秘密。
ー琰陽視点ー
森には霧が立ち込めていた。
何も見えない。
不安感が募るばかりだ。
いつもは頼れる鷹丸は、顔色が優れない。
そして、何か考え込むようだった。
鷹丸は、人の上に立てる存在だ。
だけどいつも俺を立ててくれる。
俺の秘密を知っても、友人として扱ってくれる。
鷹丸の期待に応えたい。
「透。透視はできるか?」
「いや、さっきと同じだ。
だけど、解除の方法はわかった。今回は大丈夫だ。」
「わかった。
歌水、透と鏡悟と組んで結界解除にあたってくれ。」
「わかったよ。」
「鏡悟は、透と喧嘩するなよ。」
「こいつが、俺の足引っ張らない限りはしねぇよ!」
「なんだと?!」
「二人ともやめなさい!!」
瘉果が注意した。
本来なら、この三人で組むのが一番だろう。
だけど、今回は相性だけでは決められなかった。
「透、鏡悟、歌水の三人は直ぐに、結界の解除にあたってくれ。
残りは、今から言う組み合わせで逃げてる子を捕まえてくれ!」
そう言うと、透達は素早く走っていった。
「風南、火笑、瘉果は外側から探してくれ!
風南はこの霧を飛ばせるか試して欲しい。
指揮は瘉果に任せる。
火笑は、瘉果のフォローと風南の護衛を頼む。」
「わかったわ。」
「任せて。」
「わかりました。」
「風祓い。」
返事のすぐ後、突風が吹き荒れた。
しかし、霧が晴れることはなかった。
「……?……琰陽、動きながらやってみるから私達行くね。」
そう言って風南達は霧の中に消えていった。
「土虎、火雷、朝緋は土虎の探索を軸に、地形把握と子の捕獲を頼む。
絶対に、火事は起こすなよ!」
「わかった。目を離さないようにする。」
「俺?二回だけじゃん?!」
「かしこまりました。気をつけます。」
火雷と朝緋、色々やらかす二人を一緒にはしたくないが、
土虎に任せるしかなかった。
「よし!行くぞ!」
「あぁ。」
「おい!待て!!」
火雷と朝緋を追いかけるように土虎が走っていた。
「殺すなよ!!」
その背中に呼びかけるしかなかった。
「……なぁ、鷹丸。皆行ったぞ。気分はどうだ?」
「琰陽……ありがとう。」
鷹丸は小さくそう言った。
「琰陽、もう帰らないか?」
突然そう言い放った。
「無理だ。このまま帰れば仕事の放棄になる。」
「長には失敗したって伝えればいい!!
全員が生きて帰ればなんだっていいだろ?!」
鷹丸は叫んだ。
「鷹丸!落ち着け、一体何が分かったんだ?」
「……何もわからない。」
鷹丸は力無く呟いた。
「琰陽。嫌な予感がするだけじゃ駄目か?」
「駄目だ。俺達は裏の人間だ。
任務の放棄は軽々しくできない。」
「長は、お前に何も期待してない!
それでも、お前は、琰陽は、任務を続けるのか?」
鷹丸は震えていた。
俺には、鷹丸が何に怯えているのかわからなかった。
それでも、任務を放棄するわけにはいかなかった。
「鷹丸は、あの時、俺を支えてくれるって言ってくれたよな。
俺はその時すごく嬉しかった。
俺は、必ず長になる。
その時も鷹丸に横にいて欲しい。
お前の頭脳、今は貸してくれないか?」
「……今日も、の間違いだろ?」
「確かに、今日もだわ。」
鷹丸は軽く笑った。
震えは少しはマシになったみたいだ。
「琰陽、今回の任務は神族絡みかもしれない。
……俺達が追っている子供は、人間じゃないかもしれない。」
諦めたように言われた。
鷹丸は気付いてしまったのだろうか。
俺が黙っていることに。
今回の任務の、本当の目的に……
「そうだ。と言ったらどうする?」
「お前を一発殴る。」
間髪入れずに答えが返ってきた。
「……鷹丸、実は……」
「言うな。俺は何も知らない。
今回の任務は、子供の保護。そうだろ?」
「……あぁ。」
そう答えるしかできなかった。
俺は言ってはいけないのだから……
「琰陽、行こう。」
鷹丸は歩き出した。
「わかった。」
俺は隠し事をしている。
皆を騙している。
それでも、止めるわけにはいかない。
俺は必ず長にならなければいけないから……




