続!チュートリアル
事前に遊戯世界についていろいろ調べていた千縁だが、ステータスについては未履修だったらしい。
『うん。この世界の生物はみんな所謂ステータスって奴を持っていてね。ステータスはHP、SP、MPの3つのゲージと力、速、頑、知、靱、技の6つのパラメータがあって、レベルアップ時にジョブの補正と配布されるポイントを割り振る事で上げる事ができるよ。6つのステータスの概要はその紙のとおりさ。』
一枚の紙が何処からか飛んで来て、千縁の手に収まった。そこにはダレイオスの絵と共に先ほど上げられていた項目について書かれていた。
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HP……生命力。これを零にすると死ぬ。これ使うようなジョブもあったりする。
SP……体力。動けば減り、動かなくても時間経過で減る。程よい食事と適度な運動をしてれば無くなる事はない。気力として扱うこともあるとか。
MP……魔力、みんな大好きマジカルパワー。魔法を発動したり、魔術に使ったりする。精霊の元でもある。
力……物理的な力を上げる。要するに力持ちになる。見た目は変わらない。
速……速くなる。攻撃速度や行動速度も上がる。ステータスを伸ばしていけば新幹線並の速さになる事も可能。
頑……頑丈になる。物理的ダメージや病気なんかにも耐えられるようになる。ミサイル食らって無傷も夢じゃないかも?
知……魔法の威力が上がる。魔法の操作しやすさも変わるので魔法を使いたい人がには必須。別に賢くなるわけじゃない。
靱……心の強さ・魂の強さ。特殊な攻撃への耐性が上がる。ついでにMPやSP、HPも上がる。
技……器用になる。弓の命中率やスキルの成功率、製作難易度などにも関わってくるステータス。SPを扱いやすくなる。
]
ゲームやラノベのテンプレな感じの説明であった。それぞれのゲージの算出方法など所々疑問に感じるところはあったが、概ね予想通りだろう。
ステータスの内容を把握した千縁は検索して出たジョブの冊子を一つ一つ見ていく。
剣士見習い、斧使い見習い、槍士見習い、……、術師見習い、魔術師見習い、呪術師見習い、……、etc。
最下級職は基本的に見習いというのがつくようだ。千縁は戦闘職で検索したようで、冊子は見た目以上にあった。200ページを過ぎた辺りで冊子の厚さが変わっていないのを見て、検索項目を幾つか足したり変えたりして見た結果、一つのジョブを見つけた。
[徒弟:住み込みで教わる者。貴方は地に足がついていない。無知蒙昧で、特技なんてのもない。それなら学ばなくてはならない。知らないならば知りなさい。出来なければ出来るようになりなさい。日々、考えその道の師から学びとりなさい。自分をもっと愛せるように。
※ジョブによるステータス補正は最低限で、平均的に上昇します。変わりにスキル数が大幅に増えます。スキルを使いこなして、様々な事に応用して見ましょう。]
戦闘で使えそうな職でも生産など社会の中でダイレクトに役立つような職でもなさそうな不思議なジョブである。確かに、幾つかのジョブ(魔法師見習いと魔術師見習い)のように似た系統でもステータス補正を大きくしたジョブとスキル数を増やしてジョブに違いを持たせたものや、学徒のようにステータス補正がもともと低めなジョブはあったが、最低限や、大幅にという文言があったのは初めてである。ジョブには想定されたプレイスタイルというものがある。その点、このジョブは様々な事などと極めて曖昧な事しか言っていない。器用貧乏なプレイスタイルになりそうである。
千縁はそのページを真剣に見つめたあと、ダレイオスに向き直った。
「このジョブにします。」
何故だか、覚悟の決まった目で言った。
『そのジョブでいいのかい?ステータス補正の低さは序盤が1番キツイよ。そのジョブで増えるスキルも数だけは多いけど威力や効果も最低限だし。あまりおすすめしないよ?』
ダレイオスは心配そうに問う。
「大丈夫です。僕はこのジョブにします。」
千縁は言った。
『分かったよ。じゃあ一応アバターの見た目もある程度変えられるけど、どうする?』
千縁は頷いて、また思考操作というやつで髪と目の色を薄灰色に、そして顔のパーツや配置を変更し、現実よりイケメンにし、印象を変えた。
「これで大丈夫です。」
ジョブでは4時間程考えていたが、見た目に関しては一瞬だった。
『最後に君達異邦人の特典である世界片を付けるよ。付けると同時にマークが何処かに出るから希望の場所を教えて。』
千縁は手の甲にした。
『マークは人それぞれだからね。世界片が形になった時に決まるよ。それはこの遊戯世界が君に送る【君だけの世界】。その卵みたいなものだよ。君の願いとこの世界での暮らし、経験で生まれ、成長するんだ。生物やアイテム、建物に霊。スキルなんかになったモノもあったね。世界は何になるかな?』
言うならば奇妙な冒険譚のスタ◯ドのようなものだろうか。ステータスといい、下手なゲームよりも現実的なこの世界で何故こんなものを渡すのだろうか。
千縁は知っていたのか。少しわくわくした表情であるが落ち着いていて、頷いてダレイオスの次の言葉を待った。
『では、異界より渡りし異邦人様。是非とも吾輩達の世界を味わい尽くして欲しい。リスポーン地点は決まった初期地点の中からランダムに決まるよ!』
伝え忘れが多いな。千縁は苦笑いをして横に生まれたお馴染みの渦に顔を向けた。
「では。どうもありがとうございました。」
千縁が渦に一歩踏み出そうとした時。
『あっ、最後に一つだけいいかい?』
千縁は渦に呑まれた。
チュートリアルはまだまだ続きます。




