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何だか学校全部がざわついてる。

いつもと何かが違う感じ。

あちらこちらでこそこそと話してる人が目につく。

もしかして……。

嫌な考えが思い浮かんでしまう。

でもすぐに違うって分かった。

だってみんな私には全くの無関心だから。


「何かあったのかな?」


私はほっとしつつカナに言う。

心配がなくなったら興味が出てきた。


「分かんないね」


カナは廊下で話しをしてる人を見て言う。

でもあんまり興味とかなさそう。


「面倒くさいこととかじゃなければいいんだけど」


「そうだね」


カナはあんまり興味ない。

私は興味津々。

でも何だかそういう態度は出しづらいって思った。

だからちょっと我慢しつつ教室へ向かう。


「また昼休みにね」


教室の前。

カナと少しのお別れ。

小さく手を降って言った。


「うんっ! またねっ!」


カナも笑顔。

私が教室に入るのを待ってくれる。

今日のざわつきの原因。

誰に聞けば分かるかな?

そう思いながら私は教室に入った。


「いつきさん、おはよう」


「おはよう」


「いつきっ! おはー!」


「……おはよう」


って感じで自分の席へと向かう。

そしてその間に目についた人がいた。

それは美香。

美香が私より前に教室にいるのはいつものこと。

でも起きてる。

いつもは時間いっぱい寝てるのに。

そして何だか。

困ったような。

気まずいような。

何とも言えない感じの表情。

それに周りの人も何だか美香のことを気にしてる。

それは廊下を歩く人もそう。

扉の隙間からちらりと美香を見ていく人が多かった。

ファンクラブの人たちなら分かる。

でも、明らかにそういう人たちじゃない人が多かった。

多分だけど……。

そして今日のざわつきの原因が。

今、気まずそうにしてる美香にあるって何となく分かった。

でも、何で?

までは分からない。

美香に聞くのが1番早そう。

もちろん、素直に教えてくれるのならだけど。

でも。

きっと無理そう。

いつも以上に睨まれて終わりだけな気がする。


「おはようございますっ!」


ぼんやりと考えてると。

後ろからたまこの声が聞こえた。

どうやら私の後に来たみたい。

いつもは私より先にいるのに。

寝坊したのかな?

急いできたのかな?

何だか疲れてるようにも見える。


「おはよう、たまこ」


私が言うと嬉しそうに微笑んでくれる。

この笑顔が今日も見れて本当に嬉しい。


「今日は寝坊したの?」


私の質問に。

たまこはふるふるって仕草で答える。


「ちょっと探しものをしててっ!」


「見つかった?」


「はいっ!」


「よかったね」


「良かったですっ!」


たまこは嬉しそうに言う。

何を探してたのかは分からない。

でも、きっと。

大事な物だったんだろうなって思う。

そしてたまこはちらりと美香を見る。


「やっぱり気になる?」


そんなたまこに私は言った。

美香の状況はさっきと変わらない。

相変わらず困ったような表情。


「おはよー」


そんな中。

次にやってきたのは藍姫。

とっても眠そうに欠伸してる。

きっとまた夜遅くまでゲームをしてたんだろう。

何か最近の藍姫はそんな感じの日が多い。


「おはようございますっ!」


「おはよう」


「何かあったの?」


「分からないです」


「私も分からない」


何だかこのままじゃ……。

ただみんなで分からないって言ってるだけ。

うーんと考えて私は亜里沙に声をかけることにした。

自分の席で数人と話をしてる。

たまに美香を見てるから事情を知ってそう。


「亜里沙っ!」


「ちょっと待ってっ!」


そう言いつつも。

私が呼ぶとすぐに来てくれた。


「本当に大事件っ! びっくりしった!」


何だか興奮した感じの亜里沙。


「私達、何をみんなざわついてるのか知らないんだ」


「そうなんだっ!」


そんなことも知らないの?

みたいなリアクション。

たまこと藍姫はちょっと一歩ひいた感じ。

少し後ろで私と亜里沙のやり取りを見てる。

そういえば2人ともあんまり亜里沙と話さないんだっけ……。

いきなり呼んじゃって悪いことしたって思った。


「川島さん知ってるよね?」


「そりゃね……」


よくうちのクラスに来てるのもある。

でもそうじゃなくても知ってても不思議じゃない。

あんなに可愛かったらとっても目立つし。


「川島さんが髪をばっさり切ってきたみたいなのっ!」


「ええっ!」


って声が聞こえた。

アイコと藍姫が驚いた声。

それに私も思わず言った。

川島さんは全部が可愛い。

でもやっぱりあの綺麗な髪が1番目立ってた。


「でも切ったっていってもセミロングみたいな……」


「ちょっと待ってっ!」


言いながら亜里沙はスマートフォンを取り出す。

そして操作して出てきた画面を私に見せる。


「うそ……」


私は思わずつぶやいた。

そこにうつってたのは川島さん。

でもすぐには川島さんって分からなかった。

髪が私と同じぐらい短くなってたから。

本当にばっさりって感じ。

短くなった髪の川島さんはとびっきりの笑顔でうつってる。

何だかちよっと中性的な感じも出てて……。


「すっごく可愛いですねっ!」


驚いた感じの声。

たまこが写真を見て言った。

私も心からの同意見。

これだけ短くしてすっごく可愛いだなんて……。

何だかずるい気がしてきた。


「何で亜里沙が写真持ってるの?」


「朝にお願いしたんだ」


「写真撮っていいかって?」


「うん」


「いいって言ってくれたんだ」


「そうじゃなきゃ盗撮になるでしょ」


「それはそうだけど……」


私はきっとそんなお願いはできない。

緊張して話しかけれないかもしれない。


「でもなんで髪の毛を切ったのかな?」


私は亜里沙にたずねる。

亜里沙はスマートフォンをポケットに入れる。

もうちょっと見たかったのに……。


「それで色々噂になってるんだよね」


だから学校中がざわついてて。

美香が注目されてるのか。

何だか納得した感じがした。


「1番は失恋かな」


「それが最初に思いつくよね」


失恋相手といったらやっぱり美香。

でも前から美香はあんまり相手にしてなかった。

だから失恋っていうのも何か違う気がする。


「何か部活で揉めたみたいな噂もあるんだよね」


「美香と川島さんが?」


「土曜日の部活を相対する川島さんを見たって人がいるんだよね」


「そうなんだ……」


それで日曜日に髪をばっさり切って。

そして今日……。

みたいな感じかな?

私がたまこに告白している間に。

演劇部は演劇部で色々あったんだなって思う。


「でも今日の朝練には元気に参加してたみたいなんだよね」


「部活をやめたわけじゃないんだね」


「そうみたい」


それを聞いてなんだかほっとする。

川島さんは私の存在すら知らないだろうけど。


「だからこそ色々な噂が流れてるんだよね」


「でも似合ってるからいいって思う」


「だよねっ!」


何だかニヤケ顔で亜里沙は言う。


「実物は写真の10倍ぐらい可愛かったんだからっ!」


大げさな感じ。

でもきっと本当にそうなんだろうなって思う。


「あたしは前はそんなにだったけど今はファンクラブに入りたいぐらいっ!」


それにすっかりファンになってるみたい。

きっと亜里沙みたいなのが多いんだろうって思う。

また演劇部が目立つようになるなって思った。

それで美香が困ったような感じになってるのかもしれない。


「そんじゃ自分の席に戻るからっ!」


「うん。またね」


あの写真ちょうだい。

思わずそう言いそうになったのを我慢した。


「本当に可愛いですよねっ!」


亜里沙が席で会話を再開したんを見て。

たまこが言った。


「私、見れなかった……」


そんな横で藍姫がつぶやく。

そういえば藍姫はアイコのさらに後ろにいた。


「見たかったな」


さらに不満そうにつぶやく。


「そんなに見たかったら言えばよかったのに」


亜里沙なら喜んで見せるって思う。


「なんかそういうのはしづらいなって」


「藍姫って人見知りだっけ?」


たまこはそうだって知ってる。

だから亜里沙が来たときに喋れなくてもしょうがないって思う。

でも藍姫まであんなに黙ってしまうのはちょっと以外。


「少しだけね」


「たまこも人見知りですっ!」


「それに亜里沙さんはリア充っぽいし……」


リア充……。

どこかで聞いたことがある言葉。

何だったかな。

いつだったかな。

私はぼんやりと考える。


「いい人って分かるけど何だか苦手」


「亜里沙は見た目はちょっと怖いからね」


もちろん美香ほどじゃなけど。

あとあの金髪の1年生。


「そういえば……」


何だか思い出した。


「アイコもリア充が苦手とか言ってた気がする」


あれは夏休み。

アイコと追いかけっこした時。

その時にナツミに対して言った気がする。

さっきの藍姫と同じ言葉。


「アイコもきっと言ってるって思う」


苦笑いしながら藍姫は言った。


「似た者同士なんだね」


「だね」


だからこそ仲良くなったし。

好きになったんだろうって思う。

川島さんはまだ美香のことが好きなのかな?

それは分からないって思った。

演劇部を続けてるならそうかもしれない。

今の美香なら。

きっと川島さんの思いを無下には扱わないって分かる。

だからこそ今も困った顔してるんだろう。

どんな理由で川島さんが髪の毛を切ったのか分からない。

でもきっと前向きな理由なんだろなって思った。


……

…………

………………


「そんな騒ぎだったんだね」


「うん。そうなんだ」


川島さんが髪をばっさり切った話。

さすがにもう落ち着いてる。

今日も川島さんは昼休みが始まってすぐに教室に来てた。

そして美香を引っ張って出ていった。

いつもは凄く抵抗する美香。

でも今日はやけに素直についていってた。

あれを見ると失恋とかじゃないって分かった。

でも、何でってのは分からない。

きっとずっと分からいんだろうって思う。

それに、それでいいとも思う。

実物の川島さんは確かに写真より10倍ぐらい可愛かったし……。

いや、それ以上かも……。

少し落ち着いてた川島さんのファンクラブ。

きっとまた活発になるんだろうなって思った。


「そんなに可愛かったの?」


「そうだね」


「……わたしも髪の毛をばっさり切っちゃおうかな……」


ぼそりと凄いことを言う。


「カナは大丈夫だって思うっ!」


だから私は慌てて言ってしまった。


「カナは今のが1番似合ってるって思うからっ!」


それに私は。

カナのふわふわってした髪が大好き。


「いっちゃんは切ってほしくない?」


「うんっ! それに私はカナの方が可愛いって思うし……」


そんなことを私が言うと。

不満そうな表情だったカナが変わる。


「ありがとうっ!」


ぱっと笑顔に。


「それじゃ切らないでおこうかなっ!」


「それがいいって思う」


でも私は……。

何だか自分の髪が気になる。

今まではこれが1番いいって思ってた。

私はそんなに可愛くないって分かってる。

だからこういうのがいいのかなって。


「逆に私が伸ばしてみ……」


「駄目だよっ!」


言い終わる前にカナが言った。


「いっちゃんはそれでいっちゃんだからっ!」


「そ、そうだよね……」


あまりの迫力に思わずそう言うしかなかった。

でもカナがそう言ってくれるなら。

このままがいいよね。

そう素直に思えた。

それからはいつもと同じ感じ。

ゆっくりと。

まったりと。

お弁当を食べながら。

お弁当を食べた後も。

お喋りをした。

もうすぐにでも12月。

12月といえば冬休み!

でもその前に期末テストがある……。

当たり前だけどそういう会話も少し増えてる。

気が滅入っちゃうような話題。

でもカナとなら楽しくもあった。


「今度も勉強教えてね」


「うんっ! 任せてねっ!」


私は今まで一回も追試も補修もを受けてない。

あんまり自慢することじゃないかもしれない。

でも数学もそれなりに取れてるのは嬉しい。

カナが勉強を教えてくれる。

だから頑張れてるって思う。


「そろそろ時間だね」


時計を見たカナが言う。

もうそんな時間……。

いつも思う。

昼休みって長いようで短いって。


「あのね」


そして最後に。

お願いしたいって思ってたこと。

それを言おうって決めた。


「どうかしたの?」


「うん。お願いがあるんだけど……」


「お願い?」


「たまにでいいからたまこをここに呼んでもいいかな?」


「たまこさん?」


「うん」


そうしないとカナとたまこが仲良くなれないかもって思った。

そもそも会う機会もないんだし……。

だから週に1回でも一緒にごはんを食べてくれると嬉しい。

私はそう思ってた。

もちろん、2人が良ければだけど。


「2人は仲良くなって欲しいし……」


ちょっと不安。

でも、きっと大丈夫。

カナは優しいから。

毎日はきっと嫌だろうって思う。

ここは私とカナの部室だし。

でも週に1回とかなら……。


「駄目かな?」


「ううんっ!」


カナはすぐに返事をくれた。


「大歓迎だよっ!」


「ありがとうっ!」


私もすぐに返事をした。

アイコが持ってる不安。

きっとそれは思い過ごし。

でももちろん無理に会わせたりもしない。

いつか分かってくれるって確信してるから。


「今度、声をかけてみるね」


たまに藍姫が漫画研究部の部室で食べることがある。

そんな時はたまこも部室へ行く。

その時に誘ってみるのもいいかもって思った。


「うんっ! たまこさんが来るの楽しみにしてるねっ!」


本当に嬉しそうにカナは言ってくれた。

だから私も凄く幸せな気持ちになれた。

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