表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/156

26

8月7日。

夏休みが約2週間が終わった。

私とカナはのんびりと、でも頑張りながら過ごしている。

そして今日の私はメッセージの着信で目を覚ました。

目覚まし時計をセットし忘れてたみたい。

時間は起きる予定のものをとっくに過ぎている。

メッセージが来なかったら昼間で寝てたかも……。

そう思いながらスマートフォンを見るとカナからだった。

何かあったのかな?

私は寝ぼけ眼でスマートフォンを見た。

すると

今日は学校に行けないみたいっ!

ごめんねっ!

って来てた。

具合が悪いっていうより、何か用事があるみたいだった。

つまり今日は部室に行っても1人ってことになる。

どうしようかな。

私は考えた。

去年ならすぐに答えが出た状況。

カナがいないなら、行く必要もないよねって。

そして家でごろごろってしてた。

エアコンが効いた部屋でぐうだらしてた。

でも今はちょっと迷ってしまう。

それは多分、学校に色々知り合いができたせいだって思う。

学校に行けば誰かに会うかもしれない。

そして家にいるよりずっと楽しい1日になるかもしれない。

私はそう結論を出した。

だから私は今は部室にいる。

私らしくない、なんだかとっても前向きな考え方。

前なら不安になるから行かないって思ったはずなんだけど。

やっぱり私も変わってきてるんだなって実感する。

きっといい方向に。

今の時間は10時を過ぎたところ。

のんびり来たからさっき着いたばかり。

グラウンドでは頑張ってる声が聞こえてきた。

いつもこれぐらいの登校なら嬉しいんだけどな。

朝が苦手な私は思う。

とりあえず今日は小説をすすめようって思った。

それで昼休みには図書室に行ってもいいかもしれない。

カナといるのは好き。

でもカナと一緒だとやりにくいこともある。

誰かと話すとか、図書室に行くとか。

カナは私のことを心配してくれるから。

最近はちょっと大げさかもって思うようになった。

でもやっぱり心配してくれるのは嬉しい。

だから私はカナに何も不満はないし、文句とかも出てこない。

そしてカナがいない今日は普段できないことをしようって思った。

色々な人に会うのもいいかもしれないって。

そう思っていると扉からノックをする音が聞こえた。

いつもはカナが返事とかをする。

でも今日はそうじゃない。

私は立ち上がって扉を開けた。

がちゃりって音がした。


「こんにちはっすっ!」


「……こんにちは……」


くるるが立ってた。

相変わらずの小さな体に元気な声。

くるるは部室にたまに来ることがあったけど、いつもカナが対応してた。

だからこうやって面と向かって話すのは初めて。

ちょっと緊張する。


「今日はカナいないけど……」


「分かってるっすっ!」


明るく言う。

言葉遣いが前とは違うなって思った。

敬語は敬語だけど……。

くるるの言葉遣いって敬語っていうのかな?

分からないけど、気にしないでおこうって思った。

私は敬語を使われるような立派な人じゃないし。

でも先輩っていうのはつけてほしいかな。

やっぱり嬉しい。


「今日はいつき先輩に用事があって来たっす!」


ちゃんと先輩って言ってくれたっ!

嬉しいっ!

けど私はそれが表に出ないようにする。

なんだかはしゃいでるみたいで恥ずかしいから。


「今月分はちゃんとと出したよね?」


8月の星座は獅子座だった。

8月だけど、でも日本では春の代表的な星座。

春の大三角を作る星を持っている。

ヘルクレスの最初の冒険はネメアの谷のライオン退治。

そしてゼウスがその功績を称えてライオンを夜空の星にしたっていうのが物語。

どうしてもゼウスの話になっちゃうのが残念なところだなって思う。


「それはばっちりでしたっす!」


「それじゃ違う要件?」


「はいっ! お願いにきたっす!」


私にお願い……。

何か全然思いつかない。

でも大事そうな話かなって思った。


「中で話す?」


立ち話もなんだか疲れそうだし。


「ありがとうございますっ!」


私はくるるが入ったのを確認して扉を閉めた。

……カナがいないからいいよね。

なんだかちょっといたずらをしているような気分になった。


「手前に座っていいから」


「はいっ!」


言われた通りにくるるは座る。

本当に素直で良い子だなって思う。

きっと癖がある一三屋先輩ともうまくいってたんだろうって想像できた。

こんな後輩がいたら嬉しいよね。

そう思うくるるの姿。

来年は部員募集してもいいかもって思ってしまう。

もちろん、カナが嫌って言えばしないけど。


「それでお願いなんですけど……」


「うん」


なんだかドキドキする。


「えっとですね。前に書いてもらったコラムをまとめるって言ったじゃないっすか……」


「そう言ってたね」


確かあれは7月の初めのことだったような気がする。


「えっとですね……そのですね……」


なんだかくるるは急にトークダウン。

何か言いづらそうな感じがした。


「今まで書いた分だからえっと10月から8月までじゃないっすか」


「あっ、今月のも載せるんだね」


当たり前といえば当たり前かなって思う。


「それでですね……」


「どうかしたの?」


「このままだと9月だけぽっかり空いちゃうんっすよ」


「そういえばそうなるね」


「本当は9月発行のに載せる予定だったから9月10日締切なんっすけど……」


「それじゃ厳しいって感じなんだね」


「はい……。なので今月末には欲しいなって」


「いいよ」


部誌との並行作業になる。

でもコラムはもう書くことは決まってるし、大丈夫だって思った。

夏休みだから時間もあるし。

それにこんなに申し訳なさそうにお願いしてるのに、断るのはなんだか悪いって思う。


「気晴らしになるしね」


「ありがとうございますっ!」


なんだか大げさな返事だった。


「このままじゃ自分で書かなくちゃいけなくなるところだったっすよっ!」


「それは大変だね……」


意外と新聞部は厳しい部活なのかもって思った。


「これで安心できましたー」


言いながらぺたりと机に張り付く。

とっても悩んでたって感じがする。

先輩とかのプレッシャーが強かったのかな?


「書けたらまたメールするね」


「はいっ! 楽しみにしてるっすっ!」


「そう言ってくれると嬉しいな」


「でもあれっすね」


「ん?」


「いつき先輩って普通に話せるんすね」


「そりゃ話せるよ……」


周りから浮かないようにとりあえずの会話は得意だったし。

でも1年生の途中からはカナに任せっきりだったから、ちょっと苦手になってるかも。


「私の事駄目人間だって思ってた?」


いたずら半分で私は言った。

カナとかナツミとかたまことかアイコなら頷くだろうって思う。

でも私が思った通りくるるは凄い勢いで首を振る。


「そ、そんなつもりで言ったんじゃないっすよっ!」


「分かってる」


思わず笑ってしまった。

なんだか凄くおかしかったから。


「いつもカナが対応してたからね」


だから私があんまり話せないって思われて当然だって思う。

私もそうしてくれるカナに甘えてるわけだし。


「なんだかすっごく守ってるって感じたしたっすっ!」


「カナが私を?」


「はいっ!」


そう見えたんだって思った。

実際にその通りだし。

くるるは勢い優先っぽいけどちゃんと人を見てるんだなって思った。


「カナは部室に誰か入るのを嫌がるからそう思うかもね」


「そうなんっすかっ! 今は大丈夫なんっすかっ! 見つかっておしおきとかっ!」


本当に顔が真っ青になる。

なんだか大げさな様子が面白いって思った。


「今日は来れないって言ってたから大丈夫だよ」


私が言うと本当にほっとした様子を見せる。


「よかったっすー。一三屋先輩に超怖い人って聞いてましたし」


「一三屋先輩がカナを怖いって言ってたの?」


「そうっすね」


カナのことをそんな風に思ってたんだって初めて知った。

一三屋先輩みたいな人にはカナみたいな人が怖く見えるのか……。

よく分からないな。

あの人はほとんどの人を怖いって思ってそうだけど……。


「だからいつき先輩が1人だったのを見てこれはチャンスだって思ったっす!」


「カナに私に用事があるって言えばよかったのに……」


「それは無理っすっ!」


即答だった。


「絶対に無理っす!」


しかも2回も言う。

そんなことないんだけどなって私は思う。


「それかカナに伝えてくれてもよかったけど」


前はそんな感じだったし。


「お手数をかけることだから直接お願いしたかったっす!」


「律儀なんだね」


そういう違いなのかって納得できた。


「あともう1つお願いがあるっすっ!」


「何?」


「10月号からも何かコラム書いてほしいっす!」


そういえば星座が1周するなって思った。

だから次は何か考えないとかけない。


「いいけど……。どんなのがいいんだろうね」


「難しいっすね……」


「相談とかできるといいんだけど」


「でもこの部室には……」


カナがいるって言いたいんだろうって思う。

どれだけカナのことを怖がってるんだろう……。

カナと話すときはわりと普通に思えるのに。

というか一三屋先輩が大げさに伝えてるだけのような気がするけど。


「こういうのはカナをはさんだらあんまり良くないよね」


伝達じゃなくて相談。

できるなら直接やり取りしたい。


「そうっすね。できたらそうしたいっすけど……」


「それじゃ……」


ナツミの真似をしようって思った。

私は電話番号を紙に書いてくるるに渡す。

学校では話さない。

でも電話でなら話す。

これなら大丈夫そうって思った。


「これが私の電話番号。夜ならだいたい大丈夫だよ」


話中の時はナツミと電話してるけど。


「ありがとうございますっ!」


くるるはやっぱり大袈裟に言う。

というかたまに変な喋り方が抜けてる。

あの喋り方は癖っていうよりわざとっぽい感じがした。


「この紙、大事にしますねっ!」


「紙を大事にする必要はないと思うんだけど……」


というか登録したら捨ててほしい。

大事にすると言われると何だか恥ずかしいし。


「いつき先輩のサインみたいなものですから」


なんだか目をきらきらさせてる。

そんなに嬉しいものなのかな?

というか言葉が普通になってる……。

私がそう思ってるとどうやら自分でも気がついたみたい。

あっ……。

って小さく言った後に


「いつき先輩のファンだから超嬉しいっすっ!」


って言う。

やっぱり意識して言っている口調みたいだなって思う。

それよりも……


「私のファンなんだ……」


そっちの言葉の方が気になった。

嬉しいような……恥ずかしいような……。


「もちっすっ!」


言いながら∨サインを作る。


「コラムとか部誌を読んでファンになったっすっ!」


「意外と読んでる人多いんだね」


「新聞部は読んでる人多いっすよ」


「そうなの?」


「一三屋先輩がみんなに読ませてますからっ!」


何やってるのっ! あの人っ!

何だか予想外の積極性を見せる人だなって持った。

私にコラムを書いてって頼みに来たりとか。

……嬉しいといえば嬉しいけど。


「だからいつき先輩の担当者になりたいって立候補したっすっ!」


「そういう経緯なんだね」


「はいっ!」


やっぱり嬉しそうにくるるは言う。


「だから電話番号を教えてもらえて感激っす!」


「そう言ってもらえて嬉しいな」


ファンなのかってのは本当のところは分からない。

でもくるるが担当(?)になってくれたのは素直に嬉しい。

可愛い後輩ができたって感じがする。


「それじゃ今日はありがとうございましたっすっ!」


くるるは立ち上がる。

どうやら部室に戻るようだ。


「ちょっと聞いていいかな?」


ちょうどいいので私は気になってることを聞くことにした。


「なんっすか?」


「その喋り方って何かの真似とかなの?」


「あっ! これっすかっ!」


「ずっとその喋り方ってわけじゃないよね?」


「そうっすねっ!」


「新聞部の時だけとか?」


「正解っすっ!」


「なんでそんな喋り方なの?」


「部長命令っす!」


「……そうい人なの?」


「はいっ!」


元気がいい即答だった。


「無理難題を言うのが仕事っていう感じっすっ!」


「そうなんだね……」


その部長っていうのはかなりの確率で同じ学年の人。

多分だけど同じクラスになったことないって思う。

そんなキャラクターの人は同じクラスになったらすぐに分かりそうだし。

……できるだけ関わらない方が良さそうだなって思った。


「お前は後輩キャラっぽいから語尾にっすをつけろって言われたっすっ!」


「それを律義に守ってるんだ……」


本当にいい子なんだなって思う。


「でもいつき先輩が気になるなら……えっと……やめます」


なんだか急に口調が変わった気がした。

こっちが素なのかもしれない。

思ったより大人しい性格なのかもしれないって思った。


「くるるの好きなような感じでいいと思うな」


「分かったっすっ!」


私の言葉に即答だった。

案外気に入ってるみたいだって分かった。

もしかしたら、部長の人もくるるが話しやすいようにとか思って命令したのかもしれない。

もちろん、ただ面白がってるだけの可能性も高いけど。


「それじゃ今度電話させていただくっす!」


「うん。待ってるね」


夜は1人でぼんやりしている時間だった。

でも高校生になって変わった。

ナツミと話す日ができたから。

それにくるるも加わる。

何だか本当に色々なことが変わっていってるなって思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ