↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『スキルを喰らうダンピール ~墓から蘇った少年は、眠らずダンジョンを駆け上がる~』  作者: ミタテ屋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/31

第22話◆ 毒の血

 石床に付着した紫色の液体から、細い煙が立ち上っている。


 ダンは液体を踏まないように距離を取り、ポイズンフロッグの動きを観察した。


 分かっているのは、相手がレベル8だということだけだ。


 どんなスキルを持っているのかは、《鑑定Lv1》では分からない。


 蛙なら《跳躍》を持っているかもしれない。名前から考えれば、毒に関係するスキルを持っている可能性もある。


 確かめるには、吸血するしかなかった。


 問題は、そのためには生きたまま戦闘不能にしなければならないことだ。


 ポイズンフロッグの喉が再び膨らむ。


 その姿が見えるより先に、《音響察知Lv5》が口の奥で動く液体の音を捉えた。


 ダンは横へ大きく跳ぶ。


 紫色の液体が脇を通過し、背後の壁へぶつかった。


「飛んでくる方向が分かれば、避けられる」


 毒液を吐き出した直後、ポイズンフロッグが太い後脚を折り畳んだ。


 石床を蹴る音が響き、大型犬ほどもある身体が一気にダンの目の前まで跳んでくる。


 速い。


 けれど、ホーンラビットの突進よりは動きが大きく、軌道も読みやすかった。


 ダンは身体を沈め、頭上を飛び越えようとするポイズンフロッグの後脚へ短剣を走らせる。


 刃が太い脚を切り裂いた。


 ポイズンフロッグは着地に失敗し、石床の上を転がっていく。それでもすぐに体勢を立て直し、残った後脚だけで跳ぼうとする。


「まだ動けるんだ」


 ダンは再び吐き出された毒液を避け、横へ回り込んだ。


 今度は反対側の後脚を斬る。


 両方の後脚を傷つけられたポイズンフロッグは、腹を床につけたまま動けなくなった。


 それでも喉だけは大きく膨らみ続けている。


 近づけば、毒液を浴びるかもしれない。


 ダンは《音響察知》で周囲を確かめた。近くに冒険者の足音はない。


 腕へ短剣で小さな傷をつけると、流れ出した血を触手へ変える。正面を避けて背後へ回り、触手をポイズンフロッグの脇腹へ突き刺した。


「吸血」


 触手を通して、温かな血が流れ込んでくる。


 その直後、指先に微かな痺れを感じた。


「えっ?」


 痺れは手首から腕へ広がり、肩へと近づいてくる。


 どうやら、ポイズンフロッグの血にも毒が含まれているらしい。


《状態異常耐性Lv1》が働いているためか、腕を動かせなくなるほどではない。それでも、このまま吸い続けて大丈夫なのか不安になる。


 ここで止めれば、スキルは奪えない。


「あと少し……」


 ダンは痺れに耐えながら吸血を続けた。


 ポイズンフロッグの身体から、およそ4割の血を吸い上げる。


 やがて、待ち望んでいた表示が浮かんだ。


【吸血量が強奪条件に達しました】

【固有スキル《スキル強奪》が発動しました】

【《麻痺毒Lv1》を獲得しました】

【次のレベルまで:0/2】


「《麻痺毒》……?」


 予想していた《跳躍》に加え、まだ持っていなかった毒のスキルまで手に入った。


 1匹から、2つのスキルを奪えたらしい。


 吸血を止め、血の触手を引き抜く。


 しばらくすると、腕に広がっていた痺れも少しずつ弱まり始めた。


《状態異常耐性Lv1》が効いているのかもしれない。


 ダンはポイズンフロッグの背後から近づき、短剣でとどめを刺した。


 大きな身体が光の粒へ変わり、小さな魔石と紫色の袋を残して消える。


「これは毒袋かな」


 ダンは紫色の袋へ《鑑定》を使った。


【ポイズンフロッグの毒袋】

【状態:良好】


「依頼に出ていた毒袋って、これか」


 直接触れない方がよさそうだ。


 ダンは毒袋を布で包み、魔石と一緒に麻袋へ入れた。


「あと30匹」


 今手に入れた《麻痺毒》も、これまでのスキルと同じように重複強奪で成長するなら、31匹でLv5まで上げられる。


《跳躍》も、あと29回奪えばLv6になる。


 最初の1匹で戦い方は分かった。


 毒液を吐く前には喉が膨らみ、口の中で液体が動く音がする。跳ぶ直前には後脚へ力を溜めるため、石床を擦る音が聞こえる。


《音響察知Lv5》があれば、どちらも見てから反応する必要はなかった。


 次の鳴き声を探し、ダンは湿った通路を進んだ。


 間もなく、前方の水たまりの近くに2匹のポイズンフロッグを見つける。


 今度は2匹同時だった。


 左右から、口の奥で液体が動く音が聞こえる。


 ダンは後ろへ跳び、時間差で飛んできた2つの毒液を避けた。


 1匹が跳びかかってくる。


 その下へ潜り込み、短剣で後脚を斬る。振り返るより先にもう1匹が跳んできたため、《跳躍》を使って頭上へ逃れた。


 着地と同時に背後へ回り、もう1匹の後脚へ刃を入れる。


 午前中にケイブバットを相手に空中で短剣を使い続けた経験が、そのまま役に立っていた。


 2匹の動きを止めたところで、周囲に誰もいないことを確認する。


 吸血のために腕へ傷をつけようとして、ダンは手を止めた。


「《麻痺毒》は、どうやって使うんだろう」


 スキルを意識すると、身体の中に新しく加わった感覚があった。


 流れ出した自分の血へ、麻痺毒の性質を混ぜられる。


 どうすればいいのかも、感覚的に分かる。


 短剣で指先へ小さな傷をつけ、流れ出した血を刃へ薄く塗ってみる。《麻痺毒》を意識すると、赤い血が一瞬だけ紫色の光を帯びた。


「これで、毒がついたのかな」


 試すため、まだ動こうとしているポイズンフロッグの前脚へ浅い傷をつける。


 すぐには変化がなかった。


 しかし数秒後、前脚の動きが鈍くなり、身体を支えられず床へ崩れた。


「Lv1だと、このくらいなんだ」


 完全に動けなくなるわけではない。


 それでも、傷を負わせた場所の周辺を痺れさせることはできるらしい。


 ダンは2匹から順番に吸血し、スキルを奪った。


 そして3匹目からの強奪を終えたところで、表示が変わる。


【《麻痺毒》を重複強奪しました】

【《麻痺毒Lv2》へ上昇しました】

【強奪数がリセットされました】

【次のレベルまで:0/4】


 3匹目で、《麻痺毒》がLv2になった。


 レベルが上がると、流れ出した血へ毒を混ぜる感覚も、先ほどよりはっきりと分かるようになった。


「これなら、脚を深く斬らなくても止められるかもしれない」


 短剣へ自分の血を薄く塗り、《麻痺毒》を混ぜる。


 次に出会ったポイズンフロッグの後脚を浅く斬ると、毒が回るにつれて跳躍の高さが落ちた。完全に動けなくなるまでには少し時間がかかるが、深い傷を負わせる必要はない。


 スキルを奪うほど、狩りは楽になっていった。


 そして7匹目。


【《麻痺毒》を重複強奪しました】

【《麻痺毒Lv3》へ上昇しました】

【強奪数がリセットされました】

【次のレベルまで:0/8】


 この頃には、浅い傷をつけるだけで片脚の動きを止められるようになっていた。


 ポイズンフロッグが毒液を吐く。


 ダンは音から方向を読み、最小限の動きで避ける。


 跳びかかってきたところへ短剣を合わせ、後脚へ浅い傷をつける。麻痺毒が回って動けなくなったところを吸血し、《跳躍》と《麻痺毒》を同時に奪う。


 魔石と毒袋を回収し、次の獲物を探す。


 そして15匹目。


【《麻痺毒》を重複強奪しました】

【《麻痺毒Lv4》へ上昇しました】

【強奪数がリセットされました】

【次のレベルまで:0/16】


 Lv4になると、効果はさらに強くなった。


 後脚へ1度刃を当てるだけで、ポイズンフロッグは数秒後には跳べなくなる。


 最初の1匹に苦戦したことが嘘のようだった。


 ただし、油断はできない。


 途中で3匹同時に現れたときには、避けた毒液の先へ別の毒液が飛んできた。


 濃い灰色のコートの裾を掠め、布の一部が紫色に変色する。


「あっ、新しいコートが……」


 身体よりも先にコートを確認してしまい、慌てて後ろへ跳ぶ。


 毒液がついた部分を水たまりで洗い流すと、幸い穴は開いていなかった。


「買ったばかりなのに」


 少し落ち込みながらも、ダンは3匹を順番に仕留めていった。


 狩りを続け、29匹目。


 麻痺毒のついた短剣で後脚を斬り、動けなくなったポイズンフロッグから吸血する。


【《跳躍》を重複強奪しました】

【《跳躍Lv6》へ上昇しました】

【強奪数がリセットされました】

【次のレベルまで:0/64】


「《跳躍》が上がった」


 試しに軽く床を蹴る。


 身体が予想以上の勢いで跳び上がり、頭が天井へぶつかりそうになった。


「危ない……」


 慌てて身体を丸め、着地する。


 Lv5までとは、明らかに高さも勢いも違う。実戦で使う前に、新しい感覚へ慣れる必要がありそうだった。


 残る目標は、あと2匹。


 30匹目を倒し、最後の1匹を探す。


《音響察知》へ意識を集中させると、少し離れた通路の奥から低い鳴き声が聞こえた。


 ダンは音を追い、5階のさらに奥へ進む。


 水たまりの中央に、1匹のポイズンフロッグがいた。


 相手が喉を膨らませるより先に、ダンは強化された《跳躍Lv6》で床を蹴った。


 一瞬でポイズンフロッグの頭上を越える。


 着地しながら振り返り、麻痺毒を塗った短剣で後脚へ浅い傷をつけた。


 ポイズンフロッグは毒液を吐こうとしたが、麻痺が身体へ回り、喉を膨らませたまま床へ崩れた。


 周囲に誰もいないことを確認し、血の触手を突き刺す。


 毒を含んだ血が流れ込んでくる。


 最初の1匹ほど強い痺れは感じなかった。


《状態異常耐性Lv1》が働いているのか、それとも繰り返し毒を含んだ血を吸ったことに何か理由があるのかは分からない。


 必要な量を吸い終えた瞬間、表示が浮かぶ。


【《麻痺毒》を重複強奪しました】

【《麻痺毒Lv5》へ上昇しました】

【強奪数がリセットされました】

【次のレベルまで:0/32】


 続けて、もう1つの表示が現れた。


【レベルが8に上昇しました】


 ダンは目を見開いた。


 ゴブリンやケイブバットを大量に倒しても上がらなかったレベルが、ようやく動いた。


 ポイズンフロッグはレベル8。


 僕よりレベルの低いゴブリンやケイブバットとは違い、今のダンと同等以上の相手だった。


「やっぱり、相手の強さも関係してるのかな」


 まだ確かなことは分からない。


 それでも、弱い魔物を大量に倒したときとは明らかに違っていた。


 目標だった《跳躍》はLv6。


 新しく手に入れた《麻痺毒》はLv5。


 そして、ダン自身のレベルも8へ上がった。


 ダンは最後のポイズンフロッグへとどめを刺し、残された魔石と毒袋を拾い上げた。


 2つの麻袋は、31匹分の素材で膨らんでいる。


 コートの手入れが終わるまで、あと1日。


 ダンは重くなった麻袋を持ち上げ、満足そうに5階の出口へ向かった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


物語の感想や印象に残った場面など、ひと言でもいただけると今後の執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。