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十色の追想  作者: 詩庵
成立編。
102/120

対面。

ー鷹丸視点ー

山に入ってしばらくすると、辺りに霧が立ち込めた。

まるで、監視されているようだった。

「おい!琰陽!危険はないんじゃないのか?!」

後方から鏡悟が叫んでいた。

「ないとは言ってない。

俺は死んだ者はいないと言っただけだ。

そのために透を連れてきた。」

「騙したのか?!」

「いや、ちゃんと話を聞かなかったお前が悪い。」

「なんだと透!やんのか?!」

「鏡悟!透!大声で喧嘩しないで!

今は仕事中でしょ!」

二人は、瘉果に小声で注意されていた。


「透!頼めるか?」

琰陽が即座に言った。

「……ずっとやってる。

だが、見通しが悪すぎる。」

透の目で見えない。

可能性があるとしたら……

「……阻害……!透、見え方って歪な立体がある感じか?」

「そうだ。そこら中に大きい積み木が転がってるみたいだ。」

「おそらく、部分結界と幻術を合わせたものだ。

風南と土虎で地形の把握。

透は結界の核を探せ。

歌水は結界の解除。」

俺は方法を提示した。

だけど、琰陽にはそれが負担だったようだった。

「……やっぱり、鷹丸を連れてきて良かった。」

琰陽は目に見えて落ち込んでいた。

「なに言ってんだ。この班の隊長はお前だ。

俺は、ただの参謀。

わかったら、自分で動け!」

そう。

俺は誰かを引っ張る存在じゃない。

琰陽は頭は良くないが、人を惹きつける魅力がある。

そして、自分の芯を持っているのだから。


「琰陽!視えた!家がある!」

「どこだ?」

「こっちだ。鏡悟、頼んだ。」

「はいはい。」

「琰陽、行くぞ?」

「ほら、琰陽は隊長だろ?」

「……あぁ!行くぞ!!」

途端に元気になった。

……わかりやすいな。

透と鏡悟を先頭に俺達は進んだ。

進んだ先には、一軒の家があった。


辺りを見回していると、

「どうかしましたか?」

琰陽が声をかけられた。

艶やかな黒髪に、桃色の瞳の少女。

琰陽の顔は真っ赤に染まっていた。


人外じみた美しい顔立ち。

彼女は本当に、ただの商人なのだろうか……


ー響視点ー

「響姉。知らない人がたくさん来てるの視えた。」

鈴音に声をかけられた。

「響姉さん!人間、凄い勢い、こっちに!」

凪が慌てたように走ってきた。

私も自分の結界が、次々破られていくのを感じていた。

「皆ー!人間のお客様よ。」

そう言うと、その場にいた時雨達は静かに散っていった。

彼らの気配が消えたのを確認し、私も気配を消した。


急に現れた人間は、いつものお客より随分と若かった。

「どうかしましたか?」

いつも通り静かに声をかけた。

一番近くにいた男に声をかけると、とても驚いた顔をした。

「あ、い、いえ、た、た大したものでは、あ、あ、ありません!」

男の人は、急に挙動不審になった。


「すいません。貴女はここに住んでる方ですか?」

男を押し除けて、女の人が話しかけてきた。

「……はい。そうですが、何かあったのですか?」

小首を傾げて聞くと、

「私達は、貴女を保護しにきました。」

いきなりそう言われた。

「……なんのことでしょう?

いきなりそんなこと言われても、困ります……」

困った声で言うと、

「ちょっと、火笑!唐突すぎ!」

別の女の人が割り込んできた。

「急に来てごめんなさい。

私の名前は輝鞠。貴女のお名前は?」

「……響です。」

「そっか。響ちゃん、私達と一緒に来てくれない?

私達は響ちゃんを保護するよう言われてきたの。」

また来たと思ったら、今度は別の人間だった。

今度は保護か……

「商人か聞きたいんじゃないんですか?

それとも、他の子はどこか。ですか?」

笑いながら言うと、

「輝鞠。無理だ、捕獲すべきよ。」

火笑と呼ばれていた女の人が、言った。


「そうですか。

では、消えてください!」

私は、笑顔を絶やさなかった。

私は私なのに、違う人みたい。

彼らと一気に距離を取り、体勢を整えた。

「待って!響ちゃん!俺達は話がしたいだけなんだ!」

押し除けられていた男の人が声を上げた。

「……私は、ちゃん付けされる年じゃないですよ。」

気術を使おうとすると、怜燈兄さんに止められた。

「響。まずは話を聞こう。消すのはそれからだ。」

「兄さん、いつから……」

「始めから?」

「それならもっと、速く止めて欲しかったわ。」

拗ねるように言うと、

「ごめんって!」

兄さんは嗜めるように謝った。

そして、振り返ったと思うと、


「では、名も知らぬ人間の方。御用はなんでしょう?

お帰りは後ろですよ?」

怜燈兄さんは、笑顔でそう言った。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

第二部はこれにて完結となります。


ここまで読んでいただけたこと、とても嬉しく思います。

物語はまだまだ続く予定です。


第三部は準備が整い次第、投稿を再開いたします。

引き続き見守っていただけると幸いです。

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