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十色の追想  作者: 詩庵
人間と神族編
103/120

開戦。

ー怜燈視点ー

「俺達は、貴方達に会いに来ました。」

遠回しに帰れと言ったのに、男はそう言った。

「……もう一度言います。お帰りは後ろですよ!」

それでも奴らは、引き下がらなかった。

仕方ない。

最終手段だ。

俺は、森に呼びかけた。

「お客様だ。」

すぐに、時雨達が出てきた。

「……いつの間に……」

「どこから……」

人間達の集団は、戸惑いを隠せない様子だった。

なんでも口に出す様子、警戒心のなさ。

今まで、襲ってきた人間より弱い。

連携はできるようだけど、個々の能力が低く見えた。


「……突然訪ねてきてすまなかった。」

赤毛の短髪の男がそう言ってきた。

「そうですね。」

素っ気なく返したのに、男は続けた。

「俺は、火駆琰陽という。

怪しい商人の正体確認のため、ここに来た。」

「正体確認ですか?」

「そうだ。」

「お探しの方は、見つかりましたか?」

「あぁ。君達だろ?

枯れぬ花に、美しい布。

冷気の宿る装飾品、万能薬。

怪しい十人の子供の商人。」

ここまでわかっていて、この男は何がしたいのだろう。

「そうです。間違いないですよ。

これでいいですか?」

「それだけじゃない。

俺は君達に、俺達の里に来て欲しい。」

「……無理ですね!

貴方達は、他人です。

ついて行く理由がありません。」

どこか濁った音。

やはり、こいつらは人間だ……


「怜燈兄さん。下手な見本ありがとう。

いつも通りいきましょう?」

響が呆れた声で言ってきた。

「……頑張っただろ?」

「そうね、でも下手だったわ。」

どこか揶揄うような声だった。

「響、最近俺への扱い雑じゃないか……」

「そんなことないわ。

とても尊敬しているもの!」

そう言って響は前に出た。


「皆さんのおっしゃることはわかりました。

ですが、私達はついていく気はありません。

そこで一つ御提案です。勝負をしましょう?」

「勝負?」

琰陽と名乗る男が、首を捻って聞いてきた。

「はい!

鬼ごっこをして私達に勝ってください!

但し、殺す。大怪我をさせる。は、なしです。

勝てば、大人しく従いましょう!」

響は、朗らかな笑顔で言い放った。

仮面を被った、完璧な美少女。

その姿は、貴族の出立ちを思わせた。


「わかっ……」

「ちょっと待った。

ルールを聞かせてもらおう。

今の説明だけじゃ、足りない。」

琰陽を制して、賢そうな男がそう要求した。


「そうですね!少しお待ちください!

鬼ごっこする人ー!

私は今回参加しないわ!」

「俺はする。」

「俺も。」

時雨が即答し、凪も続いた。


「「俺(僕)達はしない!」」

「私はするわ!桜花は?」

「する。」


蓮華と鈴音は話し合っているようだった。

「蓮華どうする?」

「鈴音お姉ちゃんがするならする。」

「響姉!私達もするわ!」

時雨を皮切りに、皆が一斉に声を上げた。

「怜燈兄さんは、どうしますか?」

「俺も参加するよ。」

「では、決まりですね!」

響は楽しそうに笑った。


ー琰陽視点ー

鷹丸が、響ちゃん達に説明を求めた。

何も確認せず了承しようとした自分が、恥ずかしかった。

「お待たせしました!

では、ルールを説明しますね!」

響ちゃんは指を立てて、丁寧に説明した。


「一つ。鬼は皆さんです!

 二つ。時間は陽が沈むまでです!

 三つ。私達に触れば捕まえられます!


以上です!

私達からは七人が逃げますので、

時間内に捕まえて、ここに連れてきてください!」

彼女は、笑顔でそう言った。

七人。

響ちゃんと、双子の子は参加しないようだった。


「本当にそれだけでいいのか?」

「はい!参加の有無は皆さんでお決めください!」

「気術の使用はいいのか?」

「構いません!」

「ちょ、おい!いくらなんでも子供相手だ!」

気術の使用の有無を聞く様子に驚いた。

自分達より幼く見える彼女達に、力を向けるのか……?


「琰陽。今目の前にいるのは、本当にただの子供か?」

そう言ってきた鷹丸の額からは、汗が滲んでいた。

「おい、鷹丸大丈夫か?」

「大丈夫だ。だが、俺は全員で行った方がいいと思う。

決めるのはお前だ。」

鷹丸は、真っ直ぐに俺を見つめていた。

そうだ。

この班の隊長は、俺だ。

俺がここまで皆を連れてきた。

迷うわけにはいかない。

彼らはただの子供じゃない。

「……わかった。皆もそれでいいか?」

「あぁ。」

「おう!」

「いいわ!」

次々に皆がいう中で、

「私は、パスでお願い。」

輝鞠だけがそう言った。

「あぁ?なんでだよ?」

すぐさま鏡悟が食いついた。

「鷹丸。それでいいか?」

「問題ない。」

鷹丸の一言で、文句を言う者は一人もいなくなった。

「響ちゃん!こっちは十一人だ。

それでもいいか?」

「はい!

では……よーいどん!」

「え?」

時が、止まったような気がした。

響ちゃんの笑みが、一瞬歪んだように見えたかと思うと、

彼女の後ろにいた子供達が、一斉に駆け出した。


「行かないの?」「負けちゃうよ?」

双子が、不思議そうにこちらを見ていた。

「あーもう、行くぞ!」

俺の声を合図に、俺達十一人も遅れて走り出した。

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