狼煙。
ー紫音視点ー
「紫音姉さん。結界解かれてるね。」
桜花が静かに言った。
「そうね。
気づかれちゃったみたいね。」
山に入った時点では、効果的だった結界も意味をなさなくなってきていた。
「幻術だけじゃ足りないかしら。」
「ううん。多分、お札を核にした結界が駄目なんだと思う。」
「……透視されてるものね。」
「多分?」
「そこは断定でいいわよ!」
「どうして?」
「速いというか、正確だからよ。
お客様には、気による目の強化ができる人がいるみたいよ。」
「珍しいね。」
「珍しいわよ。」
「負けちゃう?」
「それだけじゃ負けないわ。」
「弱いから?」
「そうよ。経験不足かしら。」
「そっか。それなら、大丈……あ、燃えてる。」
桜花がいきなりそう言った。
「燃えてる?!」
「誰か、森を燃やしてる。……許せない。」
桜花の顔が険しくなった。
「この地に芽吹く生命よ。桜花を手伝って。」
桜花が呼びかけると、木が一斉に道を作った。
「紫音姉さん、行くね。」
そう言い残して姿を消した。
桜花が去った途端木が大きく揺れ動き、道が変わった。
「桜……」「紫音姉!」
桜花を呼び止める前に、呼び止められた。
「鈴音?どうしたの?蓮華は?」
「蓮華は、時雨兄のところ。
森が燃えてるから、消してもらおうと思って。
……桜花姉は、もう行っちゃった?」
「行っちゃったわ。」
「……お客様、生きて帰れるといいね。」
鈴音は憐れむように言った。
「この霧、邪魔だよね?」
鈴音はそう言うと、
「風の目。」
風が吹き荒れたかと思うと、霧が消え目の前には大きな水滴があった。
「凪兄の水、結構あったね。」
「……鈴音。今のはまずいかも……」
「なんで?」
「多分燃え広がったわ。」
「あ、ねぇ、……紫音姉は、私の味方だよね?」
途端に鈴音は目を潤ませた。
「桜花にちゃんと謝りなさい。」
「桜花姉、絶対怖いもん。」
「今回は、鈴音が悪いわ。」
「……わかった。頑張る。
だから、お饅頭作って欲しいの。」
鈴音のおねだりは、とても可愛い。
「わかったわ。ちゃんとごめんなさいするのよ。」
「うん!」
「紫音!鈴音!やっと見つけた!」
時雨が走ってやってきた。
「桜花、キレたよな?」
「キレたわね。」
「今、凪と蓮華が消火しに行った。
それと凪が、霧消すとまずいかもだってさ。」
「紫音姉……」
「手を打たなきゃね。
鈴音、この薬をお客様のいる場所だけに漂わせられる?」
「できるよ。けど……」
「ほら!そんな顔しない!反省は後よ!今は勝たなきゃ!」
「ちょ、紫音?!なにする気だ?!」
「時雨、鈴音。息を止めて!」
「え?」
「幻惑香。」
周りが一瞬濃い紫の煙に包まれた。
煙は直ぐに薄くなり、周りに霧のように漂い始めた。
「紫音、頼むから能力使う時はもっと速めに言ってくれ。」
「言ったじゃない。それに死にはしないわ。
最悪注射してあげるから安心して!」
「「それはちょっと……」」
二人の声がしっかり揃っていた。
「ほら、鈴音!速く薬を撒いて!」
「本当にいるかな?」
「念のためよ。」
「風送り。」
「多分これで出来たよ。」
「ありがとう!じゃ、速く捕まえに行きましょう!」
私達三人は、霧の中に足を踏み入れた。
私達は勝たなければいけないのだから……




