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ある日の出来事。

カナがノートに主人公のラフを書いてる。

私は手を止めてのぞき込んだ。

髪の毛が長かったり、短かったり。

大人しそうだったり、活発そうだったり。

色々な少女の絵が書いてある。

でも身長が高いのはみんな同じ。

私がそうして欲しいってお願いしたから。

というのも月は低重力だから身長が伸びやすいって漫画で読んだ。

プラネテスっていう漫画。

お父さんが持ってたもの。

もともと今回の小説もそれに出てくるお話を真似した。

でも私は思う。

背の高い女の人って格好いいよね。

私もそれなりに高い方ではある。

でもそれなりぐらい。

言ってしまえば中途半端。

だから低い人や高い人がなんだか羨ましいって思う。


「こんな感じはどうかな?」


私が見てるのに気づいたんだろう。

カナは私に見せるようにノートを広げる。

とっても見やすくなった。


「とってもいいって思う」


やっぱりカナの絵は好き。

カナに書いて貰えて嬉しいって思った。


「いっちゃんはどれがいいって思う?」


書かれているラフ。

どれが主人公にあってるか。

それを聞きたいんだって思った。


「ちょっと待って……」


「うんっ! ゆっくりいいよっ!」


カナは嬉しそうな感じ。

どれがいいかなって私は悩む。

主人公ってどんな感じの人なんだろう……。

そこから考えるのが良さそうだなって思った。

多分だけど基本的に明るい性格だって思う。

月で生きていくことを受け入れてるって思う。

でももちろん地球に憧れがある。

それを隠してる感じ。

きっとお洒落っ気もあんまりないんだって思う。

地球から届いた服を雑にきる感じ。

知らない人に会うことも多いからきっと社交的……。

でも心には闇みたいなのもあって……。

時計の音がなんだか大きく聞こえた。

少し時間をかけて選んでるって思う。

でもカナは嬉しそうな表情。


「この子がいいかなって思う」


私は指を指した。

短めの髪の女の子。

背が高いからぱっと見たら男の子に間違われるかもしれない容姿。

でもちゃんと可愛い。それに格好いい。


「そうなんだねっ!」


カナはすっごく嬉しそうな声で言った。

私がこの子を選んで嬉しいって感じがした。

何だか当たりを引いたみたいで私も嬉しい。


「カナはこの子がお気に入りなの?」


「うんっ!」


やっぱりって思った。


「だからいっちゃんが選んでくれて嬉しいっ!」


「私もカナが気に入ってるのを選べて嬉しいよ」


「この子はいっちゃんをイメージして書いたんだよっ!」


「そうなのっ!」


思わず大きな声を出してしまった。

私は改めて絵を見てみる。

確かに短めの髪とかそれらしい要素はあるって思う。

でも……


「私はこんなに可愛くないって!」


「そっくりだって思うけどな」


カナは絵と私を交互に見比べる。

そしてやっぱり嬉しそうに微笑む。


「わたしにはいっちゃんがこう見えるの」


「何だか凄く美化して見てるんだね……」


「いっちゃんが卑屈なだけだって思うな」


カナがこんなに可愛いって思ってるのは単純に嬉しい。

でも、私がモデルって分かって見るとなんだか恥ずかしい気がした。

何だかそのことをとっても意識しそうに思える。

読む人は気が付かないと思うから、そこはいいんだろうけど……。


「やっぱり違うのがいいな」


私は再びノートを見る。

あの髪の長い人が良さそうだった気が……。

でも私が何か言ったりする前にカナはノートを閉じた。


「もう決めちゃったからっ!」


いたずらっぽいカナの声。


「絶対にあの絵にするっ!」


何だかこうなったらカナは絶対に諦めない気がした。


「いっちゃんもぴったりだって思ったんでしょ?」


「それはそうだけど……」


何だか罠にかかったような気分。

でも本当は岩に自分から突っ込んだだけだけど……。


「それじゃこの子で進めるねっ!」


名前は何にしようかなってカナはうきうきしてる。

何だか今から違うのに変えようって言いにくい雰囲気。

だからしょうがないかなって私も諦めた。

話に合いそうだなって思ったのは本当だし。

それにやっぱりカナが書きたい絵が一番だしね。


「うん。分かった」


私はノートパソコンを見る。

作りかけのプロット。

あの主人公のイメージで作っていこうって思った。


……

‥………


ある日の出来事。

部室へ戻ってる途中にたまこを見つけた。

カナは部室で絵を書いてる。

ちょっと遅くなってもいいよね。

私はそう思って話しかけた。


「たまこ。おはよう」


私の声でたまこは立ち止まる。

そして笑顔を見せてくれた。


「お早うございますっ!」


まだ夏休みが始まってそんなに経ってない。

でも何だか久しぶり会ったような気がした。


「部活ですか?」


「うん。部誌作ってる」


「そうなんですねっ!」


「たまこは料理部だよね?」


「はいっ!」


「今は忙しくないの?」


もしかしたら話しかけて迷惑かもって思った。

でもたまこはふるふるって首を振った。

安心した。

邪魔してないみたいって。


「今はちょうど空き時間です」


「ちょっと前まで忙しかったの」


「ですねっ! 合宿してる部活がありますのでっ!」


「そうなんだ」


それなら毎日忙しいんだろうって思う。

そして楽しんだろうなって分かった。

私ならとてもこなせそうにないけど。


「どこが合宿してるの?」


「えっとですね……」


たまこはちょっと考える。


「今はバスケット部とサッカー部ですねっ!」


「たくさん部員がいそうな部活だね」


バスケット部が合宿中か……。

迷惑じゃないなら夜に電話しようかなって思った。

へろへろで疲れて出れないかもしれないけど。


「たくさんいるしたくさん食べますねっ!」


「そうっぽいね」


きっと私の2倍ぐらい食べそうだなって思う。

でも運動するから太ったりもしなさそう……。

私もちょっとは運動しようかな。

何をすればいいのか分からないけど。


「たくさん作ってもみるみる減っていくから楽しいですっ!」


「そういう楽しさもあるんだね」


「はいっ! もちろん作るのも楽しいですっ!」


「充実してるんだね」


「はいっ!」


「演劇部は合宿してないんだね」


「まだみたいですねっ!」


でも学校には来てるんだろうって思った。

わざわざ探したりはしないけど。


「今はある程度個人練習みたいなので、合わせの時に合宿するみたいですっ!」


「そうなんだね」


って言いつつも私はよく分かってなかった。

でも部活によって合宿時期が違うなら……


「たまこってずっと合宿の料理をずっと作るの?」


「ずっとってわけじゃないですっ!」


その言葉を聞いてちょっと安心。


「時々どこも合宿してない日もありますし、その日はお休みですっ!」


「……何だかお仕事みたいだね」


合宿する部活は料理部にとっても感謝してるって思う。


「お金はもらえませんけどねっ!」


「私ならもらいたくなるって思うな」


もっともお金を取れる料理なんて作れる気がしないけど。

私が作ったら逆にお金を払わないといけないかもしれない。

みんな残して、処分代として……。


「それじゃそろそろ部室に戻るね」


「はいっ! たまこはちょっとお昼寝しますっ!」


「お昼からまた頑張らないといけないもんね」


お昼ごはんより夕ご飯の方が作るの大変そう。

だから今のうちに体力を回復させるんだって思う。


「頑張ってね」


「はいっ!」


「人手が足りないときは手伝うから」


「ありがとうございますっ!」


ぺこりって丁寧に頭を下げる。


「どうしても必要な時はお願いするかもですっ!」


「うん。またね」


「バイバイですっ!」


言ってたまこは離れていく。

手伝うから。

大変そうだから私は言った。

たまこが疲れて倒れるのは避けたいって思ったし。

でもできるだけ出番は来てほしくないなって思った。

積極的なのか、消極的なのか、自分でも分からない。

とりあえず皿洗いぐらいはできる。

できるって信じたい。

必要な時はそれぐらいはしてあげたいって思った。


……

…………

………………


ある日の出来事。


「ごめーん。電話出れなかったんだっ!」


ナツミの声が聞こえる。

私は自分の家。

ナツミは多分、学校の中。

合宿する生徒が寝泊まりとかするところだろうって思う。

後ろでなんだかわいわいと楽しげな声が聞こえる。


「ううん。大丈夫だよ」


私は前にメッセージを送った。

電話できる?

って。

返事はすぐに来た。

でもその内容は

長い時間が取れないっ!ごめんっ!

っていうもの。

そして今日にナツミから電話があった。

久しぶりに聞くナツミの声。

なんだか嬉しい気分になる。


「合宿中は夜も練習があってね」


「それは大変だね」


朝から晩まで。

まさにバスケットな1日。


「練習終わったら急いでお風呂に入って直ぐにばたんきゅーだったんだ」


「倒れたりしなかった?」


そんなに大変だとちょっと心配になる。


「具合が悪くなった人は何人かいたね」


やっぱりいたんだって思った。


「ナツミは平気だった?」


「うんっ! バッチリっ!」


「それはよかった」


「……もしかして心配してくれてた?」


「ちょっとだけね」


「ありがとうっ!」


大げさに喜ぶ声。


「おかげで乗り切れたよっ!」


「私は何にもしてないんだけどね……」


きっと料理部の人達のおかげだろうって思う。


「今日は大丈夫だったの? あんまり疲れてないの?」


「今日は合宿の最終日だからねっ!」


楽しげな声が聞こえる。


「練習は軽めで、あとご褒美にみんなでバーベキューしてるんだっ!」


「今してるの?」


「うんっ!」


だから周りが騒がしいんだって分かった。

とっても楽しいんだろう。


「バーベキューっていいね」


私もお父さんとお母さんでしたことがある。

夜空を見ながらのごはん。

すごくいい思い出。


「うんっ! すっごく美味しいしねっ!」


「花火とかもするの?」


「もちろんだよっ!」


「何だか満喫してるね」


「うんっ!」


ナツミはそういうのが凄く似合う。

私は騒がしいのとかはあんまり得意じゃない。

でもナツミを見てるとちょっとだけ羨ましい。

ああいう風に生きれたらなって思うこともある。


「でもいつきともバーベキューとかしたいなっ!」


「そうだね。機会があったらね」


「今から来ればいいのにっ!」


「行くわけないでしょ」


楽しすぎるせいか、ナツミはちょっとだけ変なテンション。


「もうご飯、食べちゃったしね」


「それは残念だねっ!」


「そういえばさ……」


って感じで私は話題を変える。


「どうかしたの?」


「合宿中って料理部がご飯作ってたみたいじゃない」


「よく知ってるねっ!」


「料理部に知り合いいるからね」


「そうなんだっ!」


ナツミは凄く嬉しそうに言った。


「どの人なの?」


「えっと小さくて可愛い人」


かなりアバウトな情報だなって思った。

でもナツミはそれで分かったみたい。


「あの子ねっ! 分かるよっ!」


「そうなんだ」


「うんっ! 小さくて一生懸命な感じでお皿とかに入れてくれたっ!」


「そうなんだね」


私の友達と友達。

2人が私の知らないところで交流がある。

なんだか嬉しい感じがした。


「いつきの友達だったんだねっ!」


「うん。たくさん食べてもらえて嬉しかったって言ってたよ」


「そうなんだっ! すっごく美味しかったっ! 伝えといてっ!」


「うん。とっても喜ぶって思う」


「いつもは料理当番とか決めてやってたんだ」


「合宿?」


「うん。だから今年はすっごく助かったし美味しいものを食べれてみんな嬉しそうだったよ」


「ちゃんと料理部の人達に感謝しないとね」


「もちろんだよっ!」


ナツミなら会った時に直接言いそうだなって思う。

そうなったらたまこもきっと喜ぶだろう。

それがきっかけで仲良くなってもらえたら嬉しい。


「あとね。凄く人気あったよっ!」


「人気?」


「そのいつきの友達の……」


「たまこ?」


「うんっ! たまこちゃんっ!」


たまこが人気。

なんだか分かる気がした。


「小さいけどたくさんの料理を作ってね。それでちょっと恥ずかしそうに入れてくれるの」


思い出すようにナツミは言った。

私もそんなたまこの姿を想像することができる。


「それでね。美味しかったって言うと嬉しそうで恥ずかしそうで、すっごく可愛いのっ!」


なんだか興奮している感じ。


「みんなのアイドルになってたよっ!」


「ナツミもたまこみたいな子、好きなんだね」


言いながらはっとした。

何だかカナみたいなことを言ってるって。

ちょっと感染ったのかもしれない。


「そりゃ可愛いって思うけどっ!」


でも慌てた感じの返事が来るのは予想外。


「でもあたしは……」


「あたしは?」


「何でもないっ!」


「何よそれ……」


可愛いなら可愛いって素直に言えばいいのに。

なんで中途半端に思うけどなんて言うんだろう……。

もしかして照れてるのかなって思った。


「こんなところにいたっ!」


ちょっと離れたところからの声。

ナツミじゃない声。


「何をこっそり抜け出してんのよっ!」


どうやらナツミを探してた人みたい。


「ちょっと電話中で……」


あたふたするナツミ。

ちょっと面白かった。


「もしかして電話の相手ってナツミが……」


その声の後は……


「あっっっ! もう戻らなくちゃだから切るねっ!」


ナツミの声でかき消された。

何をそんなに慌ててるのかさっぱり。


「またねっ! また電話するからっ!」


「うん。バーベキュー楽しんでね」


「もちろんっ!」


そして通話は終わった。

明日はたまこに会えるかな?

もし会えたらナツミが喜んでたことを報告しようって思った。

そして私はバーベキューを楽しんでいるナツミを想像する。

それだけで私は何だか満足した気分になれた。

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