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05

私は空を見ていた。

深夜2時ぐらい。

なんだか眠くて目が重くなってきた。

思わずあくびをしてしまう。

でももう少し夜空を見ていようって思った。

もう少ししたら流れ星を見れるかもしれないから。

カナと同じクラスになれますように。カナと同じクラスになれますように。カナと同じクラスになれますように。

心の中では何度も練習した。

でも肝心の流れ星を見れないでいる。

流れ星は何度も見たことがある。

夜空をよく見るならたまに見ることができる。

でもどうしても見たいっ!っていう時ほど見れないのが流れ星だって思う。

今日も見れないな……。

今日がラストチャンスなのに……。

でも……眠い……。

こんなに眠いと夜空を見ていても見逃しそうだって思った。

ちょっとだけ横になろう……。


……

…………

………………


始業式の日。

新しい日の始まり。

だけど……

私はばたばたって感じで準備をする。

予定の時間より20分も遅く起きてしまったから。

目覚まし時計をちゃんとかけといたはずなのに。

止めた記憶は本当にないのに。

でも起きて時計を見たらびっくりする時間になってた。

急いで顔を洗って、急いで着替えて、急いでごはんを食べて……。

ごはんを食べたら歯を磨かないとなんか気になるし……。


「始業式なんだから起こしてくれてもよかったのに……」


私は朝ごはんを食べながら言った。

食べないで行こうとしたら怒られた。

こういうところだけはなんだか厳しい。


「いっちゃん、自分で起きるって言ってたじゃない」


「それはそうだけど……」


私は急いでもぐもぐとご飯を食べた。

そして……


「いってきますっ!」


家を出る。

自分だけならいいけど、カナも遅刻になるのはなんか嫌な感じがした。

先に行ってて。

そう言ってもカナは待っててくれそう。

だから私はできるだけ急いだ。


「おまたせっ!」


そしていつもの待ち合わせ場所に到着した。

ちょっと疲れた……。


「遅くなってごめん」


「全然大丈夫だよ。十分に間に合うしね」


遅れた私にカナは笑顔で言ってくれる。


「おはよう、いっちゃん」


「おはよう」


そうやって私とカナは朝の挨拶をする。

2年生になってもそういうのは変わらない。

3年生になっても変わらないって思う。

でもその後は……?

変わらないで欲しいって私は思った。


「そういえばねっ!」


歩きながらカナは言った。


「何度か流れ星見れたよっ!」


とても嬉しそうな表情。

とっても嬉しそうな声だった。


「最初の方は全然見れなくて諦めてたけど、でもピカって光ってしゅーって流れていくのが見えて興奮したんだっ!」


私は流れ星が見れなかった。

でもカナは見ることができた。

だから私もとっても嬉しい気分になれた。


「私は見れなかったな。でもよかったね。私も初めて見た時はすっごく嬉しかった」


私は初めて見た時のことを覚えてる。

小学生の時だった。

夜に道を歩いていた。

空を見ながら。

その時にカナが言うようにピカって光るものが見えた。

それは光の線を作り、あっという間に消えた。

私は最初、それが何なのか理解できなかった。

そしてしばらくして流れ星だって気がついた。

家に帰ってお父さんとお母さんに報告したのも覚えてる。

流れ星が見えたって。

今のカナみたいな表情と声だったって思う。


「本当によかったねっ!」


私は言った。

きっととっても笑顔になってると思う。


「カナが流れ星が見れて私もとっても嬉しい」


「ありがとうっ! ……でも3回願い事を言うのは駄目だったな」


駄目だった。

っていう割にはカナの言葉には悔しさとかそういうのはなかった。

きっとそれぐらい流れ星が見れたのが嬉しかったんだって思う。


「消える前に3回言うのって難しいしね」


私は言った。

難しいっていうかきっと無理。

すぐに言えるものならできるかもだけど……。

お金、お金、お金。

とかみたいな。

でもあんまりロマンチックじゃない願いごとだと叶わなさそう。


「パッと出てぴゅって消えるからねっ!」


「でも流星群ならできるかもね」


流れ星が見え続けている間はセーフっぽい感じがする。

マイルールだけど、きっと大丈夫なはず。


「流星群っ!」


私の言葉にカナなんだか興奮気味に言った。


「見たことないけどなんだか凄そうだねっ!」


「うん。とっても凄いよ」


「星座、天の川、流れ星、それに流星群……」


カナは空を見ながら言った。

今は当たり前だけど星とかは見えてない。

でもカナの目はなんだかきらきらしているように見えた。


「夜空っていっても本当に色々あるんだねっ!」


「そうなんだよ」


カナが天文部を作ろうって言ったのは私が星空とかが好きだから。

カナはそんなにそういうのは興味ない感じだった。

でもカナもだんだん好きになってくれてるみたいで、本当に嬉しく思えた。


「他にもいろいろあるしね。惑星観察とか月を見たりとかね」


「本当に色々あるんだね」


宇宙は広い。

とてつもなく広い。

多分、みんなが思っている1000倍ぐらい広いって思う。

だからこそ夜空って言っても本当に色々な顔がある。

私はそんな夜空が大好き。


「これからも色々な夜空や星空を見ていこうね」


「うんっ! 楽しみっ!」


……

…………

‥……………


「……別のクラスになっちゃったね」


登校途中は私もカナもテンションが高かった。

クラス替えのこととか忘れてたぐらいに。

でも学校に着いて、廊下に張り出されてる紙を見て、なんだか現実に引き戻された気がした。

私とカナは違うクラスだった。

こうなることは予想していた。

でもショックなのは間違いなかった。

カナと一緒なのが普通。

心の中でそう思ってる自分がいたって思う。

高校生になる前はカナがいないのが普通だった。

それでやってこれてた。

でも今はカナが別のクラスってだけでなんだか不安になってくる。

1年で成長したって思ってた。

でもきっとそうじゃないんだなと実感してしまった。

むしろ駄目になってるんじゃないかって思う。

そんな私にカナは言う。


「大丈夫だよっ!」


私を元気づけるために明るい笑顔、明るい声で。

きっとカナも悲しい気分なんだろうって思う。

流れ星に願い事をしようって言ったのもカナだった。

でも私を元気づけようって励ましてくれる。


「違うクラスって言っても昼休みとか放課後は部室で一緒にいられるからね!」


「それもそうだね」


部室で一緒にいられる。

そういえばそうだなって思った。

別のクラスになったからって、会えないくなるわけじゃない。

私とカナには部室っていう場所があるから。


「部室で毎日会えるよね」


「それに登下校も今まで通りだよっ!」


会えないのは授業中と短い休み時間とかだけ。

そう思うとほっとした気分になれた。

違うクラスになると疎遠になる。

そんなことはよくある話。

でも私とカナには絶対に当てはまらないって思えた。


「本当に部活を作ってよかった」


私は言った。

部活を作ったからこそ、部室をもらえた。

部室は本当になくてはならないものだなって思う。


「そうだねっ!」


カナも同じように考えてるみたい。


「だから部室を取り上げられないよう、それなりに頑張ろうねっ!」


「今年も部誌を頑張って作ろうねっ!」


「うんっ!」


今年はどんな部誌を作ろう。

作り始めるのはまだ先だけど、なんとなく思った。


「そろそろ時間だね」


「みたいだね」


もうすぐ予鈴がなる時間。


「……別々の教室に行くのってなんだか変な感じがするね」


「そうだね。でもすぐに慣れるよ」


「あんまり慣れたくないよね」


「うん。でもしょうがないよね」


「じゃまた部室でね」


「うん。ばいばい」


カナが小さく手を振る。

私も同じようにして別れた。

なんだか凄く寂しい感じ。

そういえば他にどんな人がいるか見なかったな。

カナと同じかそうじゃないかだけ気にしてたから。

……でも誰がいても一緒だよね。

私はそんなことを考えながら教室に入った。


……

…………

………………


教室はがやがやと騒がしかった。

同じクラスになって喜んでいる人。

仲がいい人が別のクラスになって落ち込んでいる人。

色々な人がいた。

私も落ち込む側の人。

ここでは前みたいに目立たずな感じで行こうって思った。

特別に仲がいい人もいないし、孤立してるわけじゃない。

そんな周りに溶け込む感じ。

今の私にできるかは分からないけど、でもそうしなくちゃいけないって思った。


「あの……」


ぼんやりって感じで座っていると後ろから声をかけられた。


「いつきさんですか……?」


この声は……って思った。

まさかって思う気持ちもあった。

でも振り返ってみると……


「えっ!」


思わず大きめの声が出た。

びっくりしちゃって思わず。

そこには私が想像していない人が立っていたから。


「た……たまこちゃん?」


「はいっ!」


たまこはとっても嬉しそうな表情で私を見ていた。

たまこは少し前にホームセンターで会った。

そして連絡先を交換はしたけど、連絡は取ってなかった。

何か送ろうって何度も考えた。

でも何を送ればいいのか分からなくて、結局そのまま。

たまこからも連絡はなかった。

きっとお互いこういう時にどう送ればいいのか分からなかったんだって思う。

そして今、目の前にそのたまこがいる。

もちろん私達と同じ制服を着て。

まさかたまこが同じ高校の同じ学年にいたなんて想像もできなかった。

そもそも高校生だって思ってもいなかった。


「いつきさんって同じ年齢だったんですね……」


「うん。そうみたい」


「びっくりですっ!」


「私もだよ……」


たまこはあの時よりおどおどした感じはあんまりなかった。

むしろ私が驚きで動揺してる感じがする。


「いつきさんと再会できて、それに同じクラスだなんて凄いですっ!」


なんだかたまこは本当に嬉しそう。

私もなんだか嬉しい気分になった。

さっきまでは落ち込んでいたけど、嬉しいサプライズがあった感じ。


「私も凄いって思う。これからよろしくね」


「はいっ!」


そう言ったところで時間になった。

みんなが席に戻り始める。

たまこも同じように自分の席へ移動する。

とてとてみたいな感じで。

その姿はホームセンターで見たものと全く一緒でなんだか面白かった。

やっぱり同じ制服を着てるのは違和感があるけど……。

でもすぐに慣れるだろうって思った。

たまことはそれなりに仲良くできそう。

それに話とかしてても目立ったりしない。

いい人と同じクラスになれたなって思う。

そしてすぐに先生が入ってきた。

先生からは簡単に説明があった。

このクラスになって初日ってことで自己紹介も。

私はいつものように無難にこなす。

無難な自己紹介をさせたら上位に行けるんじゃないかってぐらい自信がある。

何度も転校を繰り返したおかげ。

でも……


「た……たまこは……その……」


たまこは恥ずかしそうに、うつむきながらもじもじした感じだった。

本当に自己紹介とかみんなの前に立つとかが苦手なんだって思えた。

目立つのが苦手。

でもそのせいでさらに目立ってしまう悪循環。

しどろもどろな自己紹介。

名前が自分の名前という子供っぽさ。

クラスの大半が怪訝な感じでたまこを見ている。

そして笑っている人も何人かいた。

ひどいって思った。

でも私ができることは何もない。

ホームセンターの時と違って見守ることしかできない。


「よ……よろしくおっ、お願いします……」


名前とよろしくお願いしますだけの短い自己紹介。

でもとても長い時間が必要だった。

たまこは椅子に座った後も恥ずかしそうに、気まずそうに座っている。

そのまま自己紹介は色々と考え事をしている間に終わった。

そして私は思った。

アイコとは違うクラスになったんだなって。

アイコはたまことは全く逆な自己紹介をしそう。

自信満々で、言わなくてもいいことまで言ってしまいそうな感じ。

聞いたことがなくても想像できた。

静かなクラス生活になりそうだなって思った。

きっとアイコと同じクラスになってたら、騒々しい日々になってただろうって思う。

それにすごく目立ってたかもしれない。

私は何より目立つのだけは嫌だなって思っている。

だからこのクラスはそれなりに居心地がいいものになりそう。

とりあえず私は今度こそたまことお友達になりたいって思った。

あの時に会えた女の子とまた再会できるなんて、これも何かの縁のはず。

この後はすぐにたまこに話しをかけよう。

そして元気づけてあげようって思った。

天文部に誘うのもいいかもしれない。

カナは嫌がるかもだけど、そこは説得次第だって思う。

私はそんなこと考えながら先生の話を聞いていた。

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