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35

アイコの姿はもう見えなくなってた。

階段を使ったならどこに行ったのかも分からない。


「私は上の階を探すねっ!」


大きな声でカナが言った。

とっても真剣な雰囲気。

こんなカナを見るのは初めてだった。


「藍姫さんはこの階。いっちゃんは下を探してっ!」


カナは言った。

時間的にはアイコの方が有利。

だからこっちは人数を使わないと捕まえることは無理そうだった。


「捕まえれたら連絡してねっ!」


言いながらカナは走り出す。

私と藍姫さんもそれに続いた。

カナの言葉で私も藍姫さんも動くことができた。

私は廊下を走って階段へ向かう。

もし学校を出ようとしてるなら私が見つけれる可能性が高かった。

でものんびりしてたらすぐにアイコは学校を出て行ってしまいそう。

そうなったらそのまま夏休みはずっと学校に来ないって思った。

だから私は出来る限り全力で走った。

体育の授業でだって滅多に全力で走ることはないのに。

夏休みの廊下はあんまり人がいない。

でも全くいないってわけじゃない。

時間的に部活の休憩時間って人が多かった。

廊下を走る私を何事かと見てる人が多い。

恥ずかしいって思った。

目立ちたくないって思った。

今まで目立たないように生きてきたから。

でもそんなこと言ってる場合じゃなかった。

そのまま階段を降りる。

1段飛ばしでたん、たん、たんっ! って感じで。

転ばないかちょっと怖かったけど大丈夫だった。

自分もやればできるんだなって思った。



「いっくんっ!」


声がした。

階段を降りてすぐ。


「どうかしたんですか?」


そこにはアイコと美香がいた。

2人で談笑をしてたみたい。


「えっと……アイコって分かるかな? ツインテールの……」


「それなら知ってる」


って言ったのは美香。

手にはスポーツドリンクを持ってる。

ジャージの服装でさっきまで運動してたのか汗をかいてる。

数ヶ月前じゃイメージすらできない姿。

でもなんだか似合ってるなって場違いなことを考えてしまった。


「玄関の方に行ってた。少し小走りだった」


「ありがとうっ!」


私はお礼を言ってまた走り出した。

どこをに向かえばいいのかはっきりした。

それにアイコは全力で逃げてるわけじゃない。

全力で追いかければいけるかもしれないって思った。

上の階でアイコを探してるカナと藍姫さん。

その2人に連絡をしたかった。

でもそんな余裕はなかった。


「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」


きつい……。

もうバテた……。

玄関についた私はなんだかふらふらって感じになってる。

まだ走り始めてそんなに時間は経過してない。

でも体力をほとんど使い切った気がした。


「アイコっ!」


でも思わず叫んだ。

靴を履いて玄関から外に出ようとしてるアイコを見つけたから。

アイコは私を見ると全力で逃げ始める。


「待ってっ!」


私は大きな声を出した。

待ってって言ったからってアイコが待ってくれるはずがない。

でも思わず言ってしまった。

玄関にはやっぱり部活休憩の人が多い。

みんなが一斉に私を見る。

でももう恥ずかしいとか思ってる場合じゃなかった。

どんなに目立ってもいい。

明日から変な意味で目立ってもいい。

……最悪、みんなに正体がバレたっていい。

アイコを捕まえることができるなら。

私は下駄箱から靴を取り出す。

そして急いで履いた。

その間にもどんどんアイコは遠くに行く。

このままじゃ校門から出ていってしまう。


「いつきっ!」


声が聞こえた。

はっきりした、明るい声。

声の方見るとナツミがいた。

どうやらバスケット部の人達もいたみたい。


「アイコさんを捕まえればいいんだよねっ!」


ナツミは言う。

なんだかもうやる気満々って感じだった。


「……うんっ!」


「任せてっ!」


その言葉を合図にナツミは走り出す。

飛ぶように。踊りだすように。


「早いっ……」


思わず見とれそうになる。

でも私も行かなくちゃいけない。

焦って靴がうまくはけない。

でも行かなくちゃっ!


「頑張ってっ!」


バスケット部の人達が玄関を出る私に言った。


「なんだかよく分からないけど頑張ってっ!」


「うんっ! ありがとうっ!」


私は言った。

そして走り出した。


「あの人がナツミの……」


って声がした。

なんだかそっちの会話も気になる。

でもアイコを追いかけなくちゃっ!

アイコはグラウンドを走って校門の方へ向かっている。

その後ろをナツミが追いかけてる。

さらに後ろを私。


「いっちゃんっ!」


上の方から声がした。

カナの声。


「頑張ってっ!」


カナが言ってくれた。

頑張らなきゃって気持ちになった!

でも……


「き、きつい……」


すっかり息が上がってる。

こんなに走ったのは高校生になって初めてのことだった。

ナツミとアイコの距離は縮まってるみたい。

でもアイコが校門を出てしまったら捕まえるのも難しいって思う。

いくらでも逃げる場所があるから。

だからその前に……


「あっ……」


焦ってると変な感じで足をくじいた。

ぐきって音がした。


「いたっっっっっっっ!」


そういう経験をしたことがない私は思わず転んでしまった。

思いっきりばたりって感じで。


「いっちゃんっ!」


カナが大きな声を出した。

その声に走っていたナツミとアイコも立ち止まる。


「いつきっ!」


そしてナツミが戻ってきた。

私のことが心配だったんだろうって思う。

でもアイコが……。

アイコを見ると立ち止まってこちらを見ている。

不安そうな表情をしてるって分かった。

でもアイコが逃げたらもう……。

そう思ってると……。


「いっきっ!」


アイコも走ってこっちに駆け寄ってきた。


「大丈夫っ!」


ナツミが言う。

そしてすぐその後にアイコも到着した。


「何やってるのよっ! 馬鹿じゃないのっ!」


「大丈夫だから……」


私は立ち上がった。

けど……


「痛っ……」


足首が痛かった。

ぐきってなった影響みたい。


「捻挫してるっぽいね」


私を足首を見ながらナツミは言った。


「無理に動かさないほうがいいよ」


その声はとっても真剣だった。

あまり聞くことがない声だった。

私はナツミが怪我した時のことを思い出した。


「だ……大丈夫……なの?」


さっきは大きな声を出したアイコ。

でも今はとっても心配そうな声を出してる。


「うん。大丈夫。靴のかかとを踏んじゃってたせいかな」


「無茶しすぎよっ!」


「無茶させたのはアイコなんだけどね」


私が言うとアイコは申し訳無さそうな表情になってた。

ちょっと泣きそうな雰囲気すらある。


「ごっ……ごめんなさい」


「そんなつもりじゃなかったんだけど……」


「そんなにひどくはなさそう。保健室で治療しようっ!」


ナツミの明るい声が聞こえる。

どうやら重症じゃなくて安心したみたい。


「でも転けたおかげでアイコを捕まえれてよかった」


私はアイコの手を握った。

私の想像以上にアイコの手は小さかった。


「なっ、何するのよっ!」


アイコは恥ずかしそうに手を振る。

でも当たり前だけどそんなことじゃ私は手を離さない。


「こうしないとまた逃げそうだなって思って」


「逃げないわよっ!」


「ちゃんと藍姫さんに会ってくれる?」


「それは……」


「会うって言ってくれるまで離さないから」


「分かったわよっ! 会うわよっ! 会えばいいんでしょっ!」


顔が真っ赤なアイコ。

本当に恥ずかしそう。

その反応が面白くて、それに可愛かった。

でもこれ以上からかうと本当にまた逃げてしまいそうだった。

だから手を離すと……


「…………」


なぜだかちょっと残念そうな表情を見せる。

こういうところは素直じゃないなって思った。


「とりあえずカナに電話しないと……」


私が電話をかけるとカナはすぐに出てくれた。

簡単に今の状況を説明。

こっちに来るって言ってたけど藍姫さんの方をお願いした。

治療してもらったらすぐ行くからって。

それで納得してくれたのかカナは窓の方から姿を消した。

藍姫さんと合流しに行ったのかもしれない。

心配かけちゃったなって思う。

後で謝らなくちゃ……。


「肩貸すよ」


ナツミが言う。


「痛いでしょ?」


「……そうだね」


私は肩を借りて体を預ける。

痛い方の足に体重をかけなくてすむから痛くなくてよかった。

なんだかナツミが凄く頼もしく見えた。


「おめでとうっ!」


玄関に入ると主にバスケット部の人達が出迎えてくれた。


「捕まえれてよかったねっ!」


「うん。怪我しちゃったけど……」


「捻挫は癖になるからナツミにちゃんと治療してもらってね」


「うん。そうする」


初めて見る人が多かった。

同じクラスの人もいるけど、あんまり話したことがない人。


「ナツミはそういうの上手だからっ!」


言いながらナツミの方を見る。

いたずらっぽい笑みを浮かべて。


「ナツミも良かったねっ!」


「何のこといってるか分かんないんだけどっ!」


すぐにナツミは言い返す。

私も何が良かったのか分からなかった。

でもなぜかナツミは恥かしそうな表情をしてる。

だからナツミはもしかして分かってるのかもしれない。


「アイコちゃんだっけ! 捕まっちゃったねっ!」


「もう少しだったのにねっ!」


バスケット部の人達にはアイコにも声をかける。

それは当たり前だろうって思う。

でもアイコは……

とても不機嫌そうだった。

黙ったまま私とナツミの横を歩いて行く。

そんな雰囲気が分かったのかからかう声もすぐになくなった。

教室ではずっとこんな感じなんだなって思った。


「それじゃあたしはいつきを治療したら戻るからそれまで練習してて」


「分かったー」


どうやら休憩時間は終わりみたい。

みんな立ち上がって体育館の方へ移動してた。

私達は並んだまま保健室へ向かった。


……

…………

………………


保健室には先生はいなかった。

でもナツミがてきぱきって感じで治療してくれた。

なんだかよく分からない冷たいものを足首において、ぐるぐるって包帯で固定していく。

無駄がない動きって感じで凄いって思った。


「これでいいかな」


言いながらにこっと微笑む。


「どこか痛いところはないかな?」


「大丈夫。かなり楽になったって思う」


「2週間ぐらいは激しい運動とかしないようにね」


「そんな予定はないと思うな」


「それもそうだねっ!」


ナツミは使った道具をきちんともとの場所に戻していく。

それも何だか手際がよかった。


「じゃあたしは部活に行くからっ!」


「うん。ありがとう」


「大丈夫っ! いつきがずっと痛そうな思いしてる方が嫌だもんねっ!」


「うん。またね。電話する」


「うんっ! よろしくねっ! あっ! アイコさんも! またねっ!」


言いながら手を振る。

私もそれに手を振り返した。

でも相変わらずアイコは無視してる。

なんだかアイコとカナの逆みたいな感じ。


「いっきってあの人と仲いいんだ」


ちょっと不機嫌そうに言った。


「うん。1年生時は同じクラスだったしね」


それにこの学校で初めて仲良くなれたのもナツミだった。


「でも電話のこととかカナには内緒にしといて」


「何それ……」


「何だかナツミが変に拘ってるんだよね」


変だなって思う。

でもまぁそれがいいのかもなっても私は思ってた。


「アイコってナツミみたいな人苦手なの」


「苦手」


きっぱりって感じでアイコは言った。


「ああいうリア充で陽キャは天敵だから」


「リア充? 陽キャ?」


「……つまり苦手ってことっ!」


ナツミとアイコは趣味とか合いそうなのに。

勿体無いなって思う。

でも無理に仲良くしたりさせたりっていうのもおかしいと思う。


「それよりこれからどうするの?」


「会ってくれるんだよね?」


「……そう言ったから。でも早く会わないと決心が鈍るっていうか……」


「連絡するからちょっと待ってて」


電話するとすぐにカナは出てくれた。


「大丈夫だった?」


「うん。治療してもらったから」


「……ナツミさんに」


「得意だって言ってたから。もう部活に行っちゃったけど……」


「そうなんだね」


なんだか言いたいことがありそうな雰囲気があった。

でもなんだかそれを我慢したみたい。


「えっとね。今は藍姫さんと教室にいるんだ」


「分かった。すぐにアイコとそっちに行くね」


私は立ち上がった。

……うん。痛くない。

当たり前だけど走ったりは無理だって思う。

でもナツミのおかげで歩くのは問題ない。


「大丈夫?」


アイコは私を見ながら言う。

やっぱり私の足ことが心配みたい。


「それはこっちのセリフ」


だから私はわざとらしく明るく言った。


「アイコは大丈夫なの?」


「多分だけどね」


はぁって感じでため息をつく。


「アイコは藍姫さんのことが嫌いなの?」


そんなアイコに私は聞いた。

そんなことないって分かってたけど、聞いた。

嫌いならあんなに泣くことはないって思う。

好きだからこそ嫌われてるって思うと悲しくなるんだって思う。


「……嫌いじゃない」


素直じゃないアイコの精一杯の本心だって思った。


「でもやっぱり藍姫はアタシのこと嫌いなんじゃないかって思う」


「……会うのが嫌?」


私の言葉にアイコは首を振った。


「嫌っていうか怖いんだって思う」


「怖い?」


「アタシが藍姫のことをちゃんと信じれるかって……」


「大丈夫だって思う」


「そうかな?」


「そうだよ」


私は藍姫さんの本心を聞いてる。

だからアイコのことを嫌ってないって分かってる。

でもそれを信じきれないアイコの気持ちも分かってた。


「ほら……」


私は手を出した。

カナが私にしてもらったみたいに。

不思議そうにその手をアイコは見つめる。


「不安なら手をつないであげる」


「……本気で言ってるの?」


「嫌ならいいんだけど」


「……嫌じゃない」


言いながらアイコは私の手をとる。

やっぱりアイコの手は凄く小さく感じた。


「もしアイコが藍姫さんを信じれなくても大丈夫だって思う」


「そうかな」


「その時は本当に天文部に入っちゃえばいいわけだしね」


「……その時はカナにはいっきから言ってもらうわよ」


「それは嫌だな」


カナが怒ったりしないのは分かる。

でも嫌な顔をするだろうってことも分かるから。


「まぁとりあえず行くしかないってことね」


「うん。行こっか」


「そうね」


私とアイコは同時に歩き出した。

ちらりとアイコの表情を見る。

やっぱり手をつなぐのは苦手みたい。

なんだか居心地悪そうな、恥ずかしそうな表情をしてた。


……

…………

………………


「そろそろ手を離していいと思うんだけど……」


「それもそうだね」


結局、待ち合わせの教室前まで手を繋いで歩いてきてしまった。

廊下には人がいて、変に目立ってしまった気がする。

前の私ならきっとそういうことができなかっただろうって思う。

でもさっき盛大に目立ったからなんだか開き直ったような感じになってた。

といってもこのまま教室に入るのもおかしいなってのも分かってた。

私はアイコの手を離した。

そこそこの時間手をつないでいた。

だから離してすぐもアイコの手の感触が残ってるような気がした。


「開けていい?」


「うん」


私は扉を開けた。

指定された教室は学校にある教室で一番奥にあるもの。

普段でもあんまり人が来ないような場所。

夏休みだから尚更だ。

ちょっとぐらい大きな声を出しても大丈夫だろうって思う。


「お待たせ」


がらりって扉を開くと中にはカナと藍姫さんがいた。

2人とも真剣な表情をしてる。


「ほら……」


私はアイコの背中を押す。

ちょっと困ったような顔をしてアイコは藍姫さんの前に立った。

私の前にアイコ。カナの前に藍姫さん。

なんだか変な構図だなって思ってしまった。

今度こそ本当に私にはできることはない。

後は見守るだけ。


「私ね……アイコに言わなきゃいけないことがあるんだ……」


先に言ったのは藍姫さんだった。

その声はどこまでも真剣で、表情はどこから見ても深刻そうだった。

きっと今は人生で一番ドキドキしてるんだろうって思う。

どんな言葉を言うのかは私は知らない。

でもとってもとっても大事なことを言うんだって分かった。


「私……アイコのことが大好きなのっ!」


藍姫さんは叫ぶように言った。

それは私は想像してたのとちょっと違ってた。

でも藍姫さんはとても真剣な声で続けた。


「最初に見たときから好きだった! だから話しかけて仲良くなった! 一緒に出かけれた時は眠れなくなるぐらい嬉しかった!」


アイコは困惑した表情。

きっと私も似たような感じだって思う。

でもカナはとても満足そうな笑みを浮かべている。


「ちょっと……藍姫?」


アイコは言う。

その声には怒りも悲しみもなかった。


「アイコの漫画を読んでもっと好きになったっ! みんなにアイコの漫画読んで欲しいって思ったっ!」


藍姫さんの目から涙がこぼれている。


「でも……アイコの漫画をみんなが読んで私とアイコの距離が広がった気がしたの……」


「……だから今度の部誌にはアタシの漫画を載せたくなかったの?」


その言葉に藍姫さんは頷いた。


「私が一番好きなのに……。でもみんなのものになっていくのが……嫌になって……それで……」


藍姫さんはアイコに嫉妬してるんだと思ってた。

みんなに褒められるアイコを妬んで部誌にのせなかった。

そう思ってた。

でも違った。

それにカナは気がついたんだって思う。

その気持を、本心を言うべき。

きっとそんなことを言ったんだろうって分かった。


「本当にごめんなさい……。ごめんなさい……。ごめんなさい……」


藍姫さんは泣き崩れる。


「気持ち悪いよね。アイコはこんな私、嫌いだよね……。もう漫画研究部には……」


「本当にあんたって変な人ね」


ため息をつきながらアイコは言った。

その顔には笑みがあった。

いつものイタズラっぽい表情。


「そんなに泣かれたらアタシが悪者みたいじゃない」


「だって……だって……」


もう大丈夫だなって分かった。

藍姫さんの心からの告白。

それでアイコも藍姫さんの気持ちを信じることができたはずだって思う。


「アタシこそ大人気なかったわ」


アイコが藍姫さんの頭をなでながら言う。


「みんなで決めたことなのに意地はって、馬鹿にして、わがまま言って……」


「でもそれは……」


「だから……戻ってあげてもいいわよ。漫画研究部」


「本当?」


「アタシは嘘は言わないわよ」


「でも私……気持ち悪くない?」


きっと藍姫さんが一番気にしてたことかもしれない。

そんな藍姫さんにアイコは言った。


「アタシって百合恋愛小説とか好きなのよ。意外でしょ」


……

…………

………………


「よかったね。戻ったみたいで」


カナは嬉しそうに言った。

私とカナは部室に戻っていた。

これ以上いても意味ないし、邪魔だろうって思って。


「そうだね。カナのおかげだね」


きっとカナがいなかったらここまで上手く行ってなかった。

私だけだったらきっと右往左往して時間だけが過ぎてただろうって思う。


「なんだか一段落した感じがするねっ!」


カナは背伸びをする。


「部誌作りに集中できるから頑張ろうねっ!」


「うん。そうだね」


私もほっとしてる。

もうあんまり時間はない。

でも少しだけでも小説を書いておこうって思った。

今ならいつもより少しだけいい文章がかける気がした。

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