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食べ物を買って予定通り私達は体育館に移動した。

スケジュール通りだと今は休憩と準備の時間。

もうすぐ軽音部のライブがある。

亜里沙を見るのはとても楽しみ。

でも亜里沙には悪いけど、やっぱりもも先輩を見たいっていうのも大きかった。

もも先輩は3年生。

文化祭で見れるのは最後だし。

去年のこと文化祭を思い出す。

本当に凄かったなって。

もも先輩はもう普通のライブとかには出てないみたい。

それで見に来る人がとても減ったって亜里沙が言ってたのを思い出す。

でも今日は自分からやりたいってもも先輩が言ったそうだ。

やっぱり最後の文化祭だから出たいって思うのかも。

移動した体育館の中はやっぱり人がたくさんいた。

料理部と同じぐらい……ううん、それ以上の密集率。

広さは全然違うから、とてもたくさんの人が来てるんだなって分かる。

きっともも先輩目当ての人が多いんだって思う。

あちらこちらからそんな話が聞こえてくる。


「やっぱり人が多いね」


どこか座れるところはないかな。

私はそんなことを考えながら言った。

後ろの方でいいからちょっとスペースがあるところがよかった。

軽音部の後にある演劇部は前の方で見たいけど……。

きっと休憩中の間とかに前の方に行けるかもしんれない。


「いっちゃん、大丈夫?」


周りを見ていた私にカナは言う。

とても心配そうな声で。


「人がたくさんいるから……心配だなって思ったんだ」


カナは駅で具合が悪くなった私を知ってる。

だからそういう心配をしてくれるのは分かる。

それにやっぱりとっても嬉しい。


「大丈夫だよ」


私とカナは手をつないだまま。

カナの手はとっても柔らかくて暖かい。

カナと手を握ってるならどこへでも行けそうだなって思えるぐらいに。


「無理しないでね。駄目そうなら……」


「あ、あそこがよさそうだよ」


ちょうどいいスペースがあったから思わず言った。

ステージからはだいぶ離れてる。

でもちゃんと音は聞こえるから大丈夫だろうって思った。


「私は平気……だと思うから」


私はカナを見ながら言う。

カナに心配してもらえるのは嬉しい。

でも今は……


「だからカナにもたくさん楽しんで欲しいな」


「・・・…そうだねっ!」


カナの表情が明るくなる。

私はなんだかほっとした気分になった。

私とカナは人と人の間を通って目的の場所へ向かう。

横目で見えるステージではマイクとかの準備がすすめられていた。

私とカナは座ってステージを見る。


「あーあーあー。マイクテスト。マイクテスト」


何人かの人が出てきてマイクとか楽器から音がするか確認していく。

声とか、ギターとか、ベースとか、ドラムとか。

色々な音が体育館に響く。

普段あんまりそういう音を聞きなれていない。

だからそれだけで何だか圧倒されるような気分。


「凄い音だねっ!」


思わず出す声も大きくなる。

何だかテンションが上がっていく感じがした。


「そうだねっ!」


カナの声も大きくなっている。

楽しそうかな? 

楽しいといいなって思った。

……しばらくして体育館のライトが消えた。

ステージ上だけ薄く照らされている。

前の方の人達から拍手と歓声が聞こえた。

……始まるんだ。

何だか緊張ではないどきどきが大きくなっていく。

そして前の方が盛り上がって気が付いた。

誰か出てきたんだって。

少し遠めだけどすぐに分かった。

金髪で凄く目立ってたから。

あの子だって。

春に少しだけ話したあの子だって。

軽音部は辞めたって聞いた。

でも演奏はするみたい。

なんだか嬉しいサプライズのような気がする。

もっともあっちは私のことなんて忘れてるって思うけど。

金髪の子の後ろに2人が続いて……


「着ぐるみだね……」


「そうだね……」


なぜか犬と猫の着ぐるみを着た2人も出てきた。

なんで着ぐるみ?

って私は思う。

みんな不思議だと思ったみたい。

周りではぼそぼそっとした声が聞こえる。

盛り上げるためかな?

実際、前の方にいる人達は着ぐるみの登場に盛り上がってるし……

そう思っていた。

でも犬の着ぐるみはギターを持って、猫の着ぐるみはドラムの椅子に座る。

どうやらちゃんと演奏もするみたい。


「あっちがベースだよね?」


私は金髪の子を指して言った。


「うん。多分だけど……」


どうやら金髪の子がベースみたい。

何だか派手な感じがするからギター!っていうイメージだった。

でもそういうわけじゃないみたい。

そして後ろの……金髪のこと前にも一緒にいた人は真ん中。

マイクスタンドの前。

何も持ってないから歌う人みたい。

確かボーカル。

思い出してみても、地味な印象しかなかった。

ちっちゃくって可愛かったけど……。

だからそっちの方もなんだか意外。

そして最後の1人はトランペットだと思う楽器を持ってる。

あの人が吹奏楽部から誘われた人なんだなって分かった。

ステージ上のみんな。

緊張してる雰囲気がなんだか伝わってくる。

……いや、ボーカルの子だけなんだかふわふわってしてるようにも見えた。

それぞれがそんなに大きくない音を出した後に……

かっ、かっ、かっ、かっ!

っていうステックの音。

それからばって広がるトランペットの音。

それに合わせてばばばって他の楽器の音も鳴り響く。

びりびりっていう振動を感じた。

とてつもない音だった。

音というより衝撃のように感じられるぐらいに。

私はびっくりした。

大きな音が苦手だったから。

でも嫌な感じはしなかった。

圧倒的な音で、そう感じる余裕もなかったのかもしれない。

音が体育館を支配しているような気がした。

そして歌が加わる。


「!!」


他の楽器にも負けない大きな声。

私はびっくりして思わずステージの真ん中を見た。

さっきまでなんだかぼけっとした雰囲気だった女の子。

でも今はとても大きな声を出して、楽しそうに歌ってる。

もも先輩の柔らかな歌とはまた違う魅力。

私はすぐにこの演奏のファンになっていた。

5つの音が混ざって1つになってるような感覚があった。

音が凄くて他の音は全然聞こえなかった。


「どうもです」


そしていつのまにか1曲目の演奏が終わっていた。

ふうっという感じで汗をぬぐっている。

その姿はやっぱりのんびりとした雰囲気。

とてもあんなに凄い声で歌っていたとは思えなかった。

周りは拍手と歓声をステージの人達に送っていた。

私も思わず大きな拍手をしていた。


「あと1曲ですけどよろしくお願いいたします」


とっても丁寧に頭を下げる。

そしてすぐに音が聞こえた。

今度は低いぼんぼんっていう感じの音。

みんなが金髪の子を見ている。

あの子が1人で演奏してるみたい。

同じフレーズが繰り返し、繰り返し聞こえる。

でもそれが何だか心地よくてずっと聞いていられるような気がした。

そしてその音に声が乗る。

今度は静かで綺麗な感じ。

さっきよりは小さい声かもしれない。

でもはっきりと私のところまで届いている。

そのまましばらく静かな声が聞こえて……

ダダダン!っていう音から一気に音が広がって早くなる。

さっきまでのゆったりとした雰囲気を吹き飛ばす勢い。

また音に夢中になる時間だった。

まるで星空を見ているように、時間を忘れてしまいそうな錯覚。

ステージにいるみんながキラキラ輝いて見えた。

まるで1人1人が空に浮かぶ星みたいに。

そしてみんなが大きな星座を作っているように思えた。

とても大きくて、綺麗で、素敵な星座。

思わず見たい人が物語を話したくなるような、そんな感じ。


「ありがとうございましたっ!」


そしてまたいつの間にか演奏が終わっていた。

みんながこちらに向かってお礼を言ってる。

それをたくさんの拍手と歓声が包み込んでいた。


「凄かったねっ!」


私は思わずカナに言った。

思ったことを誰かに言いたくてたまらなかった。


「そうだね」


カナは言う。

でもあんまり楽しくなさそうに見えた。


「凄かったって思う」


カナは嘘を言ってるようには見えなかった。

でも同時に楽しそうな雰囲気にも見えなかった。

どうしてだろう?

何か駄目だったのかな?

そんなことを考えている間に次の人達がステージに立った。


「どーもー。こーんにちはーっ!」


元気がいい声が聞こえる。

亜里沙だってすぐに分かった。

背の高い亜里沙がギターを持ってステージに立っている。

その姿はなんだか様になってて格好いいって思う。

私はやっぱりステージの方に夢中になる。

そんな感じでいくつかのバンド演奏があって……


「こんにちは~。凄く盛り上がってるね~」


ふわふわとした声。

そして一番の盛り上がり。

もも先輩がステージに立っている。


「もも先輩! 可愛いっ!」


「卒業しないでっ!」


そんな声があちらこちらから聞こえる。

もも先輩はとても嬉しそうな表情。


「卒業しないでって……。さすがに留年したら怒られるからやだな」


もも先輩の声に暖かな笑い声。


「でも最後の文化祭だからなんだか感傷的な気分になってるのは確かだね」


もも先輩はギターを演奏するように持つ。

1人だけでステージ立ってる。

でもそれだけでなんだかすっと見ていた言って思えるから不思議。

やっぱり特別な人なんだなって思う。

1人だけでみんなを照らせるような、太陽みたいな存在だなって。


「そんな気持ちを歌うってわけじゃないけど……とりあえず1曲目だね」


そしてもも先輩は歌う。

さっきまでのバンド演奏とは全然違う雰囲気。

1人で会場中の空気を変えた。

心地いい歌声とギターの音。

静かなのに、そんなに大きな声じゃないのに、心に突き刺さっていくような感じ。


「どうも~」


そしてもも先輩の歌が続く。

曲が終わるたびに会場中から拍手の音が聞こえる。


「本当にこんなにたくさんの人に聞いてもらえるのは嬉しいな」


何かを飲んでもも先輩は言う。

とても素敵な笑顔。

本当に嬉しそうな感じ。


「もう3年もたつのかーって思う。入学してからね。本当に色々なことがあったなって」


もしかしたら高校生活を思い出してるのかもしれない。

しみじみっていう感じでもも先輩は話をする。


「この学校……ねこじょはいいところだって思う。みんなもそう思うよね?」


もも先輩の言葉にみんなが拍手とか歓声で答える。

私も拍手をした。

本当に、そう思ったから。

色々な部活がある、色々な人がいる、色々なことがある、色々な……

そして隣にはカナがいる。

私は握り続けている手をぎゅって強く握った。

ここじゃない高校生活。

もうそれは絶対に考えられないって思ってる。


「卒業まであと半年もあるし……受験とか面倒だなー。誰か変わってくれないかな?」


「変わりますっ!」


「勉強もがんばれっ!」


あちらこちらから声が聞こえる。

本当にもも先輩はみんなから好かれてるんだって分かる。


「ありがとうね。……でも半年って言ってももうすぐなんだよね……」


もも先輩が目元をぬぐった。

もしかしたら泣いているのかもしれない……。


「卒業したら会えなくなる、会わなくなる人もたくさんいます」


私は2年生。

だからあんまり卒業とか意識してない。

でもなんだか3年生がいなくなるのは寂しい気がした。


「卒業しなくてもそれっきりの人もいます。でも……だから私はこの曲を作りました」


こほん。という可愛くて小さな音。

もも先輩は小さく腕を上げる。


「またねっていう曲です。最後の曲です。聞いてください」


お別れをつげる 音が聞こえて

ぼくたちはもう お別れの時間

ぼくは北へ きみは南へ

遠く離れる 悲しいけれど


また会えるなんて 保障はないよね

永遠の誓い あるわけもない

小さな小さな 細い糸が

切れないように 祈るだけ


でもぼくはいうよ 

心から

またきみと

会えることを信じて

あふれる涙は

また会えた時に

流せばいい

喜びと一緒に

だから笑顔で

手を振って


またねってきみにいうよ

大きく手を振りながら

ちっぽけなさんもじも

大事な大事な宝物


どんな未来が 待ってるか

ぼくらは誰も 知らないけれど

でもきっと また会える

不思議な気持ち 広がってる


だからぼくはいうよ 

心から

またきみと

会えるって信じてるから

いつの日か

また会えた時は

抱き合って

喜び会おうね

だから笑顔で

手を振って


またねってきみにいうよ

大きく手を振りながら

ちっぽけなさんもじも

大事な大事な宝物

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