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04

気がつけば4月になって、いつの間にかもうすぐ始業式。

宿題以外特にやることのなかった春休みももうすぐ終わり。

宿題もカナと部室でやっていたので、もう残ってない。

のんびり学校の始まりを待つだけになってる。

高校生になった私はとても真面目だ。


「そういえばさ」


私はカナに言った。

私とカナは今日も部室に来ていた。

なんだか本当に自分の部屋みたいな感覚になってる。


「今の私達って2年生なのかな? それとも1年生?」


なんとなく思った疑問。

別に2年生でも1年生でもどっちでもいいって思う。

でもちょっとした引っ掛かりがあったから、声に出してみた。


「どうだろうね」


カナは割りと真剣な表情で考えてるみたいだった。

私は疑問に思っただけで、そんなに考えてない。

できれば2年生の方がいいかなって思ってるぐらいだ。


「ちょっと待ってね」


カナはスマートフォンを出して調べ始めた。

なんだか私以上に気になってるみたい。

私より真面目っていうのもあるだろうけど。


「多分だけど……」


カナはスマートフォンを見ながら言った。


「3月末までが1年生で4月からは2年生じゃないかな?」


春休みの途中で移り変わる。

私はそんな発想はあんまりなかった。


「卒業しても3月末までは高校に在籍してることになってるんだよね。だから学年もそこで変わるんじゃないかな?」


「なんだかとっても説得力あるね」


聞いてみるとなるほどって思った。

3月末までは高校に在籍っていうのも初めて知った。

カナはもしかしたら知ってたのかもしれない。

一応確認のために調べた感じがする。


「だからわたし達は2年生ってことだねっ!」


「そんな実感はあんまりないけど」


「部活で先輩とか後輩がいると違うんだろうけどね」


「そうかもね。上の人がいなくなったり、下の人が入ったりすると実感持てそう」


1年生だったから後輩はもちろんいない。

この部活には先輩もいない。

唯一関わる先輩といえば一三屋先輩。

でもあの人とはメールでのやり取りだけで実際に会うことはほとんどない。

あと関わったことがある先輩といえば漫画研究部の人。

よく考えれば関わったのは文化祭の時だけで、さらによく考えれば名前も知らない。

でももう卒業していないんだなって思うと、なんだか時間の経過を少しだけ実感できた。

あの先輩ももう高校生じゃなくなって、大学生になってるんだろうか。

そう思うとなんだか文化祭でしたやり取りが懐かしく思える。


「カナありがとう。おかげでなんだかすっきりした」


「いっちゃんのお役に立ててよかったです」


カナはにこりと微笑んで言う。

私はも笑顔を返して、漫画研究部の部誌を手に取る。

何度か読んだ。

けどなんとなくまた読みたい気分になったから。


「いっちゃん、その本よく読むよね」


「そうだね。好きな作品があるんだ」


単純な面白さで言えば本屋とかにあるものの方が面白いかもしれない。

当たり前といえば当たり前だけど。

でも身近な人が書いたと思うと、なんだか不思議な感じがする。

天文部の部誌とかも似たような感じで読まれてると思うと、ちょっと気恥ずかしい気がした。

私が漫画研究の部誌を読み始めると、カナも自分が持ってきた小説を読む。

部室ではお喋りをすることも多かったけど、静かに読書をするっていう時間も多かった。

やってることは家の中でするのと同じ。

でも近くにカナがいるだけで、なんだか安心感がある。

いつもよりずっと本に入り込めれるような気がした。

だからこうやって部室で本を読むのが私は好き。

カナも同じように感じてくれたら嬉しいって思った。

私とカナは黙々と本を読んだ。

カチコチっていう時計の音がなんだか大きく聞こえる時間。

たまにカナがページをめくる音も聞こえた。

なんだかすごく文芸部っぽい感じがする。

そんなことを思いながら私は読書をする。

漫画研究部の部誌といっても好きなのは2つの漫画。

全部読むこともあるけど、その2つを何度も何度も読み返している。

1つは勢いがあるギャグっぽい漫画。

なぜか一般家庭の主人公のもとに執事がやってくるっていう内容。

題名は執事と私と平凡と。

会話とかのテンポとかギャグの入れ方がうまくて、思わず笑いそうにある。

なのでこういう部室で読むのはなんだか危険な気がする。

でも思わず読んでしまう。

っていう感じだ。

もう1つは対象的に、絵もお話もとっても綺麗な漫画。

コインランドリーで出会う少年と少女のお話だ。

題名はコインランドリーデート。

コインランドリーで洗濯をしている間に大雨になって帰れなくなる2人。

そこでの会話がメインで時折回想とかが交じる感じ。

少女が少年にとある過去を告白するところは思わず涙が出そうになる。

そして最後のシーンの虹でまた泣きそうになってしまう。

どちらも好きな漫画。

だけどどちらか1つを選べと言われたらコインランドリーデートの方を選ぶ。

きっと先輩は執事の方を書いたんだと思った。

もう1つの方は知らない人。

でも先輩が言うには私と同じ年齢みたい。

どんな人だろう。

私は想像する。

きっと静かで真面目で、でも心の中に大きな何かがある人だって思った。

図書室の横で静かに本を読んでいるイメージ。

頭の中で想像する少女はなんだかカナっぽい感じになった。

でもきっと雰囲気は似たような感じなんだろうって思う。


「やっぱり面白かったな」


私は読んだ部誌を置いた。

なんだか凄く小説を書きたい気分になってくる。

良い物は自分に推進力をくれるんだなって思った。

私はノートパソコンを開いた。

そして電源を入れる。

ジリジリみたいな音を出してパソコンが動き始めた。

私はパソコンの電源を入れて待っている間がなんだか好き。

だからスリープモードみたいなのはあんまり使わなかった。


「あれ? いっちゃん、原稿もう書いたよね?」


「うん。返事ももらった。小説を書きたい気分になったから」


「そうなんだねっ!」


とっても嬉しそうな声が聞こえた。


「いっちゃんの小説を読みたいって思ってたから、すごく嬉しいなっ!」


「また絵を書いてくれる?」


なんて私はおねだりをする。

やっぱり絵があるとなんだかやる気がでる気がした。


「もちろんっ! 何枚でも書くよっ!」


「ありがとう」


やっぱりカナは優しい。

そう言ってくれるカナのためにいい小説を書かないとっ!って思った。

でもまず話を考えるところからだけど……

どんな話を書こうかな。

私がメモ帳を開いて考えてる時だった。

勢い良く扉が開いたのは。

大きな音が出たので私とカナはびっくりして扉の方を見る。

こんな入り方は一三屋先輩じゃありえない。

だけど他に訪ねてくる人は思いつかなかった。

そして扉の前に立っていたのは1人の少女だった。

金髪のツインテール。左右に色が違うリボンをつけていた。

そして自信満々っ!って主張する表情がなんか印象的だった。

身長はたまこと同じぐらいだけど、女の子っていうより少女って感じがした。


「ここが天文部ねっ! なかなかいい部室じゃないっ!」


その少女は遠慮ない感じで部室に入ってくる。

そのまま部室の中を観察してるみたいだった。


「いっちゃん、いっちゃん」


カナが私にこそっと言う。


「あの子、いっちゃんの知り合い?」


どうやらカナの知り合いではないみたい。


「うんうん。全然知らない」


「そうなんだね」


カナはそう言うと少女の方を見た。


「あのどなたかしら?」


声にちょっと怒った感じがあった。


「部外者に入ってこられても困るんですけど」


なんだかカナにしては珍しい気がした。

中学時代のカナは知らないけど、今のカナはあんまり周りと波風を立たないようにしてる。

それは多分、私のため。

でもさすがに少女の無礼さにはむっと来ているみたい。


「あっ! そういえば挨拶がまだだったわねっ!」


少女は悪びれることもなく言った。


「アタシはアイコっていうのよっ!」


アイコって言えば……。

もしかしてっ!


「ちょうどよかったわっ!」


アイコはビシっと机に置いてある漫画研究部の部誌を指差す。


「そこの部誌に漫画書いてるわっ!」


「もしかして……」


言いながら私は思う。

もしかしなくてもコインランドリーデートのところに名前があったから間違いないんだけど……。


「コインランドリーを書いた人?」


「そうよっ!」


ってアイコは自信満々に言う。

なんだか……イメージとは違った。

もっと繊細そうな感じな人が書いたって思っていた。


「その漫画面白かったでしょ?」


少なくともそんな台詞を言う人だとは想像もしてなかった。


「う、うん。面白かったけど……」


「アタシって天才だからっ!」


言って

きゃははははは

と高笑いをする。

……作者と作品は別。

そうは分かっていてもなんだか……


「ぎ、ギャップが凄いね」


思わず苦笑いで言ってしまった。


「それって褒めてるの?」


「……多分」


「それならいいわっ!」


本当にこの子が書いたんだろうか?

失礼だけど思ってしまう。

でも本当なんだろうなって思う。

偽物にしてはそれっぽくなさすぎるし。


「ところであなたはどうして部室に来たの?」


静かな声でカナは言った。

そういえばそっちの方が大事なことだったって私は思う。


「この漫画を書いたのはアタシですって自慢しに来たの?」


「か、カナ……」


思わず私はカナを見る。

カナにしてはとてもストレートな物言いだった。

きっとカナにとってアイコみたいなのは嫌いな人物なんだろうって思う。

カナはナツミも好きではなさそうだけど。

でもナツミはいきなり部室に押しかけてきたりしない。

部室に用がある時だってちゃんとノックをするだろう。

ああ見えてナツミは常識人。

だからこそバスケット部でも人望があるんだろうし、私も付き合えてるんだと思う。

でもアイコは完全に自分が1番の……言葉は悪いけどガキ大将的な感じに見えた。


「自慢しに来たのももちろんあるわっ!」


「あ、あるんだ……」


カナの皮肉が効かない。

とてもメンタルが強そうだって思った。


「えっと、どっちがいつきって人?」


私とカナを交互に見る。


「私‥…だけど」


「ふぅん」


言いながらじろじろと私を見る。


「あんたがあの小説を書いたってわけね」


「そうだけど?」


「なかなか良かったって思うわっ!」


「あ、ありがとう……」


かなり上から目線だったけど、嬉しいのは嬉しい。

なんてたってあの漫画を書いた人なんだし。


「でもなんか作品を書いた人ってイメージとは違うわね」


「そ、そうかな?」


あんたが言うなっ!

そんな言葉が喉から出かかった。

言わなかった私は偉いって思う。


「雰囲気的にはそっちの人が書いたってイメージだけどねっ!」


これは私も漫画を読んでカナをイメージしたからおあいこかなって思った。


「イラストを書いた方だよね? えっと名前は……」


「名前はカナだけど?」


徹底的に冷たい感じ。


「カナって確か……。あっ! 校庭に落書きした人ねっ!」


どうやらカナの過去をしてるみたい。

もっともここらへんでは知らない人の方が少ないらしいけど。


「ふぅん。先輩に言われて来てみたけどなかなか良さそうじゃない」


「先輩?」


「一美先輩。執事の漫画を書いた人。もう卒業していないけどね」


あの人って一美先輩って言うんだな。

もう会う機会もないけど覚えておこうって思った。


「ねぇ? 2人で漫画研究部に入らない?」


どうやら目的は勧誘みたい。

私とカナを見ながら言った。

なんだか予想外の言葉だった。


「嫌」


そしてカナは即答した。

しかも2文字で。

漢字だと1文字。


「天文部に愛着があるってわけね。でも今日はとりあえず来てみただけだからいいわ」


完全に拒否の言葉だったのに、アイコは自信満々な表情を崩さない。


「でも文化祭の部誌ではあんたたち2人に漫画を書いてもらうからねっ!」


それじゃっ!

そう言ってアイコは部室を出ていった。

どうやら私達を漫画研究部に入れて部誌に漫画を載せるのが目的みたい。

それなら漫画研究部の人たちで作ればいいのにって思う。

でもそこまで評価してくれるのは嬉しい。

もっともカナは……


「今度からはあれが入れないように鍵を閉めれるようにしたいねっ!」


アイコのことをあれって呼んでる……。

ほんの数分ぐらいのやり取りだった。

でもカナの中でアイコは嫌いなランキング1位になってるって思った。

ちなみに鍵を閉めれるようにっていうのは確か駄目だった記憶がある。


「同じクラスになったら最悪って思うな」


怒った後はため息をついた。

そういえば2年生になったらクラス替えもある。


「私も」


ってカナの言葉に同意した。

あんなに騒々しいのが近くにいたら大変そう。

しかもなんだかとても絡んできそうな気もするし。

目立つのは好きじゃないし、怖いって思う。

アイコは目立つのがとっても好きそうだなっていう感じだった、


「いっちゃんとは同じクラスになれますようにって祈ってるよっ!」


今度はぱっと明るい笑顔。


「私もだよ。カナと同じクラスが1番いいな」


究極的に言えばそれ以外は割りとどうでもいいかもしれない。


「流れ星に3回お願い事をすると願いが叶うんだよねっ!」


「うん。流れ星を見るのも3回言うのも大変だけどね」


でも、それで本当に願いが叶うなら頑張ろうって思えた。

カナと同じクラスになれますように。カナと同じクラスになれますように。カナと同じクラスになれますように。

私は心の中で3回言う練習をする。

これでいつ流れ星が見えても大丈夫なはず。

今日の夜からさっそく頑張ろう。

私はそう意気込む。

最大の敵は眠気かなって私は思った。

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