仲間打ち。
ー琰陽視点ー
激しい突風が起こったかと思うと、霧が晴れていた。
「風南か?」
「違うだろ。風南の風はここまで強くなかったはずだ。」
鷹丸に訂正された。
そして直ぐ、霧が発生し始めた。
先程とは違う、匂いのする霧だった。
「風壁!」
思わず風の防御壁を展開した。
「琰陽。これまずいな。」
「そうなのか?」
「多分、幻覚剤だと思う。」
「あそこ……」
鷹丸が指差した方を見ると、そこには風南達がいた。
「おい!大丈夫か?」
「火笑!瘉果!子供がいたわ!」
「風縛り!」
「火縄。」
二人はいきなり拘束しようとしてきた。
「嘘だろ……」
「土壁。」
鷹丸が間一髪で防いだ。
「おい!風南!火笑!目を覚ませ!瘉果も止めろ!」
「火笑、火は危ないわ。
もっと優しく捕まえないと。」
瘉果が諭すように、火笑に言っていた。
「琰陽!無駄だ!あいつら幻覚を見てる!」
「……どうする?」
「気絶させよう。風壁はどれくらい保つ?」
「……あー、大変申し訳ないんだが、後一分くらい?」
「嘘だろ?!
……仕方ない、これを顔に当てろ!呼吸もすんな!」
鷹丸は水で濡れたハンカチを投げてきた。
「わかったわ、瘉果。じゃあこんなのはどう?」
「火円。」
火笑がそう言うと、今度は俺達の周りを火が囲んだ。
「これなら動かなければ、怪我はしないわ。」
「上手よ!さぁ君達!
怪我すると危ないから、こっちにいらっしゃい!」
瘉果が呼びかけてきた。
俺達のことは、認識すらできていないのだろう。
あんなに一緒に過ごしてきたのに……
悲しかった。
「瘉果……」
「大丈夫だ!霧の外に出せば戻るはず。
琰陽は、できる限り風壁を維持してくれ!」
鷹丸はそう言って、風壁から飛び出した。
「土落とし。」
「飛翔!」「火縄。」
「土壁。」
三人の術の掛け合いが始まった。
しかし、長くは続かなかった。
ふわりと優しい風が駆け抜けた。
次の瞬間、風南、火笑、瘉果が地面に倒れたのだ。
なにが起こったのかわからなかった。
「おい!」
「琰陽!一度外に出るぞ!」
いつの間にか横に戻って来た鷹丸が、俺を引っ張り走り出した。
「三人はどうするんだよ?!」
「状況が悪すぎる!一度引く!」
「見捨てるのか?!」
「違う!体制を立て直すだけだ!」
「そんなの……あ、」
走っているうちに、風壁が解けてしまった。
俺達は無言で走り抜いた。
もう息が限界。
息を吸おうとした直後、霧から抜けた。
「「ゲホッ、ゲホゲホ!」」
呼吸を整えていると、横には黄色の狐がいた。
静かに眺めるように、煙を見ていた。
「鷹丸。動物がいる。」
「そんなん、どこにでもいるだろ!」
「いや、この森で見たのは初めてだ。」
「そんなわけ……いや、そうかもしれない。」
この山には動物が不自然な程いなかった。
黄色の狐はじっと俺達を見ていた。
まるで、観察するかのようだった。
俺達はずっと、見落としていたのかもしれない。
いや、見ようとしていなかったのだ。
俺のせいで仲間を危険に晒してしまった。
「鷹丸、ごめん……」
パンッ!
いきなり背中を叩かれた。
「ごめんで済めば、俺達裏の人間はいらない!
さっさと立て!火笑達を助けるんだ!」
「だけど、こんな霧じゃ進めない。」
「琰陽。お前は何の為に俺を連れてきた?
こういう時のための頭だろ。上手く使えよ。」
「……鷹丸、この状況をどうにかする方法を考えてくれ!」
「任せろ!」
気づくと横にいた狐は消えていた。
「なぁ、狐どっか行っちゃった。」
「うるさい。少し静かにしてろ。」
「はい……」
こうして時間は過ぎていった。




