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日曜日の朝。そして昼ぐらい。

緊張とわくわく。

その2つで。

あんまり眠れなかった。

とっても早起きをしてしまった。

そして私は家でそわそわしてる。

時計を見ると10時を過ぎたくらい。

そろそろ待ち合わせの時間かな?

どっちが早く着いてるかな?

ちゃんと合流できるよね?

そんな心配をしてしまう。

私にできることなんてない。

でも、心配してしまう。

カナとたまこ。

2人のどちらかに電話したい。

どんな感じなの?

待ち合わせ場所にいるの?

相手は来そうなの?

どこに行く予定なの?

そんなことを聞きたくてたまらなかった。

でも。

そんなことをしたらきっと邪魔になるだけ。

だから私は家にいる。

家でじっとしてる。

……ううん。

じっとはしてない。

意味もなく歩きまわったり。

スマートフォンを持っては置いたり。

牛乳を飲んだり。

本を読もうとして……。

集中できなくてやめたる。

ずっと上の空。

きっとお母さんがいたら。

たくさんからかわれただろうって思う。

でも今日はお母さんはいない。

友達のところに遊びに行ってるから。

それはとってもよかったって思う。

これで思う存分に上の空でいられるから……。

たまこから今日の話を聞いて数日。

私はこの日を楽しみにしてた。

一緒に遊ぶわけでもないのに。

変だなって自分でも思う。

でも、とっても楽しみにしてた。

今日でカナとたまこがとっても仲良くなってくれるかもしれないから。

一緒にお弁当を食べるようになって。

2人はとっても仲良くなったって分かる。

でも、まだちょっと距離を感じる。

だから今日は。

その距離が縮まったらいいのにって思う。

どんなことをするのか。

私は知らない。

たまこもあんまり知らなそうだった。

私へのサプライズプレゼントを買うのかもって言ってた。

よく考えたら。

もしそうだったとしても。

もうあんまりサプライズにならないよねって思うし。

でも。

思わずそう言っちゃった。

たまこがとってもたまこらしいって思った。

思わず自分でもにやけてしまうのが分かる。

月曜日。

またカナとたまこと会える日。

とっても楽しみ。

前より仲良くなった2人を見れるから。

もし、思った以上に仲良くなってたら……。

もちろん嬉しいに決まってる。

けど、ちょっと嫉妬しちゃうかもしれない。

そういうのもいいかもねって思った。

時計を見る。

11時ぐらい。

さすがにそろそろ出会ってるよね?

お昼ごはんを食べに行くのかな?

何を食べるんだろう?

もしかしたらあの猫カフェに行くのかも。

いつかみんなで行きたいなって思った。

絶対、楽しいに決まってる。

今の私の頭の中はそんな感じ。

楽しい想像で回ってる。

くるくるって。

踊ってるみたいに。

そんな感じの中。

スマートフォンがなってるのに気がついた。

これはっ!

って思った。

きっと。

カナかたまこからの電話だって。

待ち合わせ場所で会えなかったのかも。

それとも好きな食べ物とかを聞きたいのかな?

私は慌てて画面を押して電話に出る。

ほとんど確認もしなかった。


「もしもしっ!」


言葉も何だか慌てた感じ。

自分でも分かるぐらいに。

どっちからの電話だろう……。

ドキドキして返事を待ってると。


「何を興奮してんの?」


とっても冷静な声が聞こえた。

何だか呆れたような雰囲気がある。


「何かいいことでもあったわけ?」


「何だ……アイコか……」


冷静なアイコの声を聞いて。

私の興奮も少し冷めてしまった。

いつの間にか立ち上がってた。

それにも気がついたから座る。


「何よ」


あからさまに不機嫌な声。


「アタシじゃ不満なわけ?」


抗議の言葉が聞こえた。

でも怒るのも当然だって思う。


「ごめん」


だから私は素直に謝った。


「アイコからの電話が不満ってわけじゃなくて……」


いつもならとっても嬉しい。

でもさっきは2人しか頭になかった。

だからちょっとがっかりしてしまった。


「分かってるわよ」


何だか勝ち誇ったような声。


「いっきはアタシのことが大好きだからねっ!」


「そうだね」


電話で話すのが楽しみなぐらいに。

学校でも仲良くしたいって思うぐらいに。


「私はアイコのことが好きだよ」


「何を恥ずかしいこと言ってるのよっ!」


自分から始めた話題なのに。

アイコはなぜか言う。


「馬鹿じゃないのっ!」


「わけわかんないんだけど……」


「分からなくていいのっ!」


「照れてる?」


「照れてないっ!」


中学生の頃とか。

よく告白ごっことかしてた。

だから私は好きとかいうのにあんまり抵抗がない。

好きな人には好きって言える。

でもアイコはあんまりそういうことをしたことないみたい。

だから過剰に照れてるんだろうって思う。

そういうところも好きだなって思う。

いつも私がからかわれてるから。

仕返しにからかってあげたいって気持ちもある。

でも。

後での仕返しが面倒くさそうだからぐっと我慢。


「そういえば何か用事なの?」


みたいな感じで話題を変えた。

用がなくても電話していいって思う。

私もただ話したいなーってだけで電話する。

でもアイコから電話があるのはだいたい用事がある時が多かった。

アイコはあんまり自分から電話をするタイプじゃないから。

だから何だか気になった。


「そうだったわ」


ってアイコは言う。

すっかり用事があって電話したことを忘れてたみたい。

おっちょこちょいだなって思う。

半分は私のせいかもしれないけど。


「今、家族で温泉に来てるのよ」


「そうなんだね」


温泉か……。

最近はあんまり行ってないなって思う。


「大分?」


九州の温泉っていえば……。

別府とか湯布院を思い浮かべる。

でも違った。


「平山温泉。熊本県」


「熊本なんだね」


熊本って行ったことないなって思った。

馬刺しが有名なのは知ってる。

お父さんが馬刺しが好きだから。

私はあんまり食べないけど。

馬を食べるってなんだか抵抗がある。


「それでお土産を買おうと思うんだけど苦手なものってある?」


「お土産っ!」


何だかテンションが上がる言葉。

それもアイコからもらえるなんてっ!


「何をくれるの?」


「やる前から何をやるか教えるわけないでしょ」


「それもそうだね」


何かなって想像するのもお土産の楽しみの1つだって思う。


「でもいっきが苦手なものを選んでもあれかなって思ったのよ」


何だかアイコらしくないって思った。

でも嬉しい心遣い。


「熊本って何が有名なの?」


「からし蓮根とか?」


「からしは駄目なんだよね……」


「なんか意外。わさびとかも?」


「全然駄目」


前にお寿司を食べた時。

間違えてお父さんとお母さんのを食べて死にそうになった。


「子供舌なのね」


ってけらけらと笑う。

アイコは平気でぱくぱく食べれそう。


「そもそも女子高生へのお土産にからし蓮根はないって思うんだけど」


好きな人はもちろん好きなんだろうけど。


「なんかお菓子とかがいいな」


「無難なチョイスね」


「無難でいいんだよ」


「そんなもん?」


「そんなもの」


一体どんなお土産を選ぼうとしてたのか。

ちょっと気になった。


「お菓子ならアイコのセンスに任せるよ」


何がいいんだろう。

そんな風に悩んで欲しいって思った。

そうしてくれたら嬉しい。


「アイコから貰えたら何でも嬉しいって思うしね」


「分かったわ!」


自信満々にアイコは言う。


「いっきがあって驚くようなものを買っていくわ」


「楽しみにしてる」


「楽しみにしてなさいっ!」


近頃はなんだか嬉しいことばっかりだって思う。


「そういえば」


そんな私にアイコは言う。


「今日は誰からか電話の約束だったの?」


「ううん。そうじゃなくて……」


私は迷った。

言おうかな。

言わないでおこうかな。

カナがたまこを遊びに誘ってるって。

それも2人で。

たまこからは秘密にしてって言われたけど。

でも、それはカナにってことだよね。

カナとたまこが仲良くしてるって知ったら。

アイコもまたカナと仲良くしてくれるかも。

そう思うとむしろ言ったほうがいい気がした。


「実はカナがたまこと遊びに行ってるんだよね」


「え? 本当?」


驚いたような。

そんな感じの反応だった。


「うんっ! カナがねたまこを誘ったんだって」


「それでいっきは……」


何だかアイコの声が変な気がする。

震えてるような、怯えてるような。


「私は誘われなかったんだ」


何だか嫌な予感がする。

でも私は話を続けた。


「カナは誘ったのを私に秘密にしてってたまこに……」


「2人はどこに行ったのか分かるっ?」


いきなりだった。

アイコが叫ぶように言った。


「ど、どうしたの……」


「知らないのねっ!」


「う……うん」


とんとんとんって……。

机みたいなのを指が叩く音がした。

何か焦ってるみたいだった。

私は心の中で不安が大きくなっていく。


「どうかしたの……」


「たまこって人が危ないのっ!」


「あ、危ないって……」


意味が分からなかった。

何で危ないのか。

何でアイコが焦ってるのか。


「アタシの時と同じなのよっ!」


「同じって……」


「アタシも同じように誘われて行ったら脅されたのっ!」


「脅された……」


私は思い出す。

アイコが学校にも来ないで。

布団の中で怯えてたことを。


「やっぱりカナは変わってないじゃないっ!」


「わ、分からないでしょっ!」


さっきまでの幸せな気分が。

すっかりどこかに行ってしまってる。


「カナは……カナはっ!」


私の友達。

私を守るって言ってくれてる人。


「下手するとあんたの友達がひどい目に合うわよっ!」


「ひどい目って……」


「アタシは包丁で刺されそうになったっ!」


「嘘……」


「嘘じゃないっ! いっきと縁を切らないと刺すってっ! カナは本当にするわよっ!」


アイコは嘘を言ってないって分かった。

だからこそ。

心臓がばくばくなってる。

どうしよう、どうしよう。

そんな考えが頭をぐるぐる回ってる。

崖から突き落とされた気分。

海で溺れてるような感覚。


「急げばまだ間に合うかもしれないわっ!」


「でもっ! どこに行けばいいかっ!」


カナがたまこを脅してるなら。

絶対に止めないとって思った。


「アタシが連れて行かれた場所は覚えてるわっ!」


「本当っ!」


「すぐに地図を送るわっ!」


「でもっ! 私、地図見ても場所が分からないっ!」


「アタシが案内したいけど……」


アイコは今は熊本にいる。

ここに来るなんて不可能。


「誰かいないのっ! 地図を見たら場所を知ってそうで……」


困った時に助けてくれそうな人……。

すぐに思い浮かぶのはカナ。

でも、今はそのカナのとこに行かなくちゃいけない。

だから……。

私はもう1人をすぐに思いつけた。


「ナツミに頼んでみるっ!」


「ナツミ……あいつか。でもあれなら……」


「アイコは地図をお願いっ!」


「分かったわっ!」


通話が終わった。

アイコの話が本当なら。

たまこが危ないことになってるなら。

急がなくちゃって思った。

私は急いでナツミに電話をする。

ナツミはすぐに出てくれた。


「ナツミっ!」


思わず大きな声を出す。

急がなくちゃ。

早く行かなくちゃ。

心は前のめりになってる。


「お願いしたいことがあるのっ!」


「急ぎなのっ?」


「うんっ!」


きっと。

私の声で緊急事態だって分かったみたい。

ナツミの声も大きい。


「今は学校にいるのっ!」


「うんっ!」


「すぐに行くからあの公園で待ち合わせでいいっ?」


「分かったっ!」


たぶんナツミも色々あるって思う。

でも私のために急いで来てくれる。


「本当にありがとうっ!」


「とっても大変な事になってるんでしょっ!」


「うんっ!」


「それじゃ急いで合流しようっ! 話はその後でっ!」


「分かったっ!」


それで電話は終わった。

私は急いで準備をする。

スマートフォンと財布。

それだけ持って家を出る。

急ぎなさいよっ!

アイコからのメッセージと一緒に地図。

行かなくちゃいけないところにマークがある。

でもどこか分からない。

急いでナツミに会わないとっ!

私は家を移動しながら電話をする。

カナとたまこに。

でも2人とも電話に出てくれない。

どしよう。

本当にっ!

アイコが言った通りにっ!

カナがたまこを……。

もしかしたらただの杞憂しれない。

実際は朝の想像通り。

カナとたまこは仲良くしてるのかもしれない。

でも、それならそれがいい。

私は恥をかくだけならそれが1番いいっ!


「いってきますっ!」


誰もいない家に。

私は大きな声で言った。

お願い。

お願いします。

アイコが教えてくれた場所に2人がいないで欲しい。

2人が仲良く遊んでて欲しい。

私は必死に祈った。

でも。

何だか嫌な想像が頭にこびりついて剥がれそうになかった。

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