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文化祭2日目。

天文部の方もないので自由な1日。

私とカナは料理部に来ていた。

私が見たいってお願いしたから。

でもカナも何だか興味があったみたい。

思ったよりも積極的に付き合ってくれた。


「人多いね」


驚き気味でカナは言う。

私も同じことを思っていた。

そんなに広くない部屋にたくさんの人が集まってる。

だから私とカナは入り口の方までしか入れなかった。

調理場……みたいなところはけっこう遠め。

ぎりぎりたまこが見えるぐらい。

もうちょっと早く来れば良かったかなって思った。

後ろの方だからあんまりよく見えないし、しっかり応援もできなさそう。

張り切って声を出す勇気もないし……。

だから後ろの方でまったり見ていようって思った。

たまこには後から見てたよって言えばいいしね。

たまこもこんなに人が集まるなんて思ってなかったみたい。

ちょっと驚いたような感じ。

こんなに人がいて緊張しないといいんだけど……。

私なら緊張で変なことになりそうだなって心配になる。

周りにはたくさんの人がいる。

しかもそれだけじゃないから。


「たまこちゃん先輩っ! 頑張ってくださいっ!」


「よっしー! 負けないでねっ!」


「上沢っ! 後輩に遅れを取るなよっ!」


すでに準備をしている料理部の3人。

周りからたくさんの応援の声が聞こえる。

多分、応援の人達のほとんどが運動部。

夏休みに料理部のお世話になった人たちなんだろうって思う。

最初にたまこから料理部の出し物について聞いた時。

のんびりとした感じになるだろうって思ってた。

選ばれた人と料理部の人。

2人で協力して美味しい物を作る。

そして勝負だけど、まったりとした、そんなイメージ。

でも今いる場所はそんな感じじゃない。

なんだか体育祭を密集したような暑さを感じる。

教室の温度が3度ぐらい上がってそう。

でもそんな雰囲気も祭りっぽくていいなって思った。

もちろん、自分が見てる側だから言えるかもしれないけど。

たまこなんてやっぱり空気に圧倒されてる感じ。

料理をするのはたまこじゃないとはいえ本当に心配になってくる。

きちんと声が出せるかな。

とかそういうの。

私はホームセンターで店員の人に声をかけられなかったたまこを知ってるし……。


「それではこの3人と一緒に料理をしてくれる人を紹介します」


司会っぽい人が言う。

どうやら事前に出たい人を募集してたみたい。

1人ずつ名前を呼ばれて集団から料理部のところに移動する。

その人達も運動部ばかりみたい。


「ちゃんとしないと承知しないぞっ!」


「先輩が料理なんてできるんですかっ!」


「ソフトボール部の意地を見せろっ!」


色々な声が飛び交う。

本当に熱気がある。

というか盛り上がりすぎな気もする。

でもちゃんと司会が話す時とかは静かになる。

盛り上がっててもちゃんとしてるんだなって感心してしまう。

見てると上下関係とかもきっちりしてるっていうか。

なんか本当に体育会系っぽい感じ。

凄いし、格好いいと思う。

でも自分にはなじまないと思うな。

っていうのが本音。


「料理部の人に指示で調理してください」


「怪我をしないよう包丁を使うところだけ料理部が行います」


司会の人がルール説明をする。

料理部の人が指示する。

そして包丁を使う。

それ以外は普通の料理勝負と同じみたい。


「指示は言葉でお願いします」


「食材などを指さしてあれを持ってきて。は禁止です」


「また持ってきた食材は必ず使わなければいけません」


どうやら料理部の方はきちんと必要な食材を説明するのが大事みたい。

部屋の端の机には料理に使う食材がたくさん。

きっと本当は必要じゃない、入れたらあんまり良くないものもあるんだろうって思う。

私なら焦って全然違うのとか持っていきそう……。


「カナなら指示とかなしでできそうだね」


私はカナに話しかける。

退屈じゃないかな?

そんな風に思ってた。

でもカナも興味深げに見ててくれて嬉しかっうた。


「どうかな。最近はお菓子ばっかり作ってるし」


「でも私よりは全然できるでしょ」


「まぁいっちゃんよりはねっ!」


カナはこの中でもきっと料理が上手な方。

そして私は絶対にこの中で料理が下手な方。

そう言われると何も言えない自分がいる……。


「もうすぐ始まりそうだね」


どうやら全部のルール説明が終わったみたい。

参加者と料理部の人が挨拶とかしてる。

たまこは本当に緊張してそうな表情。

挨拶もなんだかぎこちない感じ。


「やっぱり指示する方が難しいって思うな」


料理部の人達をみながらカナは言った。


「そうなの?」


「うん。火の強さとか塩加減とか感覚でやってる人もいると思うんだよね」


カナがきっとそういう感じなんだろうって思う。

なんだか何でも感覚でできそうな感じがする。

私はきっちりじゃないとできない感じ。


「そういうのを言葉にして説明するって難しそう」


「それは……そうだね」


よく分からなかった。

けどカナが言うならそうなんだろうって思った。


「それでは……はじめっ!」


司会の人が言った。

制限時間は1時間。

料理部の人が机に置いてあった紙を開く。

そういえばどんなお題がでるのか直前まで分からないって言ってた。

多分、今が一番緊張するところだろう。

得意料理が出たらいいし、苦手な料理だととっても不利になるし……。


「じゃがいもと……塩を持ってきてくださいっ!」


「えっと……てきとうな野菜と……油……サラダ油をお願い」


紙を見た料理部の人は2人はすぐに指示を出す。

それに合わせて参加者も動く。

しかし……


「えっと……その……どっ……どうしよう……」


たまこがなんだか悩んでるみたいだった。

紙に何が書かれてるかは分からない。

でも緊張とかそういうので頭が回らないっぽい。


「たまちゃんっ! どうしたのっ!」


参加者の人が焦ったように言う。

何だか見たことあるなって思った。

多分、バスケット部の人。

もしかしたらナツミもこの中にいるかもしれない。


「えっと……えっと……」


「じゃがいもの皮をピーラーで剥いてくださいっ! ざっくりで大丈夫ですっ!」


「弱火でフライパンを温めてサラダ油を……」


他の2つは料理を始めてる。

でもたまこのところは止まったまま。

わたわたと落ち着きがない感じ。

私はホームセンターの時のことを思い出す。

でも今は手助けはできない……。


「がんばれっ!」


「落ち着いてっ!」


周りもそんなたまこを応援する。

でもそれは逆効果じゃないかな……。

私なら応援されたらもっと緊張しそうだって思った。

だから私はじっとたまこを見た。

そして心の中で応援する。

頑張れって。

そうしても意味ないことは分かってる。

そもそもたまこはまだ私のことを気が付いて……。


「あっ……」


思わず言葉が漏れた。

たまこと目があったから。

私の周りにはたくさんの人がいる。

それにちょっと離れてる。

きっと私を見つけるのは難しそうだって思ってた。

でも目が合って……たまこはにっこりと微笑んだ。

私を見て安心してくれた。

……それは私の勘違いかもしれない。

私の自惚れかもしれない。

でも私はそう思うことにした。


「えっと! たまごとごはんとケチャップと鶏肉を持ってきてくださいっ!」


さっきまであったおどおどした感じがなくなった。

たまこの指示に……


「らじゃっ!」


元気よく参加者は返事をする。

そして他の参加者から少し遅れてたまこ達の料理が始まった。


……

…………

………………


「ありがとうございますっ!」


感激して泣きそうになってるたまこが見えた。

調理開始から1時間。

ぎりぎりで完成させたたまこ達。

できあがったのはオムライス。

ソースもたまこの指示で作ったみたい。

とっても美味しそうに見えた。

3つの料理の中で1番。

作った本人が


「私もこんな料理ができるんですねっ!」


って本当に感激してたぐらい。

でも私もああいうのが作れたらとっても嬉しいって思う。

料理って思ったよりもずっと楽しそうだな。

そう思えた。

そして審査委員の試食でも絶賛されて1番になった。

参加者とたまこ。

嬉しそうに握手とかしてる。

それを周りのみんなが拍手している。


「みんな頑張ったねっ!」


「来年も合宿楽しみにしてるっ!」


「料理部最高っ!」


最後に料理部の人と参加者。

みんなで記念撮影をしている。

周りの人達もみんなスマートフォンとかで。

たまこはとても恥ずかしそうに映っていた。

でもとっても嬉しそうに見える。


「あっ……」


集団の中にナツミを見つけた。

嬉しそうに記念写真を撮ってる。

それもかなりいい位置で。

……あんなところにいたんだ。

かなり早くからいたのかもしれない。

運動部なら混雑するって事前に分かってただろうし……。

とても楽しそうな表情。

文化祭を満喫してるんだなって思った。

……後で写真を送ってもらおうかな。

私は思った。

私の位置から撮影してもあんまりいいのは撮れなさそうだし……。

でもナツミは本当にたまこのファンなんだなって思う。

すごい勢いで写真撮ってるし……。

何だか怪しいものを感じてしまうぐらいに……。



「移動しようか」


そんな私にカナは言った。

後ろの方の人達は教室を出てるみたい。

だんだんと混雑がなくなっていっている。


「そうだね」


たまこと直接話をしたい気もした。

でも今は人が多くて大変そう。

だから後ででいいかなって思った。


……

…………

………………


「面白かった?」


廊下に出て私は聞いた。

カナは真剣に料理をしてるところを見ていた。

だから答えはもう分かってたけど。


「そうだね」


そしてカナは私が期待する言葉を言ってくれた。

それで私もすごく嬉しい気分になる。


「こうやって人が料理するところを見るのは初めてだったしね」


「美味しそうだったよね」


「うん。オムライスがやっぱりよくできてたって思う」


「カナもやっぱりそう思うんだ」


「指示もちゃんとしてたしね。凄いって思ったな」


「ああいうの見てたらお腹すいちゃったね」


お昼ごはんには少し早い時間。

でもお腹がすいたから何か食べたい気分になってた。

できたらあのオムライスが食べたいけど……。

でもそれは無理だなって思う。

だから機会があったらお願いしてみようかな。

たまこの手作りオムライス。

きっと美味しいんだろうなって思った。


「そうだね。わたしもちょっとお腹すいてる」


「何か買って体育館に行かない?」


「体育館?」


「うん。軽音部のライブとかあるし……」


その後に演劇部の出番があった。

美香の晴れ舞台。

これは絶対に見なくちゃなって思ってる。

たまこも急いで駆けつけるはず。

もちろん軽音部のライブも見なくちゃいけないとは思ってるけど……。

でも思い入れっていうか、感じ方が違う気がした。


「……そうだね」


でもカナはあんまり乗り気じゃなさそう。

そうえいば軽音部とか何だか好きそうじゃなかったな……。


「いっちゃんが行きたいなら。休憩にもなるしね」


「ありがと。でも他に行きたいところがあるなら……」


「ない……と思う。行きたいところは」


「そうなんだ。じゃ、じゃあ何か買っていこうかっ!」


「うん。できたら昨日食べなかったのがいいな」


「それなら……」


っていう感じで私とカナは並んで歩いた。


「手作りハンバーガーだって」


「なんだか本格的だね」


「うん。美味しそう。買ってみようかな」


「それじゃわたしは……」


賑わってる廊下を歩くのは楽しかった。

もうたくさんの人がいるのが苦手とかはあんまりない。

……やっぱり私は成長してるよね。

そう思えた。

入学したての頃は人を信用することができなかった。

しばらくしてカナを信用できるようになった。

そして今は他の人も……。

それらは普通の人、普通の地球人なら当たり前にできてたこと。

でも私は地球人じゃないから無理だって思ってた。

でも今はそうじゃない。

私は宇宙人。

でも特別な存在ではない。

この世界を構成する、1つの要素。

人との結びつきが分かった私は自然とそう思うようになった。

カナがいてくれたかこそ私は成長できた。

カナのおかげで人を信用していいんだって分かった。

カナのおかげで……。


「いっちゃん、どうかしたの?」


不思議そうに私の顔を覗き込む。


「カナがいてくれて良かったなって思ったんだ」


私は素直な気持ちを言った。

言葉にするにはちょっと恥ずかしいけど。

でも文化祭の雰囲気にはちょうどいいって思った。


「これからもずっとずっと一緒にいてね」


言いながら私はカナの手を握った。

食べ物を持ってるからちょっとバランスが悪い。

でもそのバランスの悪さもちょうどいいって思った。


「うん。約束したからね」


カナもすごく嬉しそうな表情。


「約束?」


「ずっとずっとわたしがいっちゃんを守るって」


「そうだね」


その言葉を聞いて私もとっても嬉しい気分になった。

カナが私を守ってくれる。

そう言ってくれる。

そんな必要はあんまりないって分かってる。

ずっと前から。

でもそう言ってもらえるのはやっぱり嬉しかった。

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