影。
ー琰陽視点ー
「長よ。お呼びでしょうか。」
「よく来た琰陽。お前に仕事だ。」
そう言って父は、一枚の紙を渡してきた。
「……これは。どうして私なのですか?
今はこのようなことをしている訳にはいきません!」
「そうでもないぞ?上手くいけば力になるやもしれぬ。
そうなれば、紅陽を越えれるかもしれんぞ。」
「ですが!今は子供探しなどしている場合では……」
「これは決定事項だ。異論は認めん。
連れてゆく者は、同世代の者のみ。
わかったならもう下がれ。」
ここまで言うならば、もう変更はないだろう。
父の機嫌を悪くする方がまずい……
「かしこまりました。」
俺は一礼して部屋を去った。
部屋の外には火波が居た。
「盗み聞きか?」
「いいや。偶然聞こえただけ。
怒んないでよ兄さん。」
「……別に、怒ってる訳じゃ。」
「紅陽兄さんのこと?
あいつのことは、気にしなくていいよ。
あいつより兄さんの方が向いてる。」
「そんなことない。紅陽兄さんは優秀だ。」
「優秀だろうがなんだろうが裏切り者だ。
里には、要らない。」
火波はそう言い切った。
「そうかな……俺はもう行く。
火波も行くぞ。」
「はーい。」
「と言う訳だ。俺と一緒に行ってくれないか?」
「何が、と言う訳だ。どう見ても危ないだろ?」
「そんなことはない。
今まで、この任務死んだ者はいない。」
「いや、各主要里の青炎クラスが失敗してる任務だ。
俺達黄炎には難しい。」
幼馴染の鷹丸に言い切られてしまった。
「だからお前にも頼んでるんだ!」
「にも?他に誰が?」
「同期十二人。三人組を四班作る。」
「大型任務級の人手だな。そこまでするほどか?」
「長直々の依頼だ。」
「お前の親父か、押し付けられただけだろ。」
「そんなことはないはずだ。
上手くいけば力になると言われた。」
「そんなんどうとでも言い逃れできる。」
「それでも、少しでも可能性があるなら賭けたい!
俺は長にならなければいけないんだ。だから、力を貸してくれ。」
俺はどうしても、長にならなければいけなかった。
それが、あいつへの約束だから。
「……わかった。ただし無茶はしない。
危険と判断すればすぐに引く。いいか?」
「ありがとう!心強い!!」
「出立は明日の朝五時!正門前に集合だ!」
「わかったよ、寝坊するなよ!」
「鷹丸もな!」
その次の日、俺達十二人は日の出と共に出発した。
「琰陽!この仕事って結局どこまでするの?」
後方から、輝鞠の声が聞こえた。
「最低でも事実確認。可能であれば、子供の保護だ!」
「捕獲の間違いじゃねえの?」
「鏡悟!余計な口を挟むな!」
「なんだよ!透!事実だろ?
怪しい物を売る子供の身元確認なんて、所詮建前だろ?」
鏡悟と透が言い合いを始めた。
いつものことながら呆れる。
「子供は何人なの?」
「十人らしい。」
「多いわね。」
「そうなんだ。
組織も絡んでいるのでは、との噂もある。」
「だけど、その子達は何も悪い事はしてないのでしょう?
可哀想よ。」
「それが仕事だ。諦めてくれ。」
「……わかったわ。」
仕事内容を話しながら、俺達はある山へ向かっていた。
珍しい物を売り歩く、子供の商人。
過去にも何度か、調査が行われていた。
しかし、事実を掴んだ者は誰一人としていなかった。
任務を受けた者は、揃って記憶を失っていた。
ここ一年、音沙汰のなかった彼らが動き出した。
これは長に近づくための試練ではないか。
胸が高鳴った。
「ここか?」
「間違いない。最後の目撃情報が昨日だ。
彼らはきっと、この山にいるはずだ。」
俺達は薄暗い山へと足を踏み入れたのだった。
冷たい風に、そっと頬を撫でられた。




