

ー蓮華視点ー

「凪お兄ちゃん、あそこ?」

「多分?」

私達は山の麓に向かっていた。

木の影からは、黒い煙が見えた。

「熱い……」

「水球。」

凪お兄ちゃんが、水の膜で包んでくれた。

「……ありがとう。」

「え?」

凪お兄ちゃんは不思議そうな顔をしていた。

「ここ熱いよね。」

……あってるけど、ずれてる。

「うん。」


私達はようやく火元に到着した。

木は激しく燃え上がり、今にも倒れそうだった。

「水包!」

凪お兄ちゃんが、水で木を包み込んだ。

ジュッ

火は直ぐに消えたけど、消えたのは一本だけだった。

「凍らせる?」

効率の悪さを見かねて聞くと、

「その方、いいけど、桜花次第、かな。」

確かに、凍らせてしまえば火は消える。

けれど、木がどうなるかはわからなかった。

「凪お兄ちゃんが一本ずつ消すのは、難しいと思う。」

「俺も思う。」

そう言いながらも、凪お兄ちゃんは消火を続けていた。

ただ、水がない場所で大量の水を生成するのは……

「水霧。」

私は、森中を湿らすことしかできなかった。

消火はできているのに、火が消えることはなかった。

「凪兄!蓮華!見つけた!」

鈴音お姉ちゃんが走って来た。

「鈴音?どうした?」

「えっとね、怜燈兄がね、私と蓮華で消火してって。

凪兄は、お客を運ぶの手伝ってて。」

「わかった。」

そう言って凪お兄ちゃんは走っていってしまった。


「鈴音お姉ちゃん、私達二人でどうするの?」

「怜燈兄が桜花姉宥めるから、火消しておいてって。

凍らせてもいいよって言ってたよ。」

「それなら直ぐにできるわ!」

「ちょっと待って!」

「直ぐ消さないと!」

「試したいことがあるの。」

そう言って鈴音お姉ちゃんは、一歩前に出た。

「我が名は鈴音。風の女神の加護に従い、意のままに動け。」

拙い祈り。

だけどその効果は絶大だった。

火の勢いは次第に小さくなっていった。

「鈴音お姉ちゃん、これは?」

「空気を抜いたの。けど、中にいる怜燈兄達の空気も抜いちゃった。

人を避けてはできなかった。

蓮華、速く凍らせて。」

「それを速く言ってよ!」

私は術を発動した。

「氷結!」

私の足元から出た冷気は、森を駆け巡った。

パキッ、パッキパキッ

森が凍り始めた。

目の前には、銀世界が拡がっていた。

「綺麗だね。」

鈴音お姉ちゃんは、私の術を褒めてくれた。


音のない世界は、氷の中みたいだ。

私には、この光景は寂しく感じた。

「……蓮華、怜燈兄達見えた?」

「うん。あっちにいた。」

「怜燈兄達のところに行こっか。」

そう言って鈴音お姉ちゃんは、私の手を引いて歩き始めた。


ー土虎視点ー

「わかった。目を離さないようにする。」

そう言った俺の考えは、甘かった。

「もう、飽きたな。」

「そうですね。」

火雷と朝緋がそんな会話をしていた。

「任務放棄は駄目だぞ。」

そう釘を刺したつもりだった。

なのに……

「そんなことするわけないじゃん!こうすんだよ!」

「「炎来!!」」

二人がそう叫ぶと、木に火が付いた。

「おい!なにしてるんだよ?!」

「炙り出そうぜ!」

「そうです。鬼ごっこなんて馬鹿らしいですよ。」

慌てて止めようとしたけど、間に合わず、

火はどんどん激しくなっていった。

「なに考えてるんだよ?!危険だ!」

俺の言葉は二人に届いてないようだ。

「お!来たぜ!」

こちらに一人の女の子が歩いて来た。

「火をつけたの、誰?」

そう聞いた女の子の顔には、感情が一つも見えなかった。

「木をいじめるの、誰?」

「いじめる?何言ってんだよ?木は燃やすもんだろ!」

「……そう。じゃあ、消えて。」

静かに呟いたかと思うと、木の枝がいきなり飛んできた。

「土壁!」

俺達に刺さるギリギリで、木の枝は止まった。


「やったな!」

火雷が飛び出そうとして、倒れた。

「火雷、どうした?」

朝緋が聞くと、

「何か足に絡んで、うん?」

火雷の足元を見ると、蔦が絡まっていた。

蔦は、火雷を飲み込むように巻きつき始めた。

「今外す!」

腰の短剣に手をやろうとすると、手が動かなくなった。

いつの間にか蔦は、俺の手にも巻きついていた。

朝緋に視線を向けると、同じように蔦に絡まれていた。

「グッ……」

火雷は口元まで既に覆われていた。

蔦に殺される……

その瞬間理解した。

俺達は、手を出してはいけなかった。

苦しむ俺達を見ても、女の子は表情一つ変えなかった。

俺の意識は、闇に呑まれていった。

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