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文化祭が終わって二週間ぐらい。
衣替えの期間も終わってみんなが冬服を着てる。
私は今年もいつの間にか冬服を着ていた。
やっぱり意識しないと気が付かないよね。
そんなことを言ったらカナに笑われた。
今は秋でそんなに寒くはない。
昼になるとちょっと暑い。
でも朝とか夕方はちょっと寒い。
そん感じ。
全体的に見れば過ごしやすい季節。
夏は暑くてだるい。
冬は布団からでたくない。
そんな事情もあって寝坊とかが多くなったりする。
でも今の季節は割りと早起き。
いつもと比べてだけど。
今日もカナに挨拶したのは待ち合わせの時間前。
「おはよう、いっちゃん」
「うん。おはよう」
「最近ちょっと寒くなってきたね」
「だね。暑くなくなったのは嬉しいかな」
「いっちゃん死にそうになってたもんね」
「何で夏なんてあるんだろうね」
って知ってるけど言う。
季節があるのは地軸の傾きがあるから。
でもなんで傾いてるのかはよく分かってないみたい。
「年中過ごしやすいのもいいかもだけど……」
カナはにこやかに言う。
文化祭ではちょっとしたことがあった。
でもすぐに仲直りをして、すぐに元通りになった。
「ずっと平穏なのもつまらないんじゃないかな?」
「うーん。そういうのも憧れるけど……」
でも実際になってみたらどうなるんだろうな。
季節がない世界。
ずっと過ごしやすい季節。
快適に暮らせるのはいいことだって思う。
でも衣替えもなくなるし、イベントだって変わってしまうかもしれない。
それに……
「暑いーとか寒いーとかカナと話せなくなるのは寂しいかな」
結局のところ不満を言うけどそこまで不満じゃない。
こうやって文句を言うのも季節の楽しみ方。
ちょっと捻くれてるかもだけど私はそう思う。
カナも同じように思ってくれたのか……
「だねっ!」
って笑顔で同意してくれた。
カナと話すのは楽しい。
のんびり何でもない話をするのが好き。
そうやって歩く通学路は幸せだって思う。
「そういえばね」
カナは私の顔を見ながら言う。
「この前、進路希望調査を渡されたでしょ?」
「そんなのもあったね」
確かお母さんに渡して。
それっきり。
「いっちゃんって進学するんだよね?」
「そうだね。カナも?」
「うん。学校とかそういうのは全然だけどね」
「私は司書を目指せる所かな」
夏休みにできた夢。
たまに図書室で話しを聞いたりしてる。
「わたしはいっちゃんと同じところがいいなっ!」
無邪気な笑顔でカナは言う。
そういうのは何だか予想できたことではあった。
私も似たようなことを考えてたし。
でも、難点が1つ。
「その場合は私が一所懸命に勉強した方がいいんだよね……」
何だか私のためにカナの行く大学が狭まるのは良くないって思う。
だから一緒のところに行きたいなら、私が合わせないと。
……考えただけで気が重いけど……。
私はクラスの平均のちょっと下。
そしてカナは学年でも上位に入るぐらい。
「わたしはこだわりないからいっちゃんい合わせてもいいよっ!」
「……できるだけやってみるよ」
もし本当にカナと同じ大学を目指すならだけど。
私ももちろんそうしたいって思う。
でも、私とカナなら別々の進路になっても大丈夫じゃないかな。
そう考えることもあった。
それぐらいならなんとかなるかもって。
だけどそう言うことも難しいって思う。
もしかしたらカナを傷つけるかもしれないし。
「でもまだ先のことだよね」
私は前を見ながら言った。
1年ぐらい先の話。
まだずっと高校生でいれるような気がする。
たぶん、そう思いたい。
「だよね」
カナはやっぱり私を見ながら言う。
「ずっと、ずっと先のことだよね」
未来のことは大事。
でもやっぱり私は今を大事にしたい。
カナと一緒にいる今を。
「そういえばね」
って私は話題を変える。
カナに借りて読んだ本のことを話したいって思った。
とっても、とっても面白かったって。
……
…………
………………
「おはよう」
私は教室に入りつつ扉の近くの席の人に挨拶する。
みんな私に挨拶を返してくれる。
気持ちのいい朝だなっていつも思う。
文化祭が終わって変わったこと、変わらなかったことがある。
カナと仲良しなのが続いてるのは変わらないこと。
そしてクラスで仲がいい人が増えたのが変わったこと。
朝とかに挨拶する人が前よりずっと増えた。
ほとんどの人とするかもってぐらい。
去年なんてカナ意外とほとんど挨拶してなかったのに。
「おはようございますっ!」
席まで行くとたまこがとたとたっていう足取りでやってきた。
たまこは今日も元気で、可愛い。
いつも楽しそうに部活を頑張ってる。
それはもちろん、前から変わらないこと。
「おはよう、たまこ」
私が言うとたまこは嬉しそうな笑顔。
何だか頭をわしゃわしゃってなでたくなる。
でもきっといきなりそんなことをしても嫌がられそうだから我慢……。
美香は……。
って席の方を見るといつものように寝ていた。
本当に気持ちが良さそうに眠ってる。
今日も朝練で大変だったんだろうなって思った。
「美香は本当に変わったよね」
何となくな感じで私は言った。
最初に見た美香は、ちょっと前の美香は。
正直言ってあんまり好きじゃなかった。
嫌いだったって言っても大げさじゃないかもしれない。
でも、今の美香は好きだって言える。
頑張ってって素直に言える。
「美香ちゃんは変わったんじゃないですっ!」
たまこも美香を見ながら言う。
「元に戻ったんですよっ!」
「そうかもね」
といっても私は前の前の美香を知らない。
たまこはずっと前から美香のことを知ってる。
美香もずっと前からたまこのことを知ってる。
そういうのって何だか凄いなって思う。
私も何年か後にはそういう人ができたら嬉しい。
だから今いる人を大事にしたいって思ってる。
「そういえば文化祭の後に美香のファンクラブができたの、知ってる?」
私が言うとたまこはびっくりしたように言う。
「本当ですかっ!」
それが文化祭の後で変わったこと。
演劇部の出し物が評判になって、たくさんの人が見たらしい。
あの時に体育館にいたのはたくさんってわけじゃなかった。
でも録画もされてたからそれで見た人が多いとか。
それで主演をしてた美香が注目された。
美人だし、演技も凄かったって思う。
でも愛想が悪すぎるのはどうかって思うけど。
「くるる……新聞部の1年生に聞いたんだ」
もっともまだ人数は少ないとか。
それにファンクラブがある生徒は他にもたくさんいるみたい。
私の知らないところで色々なことがあってるんだなって思った。
「そうなんですねっ!」
たまこはとっても嬉しそう。
まるで自分のことのように喜んでる。
もっとも美香自身はそんな状況を喜んではなさそうだけど……。
「やっぱり美香ちゃんは凄いですっ!」
「うん。凄いって思う」
素人からあそこまで出来るようになる。
それはきっととっても難しいことだって思った。
もちろん、美香にセンスとか才能があったのは間違いない。
でもだからといって努力しないとできないことだって分かった。
私は終わった直後に記念写真を求めてた1年生を思い出す。
きっとあの子もファンクラブに入ってるだろう。
……私も入ろうかな。
なんてことを考えてすぐにやめる。
だって美香に嫌がられるから。
きっと、絶対、間違いなく。
「でも、たまこにもありそうだけどね」
ふと思ったこと。
美香を見ていたたまこの視線がこちらにうつる。
「ありそう……って何がですか?」
「ファンクラブ」
「ファンクラブって……たまこの?」
「うん」
「あるわけないじゃないですかっ!」
ちょっと恥ずかしげな感じでたまこは言った。
何だか私にからかわれたって思ったみたい。
割りと本気で言ってるんだけど……。
「でも文化祭の時もたまこ人気あったし」
あれは凄い熱気だったって今でも思う。
「みんなたまこをからかってるだけですよっ!」
たまこは本当に恥ずかしそう。
周りの人も
「たまこちゃんってファンクラブあるの?」
「あるならアタシ入ろうかなっ!」
なんて悪ノリしてくる……。
「ないですって! たまこはそんなに凄くないですしっ!」
恥ずかしそうに否定する姿は可愛い。
もっと見たい気もする。
でも嫌われるのは嫌だって思う。
だからこのへんでやめておこう。
「ごめんね。何となく気になったんだ」
私が言うとたまこはふるふるって首を振った。
「あっ、謝ることじゃないですっ!」
そんな仕草とかを見るとやっぱり思う。
ファンクラブってあるんじゃないかなって。
きっとたまこが恥ずかしがるから影でこっそり応援してるんだろうって思った。
でも運動部の人達ばっかりだから熱気は凄そう。
「でも応援してくれる人がいるならやっぱり嬉しいですねっ!」
「そうだよね」
応援するのは楽しい。
応援してくれるのは嬉しい。
そういうのが大きくなってファンクラブとかできるんだろうなって思った。
そう考えるとファンクラブって思ったよりも素敵。
でも自分のができてほしいとは思わない……。
まぁ私はそんなのできるほど凄くもないし、注目もされないけど。
……
…………
………………
文化祭が終わって変わったことはいくつかある。
でも全部がいいことってわけじゃない。
「もうすぐ中間テストだね」
って言うけど気力が入らない。
朝に勉強頑張らないとって思ったはずなのに……。
「そうだね。割りと憂鬱」
藍姫もため息をつきながら言った。
移動教室の帰り道。
私は藍姫と並んで歩いた。
いつもはたまこも一緒のことが多い。
でも今日は美香と一緒に2人で行動してた。
そういう日ももちろんある。
「ついさっきまで文化祭で頑張ってた気がするんだけどね」
「本当に忙しいもんね」
1年で1番忙しくて、1番楽しい。
「それでほっとしたらもうテストかー」
演技とかじゃなくて本当に嫌そう。
藍姫もあんまり勉強とか得意じゃないのかもしれない。
「藍姫は成績どんな感じなの?」
藍姫と仲良くなったのは夏休みから。
だからテストの見せ合いとかしたことない。
「私は……普通かな。国語とか社会が苦手」
「そうなの?」
なんだか意外な感じがした。
見た目的にはそういうのが得意そうだから。
「本は読むけど何だか苦手なんだよね」
って複雑そうな表情。
「どっちかというと理数系の方が得意かな」
「私は数学苦手だから羨ましいかも」
「あー。なんかそれっぽいかも」
今度はちょっと意地悪そうな表情。
藍姫はクールそうに見えてころころと表情が変わる。
「得意って言ってもアイコほどじゃないけどね」
「アイコ……」
意外にもって言ったら失礼だけど……。
アイコが頭がいいっていうのは私も知ってる。
カナでも勝てないぐらいにいいって。
でも私が今考えてることのメインは違うことだった。
「アイコは理数系が一番苦手って言ってあれだからね」
「そうなんだ」
「そういうのがむかつくし、いいところかなって思う」
藍姫は嬉しそうに言った。
きっと藍姫はアイコのことがまだ好きなんだろうって思う。
振られたからってじゃそれまで。
ってほど恋愛は割り切れるものじゃないはず。
私は経験がないから希望だけど。
「あ……」
噂をすれば影がさす。
って言葉がある。
今がちょうどそのような状況だった。
廊下の反対側からアイコが歩いてきてる。
アイコは基本的に1人でいることが多い。
教室では誰とも話さないみたいだし。
今も1人でつまらなさそうな表情で歩いていた。
前なら見つけた方から声をかけてたんだけど……
「あっ! アイコっ!」
藍姫がアイコに呼びかける。
下の方を見ていたアイコの視線がこちらの方へ。
するとアイコは複雑そうな表情。
そして回れ右をして早足で離れていく。
「どうしたのかな?」
藍姫が不思議そうに言った。
アイコは廊下を曲がってあっという間に見えなくなった。
「忘れ物でもしたのかな?」
「……どうだろうね」
私は何だか複雑な気持ちになった。
文化祭が終わって変わったこと。
アイコが部室に来なくなった。
前はなんの用事もないのに遊びに来てたのに。
そして……アイコが私を避けるようになった。
私が話しかけると逃げる。
私を見つけても無言でどこかに行く。
だから私はなんだか長いことアイコと話をしてないような気がした。
藍姫はまだそのことに気がついてない。
でも時間の問題だろうって思う。
でも……どうしてそんなことになったんだろう。
私の頭の中にはそんな疑問がくるくると回ってる。
例えば文化祭の時。
私はカナと喧嘩みたいなことをした。
すぐに仲直りしたけど、でもああいうことがあって気まずくなって……。
そういう流れがあるなら分かる。
でもアイコがそうするようになったのは本当に突然。
原因も何も分かってない。
もしかしたら私のことが嫌いになったのかもしれない。
でもなんで嫌いになったのかも分からない。
「どうかしたの?」
無言になった私に藍姫は言う。
ちょっと心配そうな表情。
「もしかしてアイコと何かあったの?」
「ううんっ! 何でもないよっ!」
本当はあるんだけど、言わなかった。
何って言えばいいのか分からなかった。
でも、1度はアイコと話をしなくちゃって思う。
その時には藍姫に会わせて欲しいってお願いしなくちゃいけない。
本当にどうしちゃたんだろう。
またアイコと話をしたいな。
またアイコの意地悪そうな声を聞きたいな。
そう思いながら私は廊下を歩いた。




