表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/156

57

「何かいいことでもあったの?」


夕ご飯を食べた後。

ぼんやりしてたらお母さんが言った。

私の頭の中は今日の出来事でいっぱいだった。

だからちょっとだけ反応するのが遅くなった。


「それにいつも以上にぼんやりしてるわね」


お母さんは楽しそうに言う。

普段の私ならちょっとむってなってなって思う。

でも、今日は違う。

どんなこと言われたって平気。

それ以上に嬉しいことがあったから。

でも、なんでお母さんは気がついたんだろう。


「嬉しいことはあったけど……」


そんなこと一言も喋ってないのに。


「何で分かったの?」


私はそうたずねた。

するとお母さんの表情が変わった。

今度は何だか呆れたような感じ。


「そんなの分かるに決まってるわよ」


次はまた嬉しそう。

こんなに表情がころころ変わるのは珍しいと思う。

まるでお父さんみたい。


「帰ってきてからずっと嬉しそうにしてるしね」


「……そう見えたの?」


「そうにしか見えなかったわ」


「私ってそういうのが分かりやすいかな?」


「とってもね」


やっぱりお母さんは嬉しそう。

なんでそんなに嬉しそうなのかはいまいち分からない。

でも、分からないでも。

お母さんが嬉しそうなのは、私も嬉しい。


「ここ最近はとっても落ち込んでるみたいだったしね」


「それも分かってたんだ」


心配かけてたんだって分かった。

知らないうちに。

だからこそこんなに嬉しそうなのかもしれない。

私も。

お母さんがとっても落ち込んでたら心配する。

その後に元気になってたらとっても嬉しい。


「いっちゃんってとっても素直だから」


「私、自分のこともっとクールな性格だって思ってた」


実際にそう言われてた。

小学生のころとか、中学生のころとか。

でも、今は違う。

学校でも私をクールな感じって見る人はほとんどいない。


「私って変わったのかな」


「それもあると思うわ」


お母さんは立ち上がる。

そしてお茶を飲む用意をする。

急須にお茶っ葉を入れてお湯を入れて……。


「でも本質的なところは変わってないわ」


「……そうかな?」


「だって家ではとっても分かりやすい子だったから」


「そうだっけ?」


「私が言うんだから間違いないわよ」


なんだか凄く説得力がある言葉。


「今までは転校が多かったからじゃないかしら」


「関係あるかな?」


「だって今より仲がよかった友達っている?」


「友達?」


「そう。カナちゃんとかね」


「そう言われたら……」


そうとしか言えなかった。

それはカナだけじゃない。

今の私には。

たくさんの友だちがいる。

それは中学生の時と1番の大きな違い。


「それだけいっちゃんの本質を分かる人が増えたのよ」


「ちょっと複雑に思っちゃうけど……」


「クールって思われたかったの?」


「そうじゃないけど、ギャップみたいな……」


「いっちゃんって私に似てそういう容姿をしてるしね」


小さい頃からよく言われること。

お母さんの小さい頃に、若い頃にそっくりだって。


「だから余計にそう思われてたのよ」


「お母さんもそうだったの?」


「私は違うわ」


そうばっさりと言う。

すっきりするぐらいに。


「いっちゃんの性格はお父さんに似てるから」


「そうかもしれないね」


お母さんの容姿。

お父さんの性格。

私は宇宙人で。

お父さんとお母さんの本当の子供じゃないかもしれない。

でも、そういうのは。

ちゃんと受け継がれてるんだなって思えた。

お母さんとお父さんには。

きっと自分が宇宙人だって。

言えるはずがないって思う。

その言葉は少なからず2人を傷つけるって分かってるから。

でも、今の私は。

以前の私よりずっと。

2人のことを信じれるって確信してる。


「私のお母さんとお父さんが2人で良かったって思ってる」


私が言うと。

お母さんはびっくりしたような表情。

その後に笑顔。

でも、目の端に小さな涙が見えた。

お母さんは慌ててその涙を拭う。

そして変わらない表情で言った。


「いっちゃんがそんなことを言ってくれるなんてね」


「たまにはね」


もし2人がお母さんとお父さんじゃなかったら。

きっと……ううん。

絶対に私はもっと酷いこどになってたって思う。

2人の子供で本当によかった。


「私もいっちゃんで良かったって本当に思ってるわ」


「私はいい子だからね」


「そうね」


言いながら。

くすりって微笑むお母さん。

何だか凄く恥ずかしいと思えるような会話。

でも、そういうのもたまにはいいかもなって思った。


……

…………

………………


お母さんとの話が終わって。

私はアイコに電話をすることにした。

そういえばって思ったから。

今日のことをアイコに伝えなくちゃって。

私はスマートフォンを操作する。

そしてアイコのところをさわって電話をかけた。

少しのコール音。

アイコはすぐに電話に出てくれた。


「どうかしたの?」


過剰なぐらいに声を抑えた感じ。

いつものアイコの声。

アイコも電話が苦手なのかもしれない。

電話でのアイコの声を聞くたびにいつも思う。

私もそんな感じになっちゃうし。

でも今日は違った。


「えっとねっ!」


思わず大きな声を出してしまう。

前のめりになっちゃう。


「何を興奮してるのよ……」


呆れたような声が聞こえた。

何だかその声で冷静になれた。

少しだけだけど。


「何かいいことでもあったの?」


「うんっ!」


「それをアタシに聞かせたいわけね」


「そうっ!」


「……あんまりいい予感はしないんだけど……」


いい話って言ってるのに。

いい話に決まってるのに。

アイコの声は浮かない感じ。

どうしてだろうって思う。

聞いてもらえれば分かってくれるはず。


「でも一応聞くだけ聞いてみるわ」


「うんっ!」


そして私は話をする。

今日の話。

ジカナを説得するために。

たまこに告白をした話。

たまこと会って。

そして迷ったけど秘密を告白した。

たまこはすぐにそれを受け入れたくれた。

その後にカナに会って……。

カナもたまこと友達になってくれた。

そんな話を一気にしてしまった。


「これでアイコもまた学校で話できるよっ!」


それにまたアイコとカナが友達になれる。

もしかしたら。

ナツミとカナも友達になるかもしれない。

こんなに嬉しいことは他にないって思う。

きっとアイコも喜んでるだろう。

そう確信していた。

でも……


「そういうことね」


違った。

何だかため息も一緒に聞こえてきそうな声だった。

とっても意外な反応。

正直言って動揺してしまうぐらいに。


「そんなことだろうって思ってたわ」


それは完全に突き放すような言葉。

どんっ。

何だか崖の上から押された様な気がした。

真っ逆さまに海へ落ちていく感覚。


「何でそんな風に言うの?」


何だか今日の興奮が一気になくなっていくのが分かる。


「アイコだって嬉しいはずじゃないの?」


何だかまた泣きそうな気分。

油断したら涙がこぼれそうだった。

最近の私はとっても情緒不安定だ。


「……ごめん」


そんな雰囲気を感じ取ったのか。

アイコは言った。


「いっきの気持ちを考えてなかった」


「……アイコはやっぱり私と学校で話したくないの?」


「そうは言ってないでしょ」


今度ははっきりと聞こえた。

大きなため息が。


「話せるなら話したいわよ」


「それじゃ!」


「でもまだ難しいって言いたいの」


「でもカナは……」


「それぐらいでカナが考えをかるって思えないの」


「でもたまこと仲良くするって言ってた」


「本当にあんたは人を信用しすぎるわね」


「だってカナが言ってるんだもん……」


「アタシはあんたほど信用できないってこと」


「またカナに脅されるかもって?」


「言ってしまえばそうね」


アイコは少しの間を開ける。

そして強調するように言った。


「その通りよ」


アイコがカナにどんな風に脅されたか分からない。

でもとてつもない拒否反応を感じた。


「そもそもカナはあんたを守るためにって言ってるけど」


「それはその通りだと思うんだけど」


「もちろんそれもあるわ」


「違う考えもあるってこと?」


「うん。だからそのたまこって人も気を付けた方がいいかも」


「…………」


「本当にごめん」


心から謝ってる声。


「できるならいっきの言うとおりにしたい」


「でも無理なんだね」


「今はね。でもいつかはきっと来るって分かってるから」


また学校で話せるようになれる。

アイコはそう言ってくれた。

もしかしたら私を慰めるために言ってるのかもしれない。


「その時までこうやってお喋りしながら待ってるわ」


「……分かった」


カナにアイコのことは話せないなって思った。

もし話してしまったら。

こうやって電話で話すこともできなくなるかもしれないから。

それだけは絶対に嫌だって思った。


「今日は喜んでるところに本当にごめん」


「ううん」


私は言った。


「私もちょっと浮かれすぎてたかも」


「でも嬉しそうな声が聞けたのはアタシも嬉しいから」


「ありがとう」


「……このまま雑談って雰囲気でもないね」


「そうだね」


「今度はこっちから電話するね」


アイコがそんなことを言ってくれるのは初めてだった。


「分かった」


「だから泣いたりしないでよ」


「泣かないってっ!」


思わず大きな声を出した。

一緒に涙も奥に引っ込んだ。


「それだけ大きな声を出せるなら安心ね」


言いながらけらけらって笑う。

私もちょっとだけ元気がでた。


「それじゃまたね」


「うん。またね」


そうやって電話が終わる。

思ってたのとは違う会話。

でも今日の出来事が無駄になったわけじゃない。

そう自分に言い聞かせる。

たまこに告白できた。

たまこに受け入れてもらえた。

たまことカナが友達になれた。

それで十分すぎるはず。

最後にちょっとつまづいたからって。

あんまり落ち込む必要もないって自分に言う。

きっとすぐにみんなと話せる日がくる。

そう信じようって思った。


……

…………

………………


「いってきます」


そう言いながら家を出た。

朝起きて。

できるだけいつものようにすごした。

でも思う。

きっとお母さんには分かってるだろうって。

私が少し落ち込んでるって。

でもそれを前面に出すのはやっぱり難しい。


「おはようっ!」


色々考えている間に。

いつもの待ち合わせ場所に到着した。


「うん。おはよう」


カナはいつもの笑顔。

アイコはカナを信用できないって言った。

でも私はカナを信じたいって思ってる。

カナがいなかったら。

絶対に今の私はないって確信できるから。


「……あんまり元気ないの?」


「ううん。そんなことないよ」


「よかったっ!」


「……昨日はありがとう」


「昨日?」


「たまこと友達になってくれて」


「ううんっ!」


カナは小さく首をふる。


「わたしも友達ができるのは嬉しいしねっ!」


「だよねっ!」


私を受け入れてくれる人なら。

カナも友達になってくれる。

やっぱりそうだって分かった。


「たまこと仲良くして欲しいなっ!」


「もちろんだよっ!」


ってカナはすぐに言ってくれた。

悩む時間とか全然なかった。

心からの言葉だって信じることができる。


「でも本当に昨日はびっくりしたよ」


「そうだよね」


だってたまこに告白したって言ったから。

カナからしてみれば。

何で勝手なことをしたって怒ってもいいって思う。

もしたまこが私の敵で。

私が宇宙人だってみんなに広めたら。

今までカナが守ってくれてたのが台無しになっちゃうから。

でもカナはそんな私を責めずにいてくれた。


「でもなんで秘密を話したの?」


「……何だかそうしなきゃって思ったんだ」


本当のことを言った。

でも全部のことを言ったわけじゃない。


「わたしの時と同じ感じかな?」


「ちょっと違うかも」


カナの時は本当に思わずって感じだった。


「でも感じてたものは同じかもね」


「いっちゃんってたまこさんのことが好きなの?」


「うん。好きだよ」


だから告白することができた。

でも同時にだから告白できないって考えもある。

そこらへんのバランスはとっても難しい。


「カナと同じぐらいにだけど」


「そうなんだねっ!」


相変わらずカナは嬉しそうに言う。

前なら何だか複雑そうにしてたのに。

でもたまこが仲間だって分かったから。

カナも素直に嬉しそうにしてる。


「わたしもたまこさんと仲良くなれるように頑張るねっ!」


「ありがとうっ!」


3人で仲良くできれば。

きっとアイコも分かってくれる。

そしてナツミにも告白して……。

それで4人で部室でお弁当とかを食べれたらいいな。

私はそんなことを夢見ながらながら学校へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ