60
12月は寒い。
とっても寒い。
でも1月ほどじゃない。
1月はとってもとっても寒いから。
1月と比べたら。
12月はそんなに寒くないかもしれない。
だけれども。
やっぱり12月は寒い。
朝起きるのが辛い。
布団から出るのも嫌。
顔を洗うのはお湯じゃないと無理。
朝のご飯は美味しい。
着替えずにまた布団に戻りたい。
学校を休んでぬくぬくと読書したい。
そんな気持ちでのろのろ支度をする。
そして意を決して外に出る。
暑いよりは寒いほうがいい。
それはずっと前から変わらない。
けど、寒いのが得意ってわけでもない。
わがままだなって自分でも思う。
でも高校生になってから。
特に最近は。
学校に行くのがとっても大好き。
もちろん、勉強が好きになったってわけじゃない。
でも学校が好き。
小学生の頃より
中学生の頃より
ずっと、ずっと。
「いってきます」
私は今日も家を出る。
外に出るのは辛いけど。
でも、家にいようとはあんまり思わない。
私はいつもより少し早足で歩く。
早くカナに会いたいから。
「おはよう」
そして着く待ち合わせ場所。
いつものようにカナが待っててくれてる。
「おはようっ! いっちゃんっ!」
カナは私を見るとぱって明るい笑顔。
寒かった体が、心ろが温まっていく感じ。
「今日も寒いよね」
「そうだねっ!」
「まだまだ寒くなるのかな?」
「みたいだねっ!」
「ちょっと困るね」
「あんまり寒かったらバスで通学する?」
「そうだね……」
私は考える。
バスの中はもちろん温かい。
歩いて行くより快適かもしれない。
でも……
「歩きの方がいいかも」
というか好き。
何だかバスとかはあんまり好きじゃない。
特に登下校とか大勢が乗るようなバスは。
「そうだねっ!」
それを分かってくれてるのか
「いっちゃんならそう言うって思ったっ!」
カナはそう言ってくれた。
でもカナはバスの方がいいって思ってるのかな?
そう心配になったけれど。
「わたしもバスより歩く方が好きかな」
そうも言ってくれた。
だから私はほっとした気分になれた。
「いっちゃんとのんびり歩いていくのが好きだからねっ!」
「私もだよ」
「ありがとうっ!」
「こちらこそだね」
やっぱり。
私とカナは気が合うって思う。
もしかしたらカナが合わせてくれてるのかも。
でも、それでも嬉しい。
「それじゃいこっかっ!」
「そうだね」
私とカナはいつものように学校へ向かう。
早くつきすぎないし、遅刻もしない。
ちょうどいい時間って思う。
「中学生のころはね」
吐く息がやっぱり白い。
私は朝に思ったことを話した。
「うん」
カナはにこにこって私の話を聞いてくれる。
「こんな寒い日はずっと家にいたいって思ってたんだ」
もちろん学校をサボるなんてしたことがない。
毎日毎日、ちゃんと学校へ行った。
もしかしたら寒いから休むで休めたかもしれない。
うちのお母さんなら。
でもむしろそんなお母さんだからこそ。
真面目に学校へ行ったのかも……。
「分かるっ!」
私の言葉にカナは頷く。
きっとカナも私と同じだったって分かってた。
「ずっと布団の中にいたかったよね」
「学校なんてくだらないって思ってたしね」
ってにこにこ言うカナ。
「でもくだらないって思うからこそ休めないのはあったよね」
……私は学校をくだらないって思ったことがない。
だからそこはちょっと違うって思ったし。
それにただ寒いから休みたいって思ってた自分がちょっと幼稚に思えた。
「でも今は学校行くの嫌いじゃない」
「私も」
「だっていっちゃんがいるからねっ!」
「私もカナがいるから学校は好き」
「そう言ってもらえると嬉しいなっ!」
「私もだよ」
「ありがとうっ!」
「こちらこそ」
私とカナ。
並んで歩く。
「それにね。最近はもっと楽しみになったんだ」
「学校へ行くの?」
「うん」
それは。
カナとたまこが仲良くなってくれたから。
初めてカナとたまこが部室でごはんを食べて10日ぐらい。
ちょっとずつだけど。
2人が仲良くなってるのが分かった。
カナは最初から普通にしてた。
たまこは緊張してたみたい。
でも少しずつ。
カナにも慣れてきたみたいで。
笑顔とかをよく見せるし、2人で話すことも多くなった。
そういうのを見るのが。
私はとっても嬉しいって思う。
「カナとたまこが仲良くしてくれるからね」
「そうだねっ!」
たまこと仲良くなれて。
カナもきっと嬉しいって思う。
「わたしも前より楽しいって思うっ!」
そう思ってくれるのは私も凄く嬉しい。
「たまこさんってすっごく可愛いしねっ!」
「そうだよね」
たまこは小さくて。
人見知りして。
ちょっと臆病なところがあって。
でも仲良くなると。
とびっきりの笑顔を見せてくれる。
そんなところがとっても可愛い。
「私もすっごく思う」
「だよねっ!」
前なら。
私が誰かを褒めるのはあんまりカナは好きじゃなかった。
でも、たまこはそうじゃないみたい。
きっとたまこを友達だって思ってくれてる。
敵じゃないって分かってくれてる。
だからだって思う。
きっとアイコも話せば分かってくれるって思う。
たまこと仲良くしてるみたいに。
前みたいに。
でも、もちろん言うことはできない。
そっちは少しずつ。
ちょっとずつ改善していけばいいって思ってる。
「これからもたまこと仲良くしてほしいなっ!」
「もちろんだよっ!」
カナの言葉と笑顔。
その2つが私を元気にしてくれる。
だから寒いのだって平気。
前、悩んでたのが嘘みたいだって思う。
本当に告白してよかった。
カナとたまこが仲良くなってくれてよかった。
私は前を向いて歩く。
今日もカナとたまこと一緒に食べれたらいいな。
どうせなら選択科目、カナと合わせておけばよかったな。
そうしたらもっと2人が仲良くなれたかもって思う。
それに3年生の時のクラス替え。
ちょっと気が早いけど……。
3人が同じクラスになれたらとっても嬉しいって思った。
私はちょっと浮かれてる。
でも、そうなってもしょうがないよね。
自分でも思う。
なんだか夢がかなったような。
そんな感じだから。
その時だった。
ぼそりって声が聞こえた。
……ごめんね。
そんな小さな声。
本当に聞こえたかも分からないような。
小さな、小さな声。
「どうかしたの?」
私は思わずカナにたずねる。
カナは先程と同じにっこりした笑顔。
「ん?」
そして可愛く首を傾ける。
「わたし何かしたかな?」
それを見て。
気の所為だったって思った。
そもそもカナが謝ることなんてないはずだし。
「ううん。気の所為だったよ」
私はまた前を見た。
心配することはない。
それが何よりも心強いって思った。
……
…………
………………
休み時間。
たまこと話してた。
ちなみに藍姫はお休み。
夜中にゲームしてて風邪をひいちゃったみたい。
何だか藍姫はずっと同じゲームをやってる。
そんなに面白いのかな?
私はあんまりゲームはやらない。
やっても下手で面白くないって思ってる。
でも何だか気になってる。
今度、どんなのか聞いてみようって思った。
「藍姫がいないけどお昼ごはんはどうする?」
たまこは藍姫がいる時は藍姫と。
いない時は部室か私達とって感じ。
だから今日はどうするんだろうって思った。
たまこはちょっと申し訳なさそうにいう。
「今日は部室で食べるんです」
「そうなんだね」
「ごめんなさい……」
本当に謝ってるみたい。
たまこみたいな可愛い子に謝られると。
何だか私が悪いみたいな気分になってくる。
どんな時でも私はたまこを責めたりできないだろうな。
そうも思う。
たまこにごめんなさいって言われたら。
きっとどんなことだって許してしまうだろう。
私は前の電話でナツミが言ってた言葉を思い出した。
可愛いは正義。
「本当はいっくんやカナさんと食べたかったんですけど……」
そう落ち込み気味に言う。
そんな姿も可愛いけど……
「謝らくたって大丈夫だよ」
やっぱりたまこは笑顔が1番似合うって分かってる。
「何か大事な用事があるんでしょ?」
「冬休みも合宿する部活があるらしんです」
「そうなんだね」
思い出すのは夏休み。
料理部は合宿する部活のために頑張ってた。
そのことをみんなとっても感謝してるみたい。
だから文化祭の時の料理部はとっても盛り上がった。
「だから話し合いとか多めにあるんですよね」
「あんまり話し合いとか好きじゃないの?」
「料理をするのは楽しいですけど話し合うのは疲れちゃいます……」
「分かる。私も得意じゃないからね」
何人かの前で。
自分の意見を言ったりするのは本当に難しい。
嫌でも目立つことになるし。
だからそういうのが得意な人は本当に凄いって思う。
「でも冬休みもって大変だね」
夏休みよりは期間も短い。
それに合宿する部活も少ないって思う。
でも、大変なことには変わらないはず。
「やっぱりたまこって凄いよね」
こんなに小さな体で。
一所懸命に作った料理で。
みんなを笑顔にする。
それは魔法みたいなことだって思う。
「そんなっ!」
私の言葉にたまこは恥ずかしそう。
「たまこはそんな凄くないですよっ!」
「またたまこの料理が食べれるなんてってみんな喜ぶと思うよ」
きっとナツミも大喜びだろうって思う。
今度の電話の時に教えてあげよう。
そしてたまこに迷惑かけないようにって言わなきゃ。
ナツミは好き嫌いとかなさそうだけど。
「私も間に合うなら合宿の申請しようかな」
どうすればいいかも分からない。
でもカナに聞けばやってくれるかも。
まだ間に合うかな?
間に合うと嬉しいな。
「合宿すればたまこの手料理を食べれるでしょ?」
「ほ、本当に合宿するんですかっ!」
「そういうのもいいかなって思う」
去年の冬。
カナと行った天体観測。
とっても懐かしい思い出。
今年はお父さんの仕事が忙しみたい。
遠出とかはちょっと難しい。
だから……
「一泊合宿するのもいいかもなって」
それ以上はちょっと大げさすぎる。
でも曇ったりしたらどうしよう。
そこらへんが天文部の難しいところ。
「それいいですねっ!」
料理部のたまこも賛成してくれる。
「その日はとびっきり美味しい料理を作りますねっ!」
「楽しみにしてるね」
それはちょっとえこひいきじゃないかな?
そうも思ったけど素直に嬉しいって思った。
「いっくんやカナさんに料理を作ってあげれるのはとっても嬉しいですっ!」
「カナと話すの慣れた?」
「はいっ!」
って自信満々に言う。
それにとびっきりの笑顔。
「カナさんとっても優しくて綺麗な人ですっ!」
「だよねっ!」
カナが褒められると私も嬉しい。
「カナももっとたまこと仲良くしたいって言ってたよ」
「本当ですかっ! 嬉しいですっ!」
「2人が仲良くしてくれると私も凄く嬉しいっ!」
「そういえば今度の日曜日にカナさんとお出かけするんですっ!」
「そうなの?」
って私は思わず聞いた。
だってそんな話は全然知らなかったから。
するとたまこはあっ!って驚いた顔。
「ご、ごめんなさいっ!」
そしてすぐ謝る。
何が何だか私には理解できてなかった。
「えっと……よく分からないんだけど……」
「一緒にお出かけするのいっくんには秘密にしてって言われたんです」
私に秘密?
内緒でたまことおでかけ……。
「多分ですけど何かいっくんにプレゼントとかじゃないかなって思ってます」
その言葉を聞いて。
「そういうのかもね」
って私は思わず納得した。
確かにカナはそういうの好きそう。
前なら1人で行ってたんだろうって思う。
でも、今は違う。
たまこがいるから。
「だからたまこが言ったって内緒にしといてくださいっ!」
「もちろんだよ」
思わず言っちゃうところがたまこっぽいって思った。
だからちゃんと内緒にしようって思う。
私も思わず言っちゃいそうになるはず。
だからぐっと我慢しないと。
「カナとお出かけ楽しみ?」
「もちろんですっ!」
っていうたまこはとっても嬉しそう。
カナもきっと同じだって思う。
そこに参加できないのは寂しいけど……
「その日はたくさん楽しんできてね」
「はいっ!」
2人が今以上に仲良く慣れるチャンス。
そう思うと私もわくわくしてきた。
当日は私も緊張してそわそわしそう。
そんなことを考えるぐらいに。
……
…………
………………
「合宿?」
「うん。合宿」
お昼休み。
私はいつものようにカナとお昼ごはん。
そこで合宿の話をした。
「夏休みにも思ったんだ」
「合宿したかったって?」
「うんっ!」
何だかちょっと興奮してる。
「お昼はだらって過ごして夜はたまこの作った料理食べて夜は屋上で一緒に星を見るの」
学校は街中にある。
だから去年ほど星は見れるわけじゃない。
でもすっごく楽しんだろうなって思う。
「その後は2人でお泊まり会をするんだねっ!」
カナも笑顔。
「そうだよっ! 楽しそうでしょ!」
「うんっ! 凄く楽しそうっ!」
やったって思った。
カナも凄く乗り気。
「まだ合宿の申請って間に合うかな?」
「どうだろうね?」
「難しいかな?」
期日が大丈夫でも。
天文部がするのは駄目ってこともありそう。
練習をしたりするわけじゃないんだし……。
「とりあえず申請してみるねっ!」
そんな不安をかき消すカナの言葉。
「生徒会長とはたまに話すからお願いしてみる」
「ありがとうっ!」
私はあんまり生徒会長と会うことはない。
文化祭の時のあのあんまり思い出したくないあれぐらい。
だけど、カナはたまに生徒会室に行く。
部長会議みたいなのだったり、それ以外だったり。
カナは選挙委員みたいなのだった。
だから生徒会長のこともよく知ってるのかも。
「合宿できたらいいねっ!」
「うんっ!」
合宿できたら本当に楽しいって思う。
「それに今度の……」
日曜日も楽しみっ!
そう言おうとして慌てて言葉を飲み込んだ。
内緒にしといてください!
そうたまこに頼まれてたのに。
私が内緒にできなくて。
カナとたまこのお出かけが中止になったら……。
そう考えるとちょっと怖い。
気をつけなきゃって思った。
「今度……何かあるの?」
変に固まった私にカナは言う。
「今度のテスト頑張らないとねって思ったんだっ!」
「そうだねっ!
上手く誤魔化せたかな?
「テストが駄目で補修で合宿できたのに駄目になったは嫌だからね」
「そろそろ部室でも勉強始めようか」
勉強っていってもメインは私が教えてもらうんだけど……。
「今回もよろしくお願いします」
だから私は丁寧にお願いする。
カナに教えてもらうと良い点数が取れるから。
「合宿のために頑張ろうねっ!」
「うんっ!」
今度の日曜日はたまことカナのお出かけ。
私は家にいるけどとっても楽しみ。
2人の仲が深まってほしいって願ってる。
それに冬休み!
合宿の申請が間に合うかは分からない。
でもできたらすっごく嬉しい。
きっと去年と同じぐらいの思い出になるって確信できる。
最近はずっと楽しい日が続いてる。
これからも楽しみな日々が続きそうだなって思った。




