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文化祭が終わって2ヶ月。
季節は秋を通り過ぎて、すっかり冬になっている。
今日は11月27日。もうすぐ12月。
12月は天体観測に行く予定だからとっても楽しみな月だ。
12月の新月は残念ながら平日だけど……。
天体観測は学校が終わった後に行けば間に合う。
もしかしたら温泉に入るぐらいの時間はあるかもしれない。
でも次の日はもちろん学校。
さすがに休むってわけには行かないって思った。
だからその日のうちに帰ることになるから、ちょっとバタバタって感じになりそう。
それに運転をしてもらうお父さんが大変そうだって思った。
全然大丈夫だって言ってくれるだろうけど、だからこそ心配になる。
もっとも心配したところで甘えることには変わらない。
だからたくさんお礼とかしようって思った。
今の私にはそれぐらいしかできしないし。
それにだからこそとっても楽しい天体観測にしたいって思った。
……
…………
………………
「すっごく寒くなったね」
「そうだね」
私とカナはいつも通り学校へ向かう。
寒くなって吐く息が白い。
それに少し歩くペースが遅くなってる気がする。
寒いとゆっくり歩きたくなるからだと思う。
風が吹くととっても寒いけど、今日はそんなことない。
穏やかな冬の1日。
「いっちゃんは冬になって調子良さそうだね」
「うん。暑いのより寒い方がずっといいしね」
「わたしは冬はちょっと苦手だった」
「そうなんだね」
「わたしって肌が乾燥しやすい方だから……」
「なんか大変そうだね」
「いっちゃんは違うの?」
「私はそんなんでもないって思う。お母さんもだから似たのかもね」
「それは羨ましいねっ!」
カナは笑顔で言った。
この感じなら乾燥肌もそこまで深刻なものじゃないみたい。
「でも乾燥してる方が星が綺麗に見えるって聞いてから、冬が前より好きになった!」
「そう言ってくれると嬉しいな」
私が冬が好きなのも星が綺麗に見えるからだしね。
カナも同じみたいに考えてくれて嬉しく思った。
「天体観測の日もとっても寒くなりそうだね」
「うん。それに夜だから温かくしないと辛いかも」
「風邪ひかないようにしないとねっ!」
「でも寒い中に飲むココアはとっても美味しんだよ」
冷えた口の中に広がる甘い味と暖かな感触を思い出す。
暑い時に飲む冷えたジュースとは違う、まろやかな感じが好き。
「そういうの本当にいいよね。なんか風流があるって感じがする」
「季節を感じれるのも天体観測のいいところだからね」
「寒さを楽しむのも天体観測の醍醐味なんだねっ!」
「そうだね。そういうのも楽しめたらとってもいいって思う」
「天体観測のために何か覚えてきたことがいいとかあるかな?」
「星座を覚えておくといいかもしれないね」
「冬の大三角形みたいなの?」
「うん。冬の大三角形はこいぬ座のプロキオン、オリオン座のベテルギウス、おおいぬ座のシリウスの星をつないだ感じだね」
「そうなんだねっ! そういう星座があるって思ってた」
「私はシリウスが好きなんだ。綺麗に見える時は本当に凄いんだよ」
「星も綺麗に見える時とそうじゃない時があるんだねっ!」
「光だからやっぱり大気に影響されるんだよね」
「水蒸気があると見えにくいみたいな?」
「うん。それと同じ。光が屈折して色が変わっちゃんだよ」
「なんか色々あるんだね」
「でも最初はそういうの気にせず見るのがいいって思う」
「うんっ! そうするっ!」
なんだかカナとこういう会話をすると昔のことを思い出す。
私は本やインターネットで新しいことを知るたびに、お父さんやお母さんに話をしていた。
2人ともとても真剣に聞いてくれて、よく調べたねって褒めてくれた。
本当に子供だったんだなって思う。
でもとても心に残っている思い出。
今日のことも数年後にはいい思い出になってくれてると嬉しい。
カナもたまに思い出してくれると素敵だなって思った。
「カナにも好きな星ができるといいね」
私が言うとカナは笑顔で言ってくれた。
「うんっ! いっちゃんと同じぐらい、好きな星を見つけたいっ!」
……
…………
………………
放課後。
1人で部室にいた。
カナは生徒会室に行って、生徒会長とか会計の人と話をしてる。
今年の活動内容とか来年の予算についてとか、そんな感じのこと。
今の生徒会長から始めたことみたい。
きちんと活動しているところに、きちんと予算を出したい。
そんな風に考えてのことらしい。
でも部活は私達のような小さい同好会まで合わせたらけっこうな数になると思う。
1つ、1つ活動内容とかの話を聞いていく。
時間がかかりそうだし、とても大変なことのはず。
本当に凄い人なんだなって思った。
私も生徒会長に会いたいなーと軽く思ったけど、でもカナが行くって言った。
私は部室で新聞部に渡す原稿を書いた方がいいって。
確かにそれもそう。
締切はまだあるけど、余裕があるからってさぼったらあっという間に時間はなくなる。
それに生徒会長とかに天文部について話すのはカナの方が適任。
私が言ってもあんまり役に立たないって思う。
だから部室で留守番中。
なんだか気になって、原稿は全然かけてないけど。
私はちらりって感じで時計を見た。
カナが部室を出て30分ぐらい。
どれぐらいで帰ってくるのかな?
そう思っているとがちゃりと扉が開いた。
姿が見える前からカナだって分かった。
「ただいまっ!」
「おかえり」
カナは扉を閉めていつもの席に座る。
「どうだったの?」
「うーん。ぼちぼちってところかな」
「ぼちぼちかー」
「活動自体は褒めてくれたよ。生徒会長が部誌読んだって」
「本当にっ!」
思わず大きな声が出てしまった。
あの生徒会長が天文部の部誌を読んだなんて、何だか信じられない。
勝手に生徒会長は雲の上っていうか、住んでるところが違う人だって思ってたから。
「新聞部のも読んでるって言ってたしね」
「なんだか聞いてるとぼちぼちって感じじゃない気がする」
私的には生徒会長が読んでくれたってだけで大満足。
「部室はとりあえず来年も使っていいみたい。でも予算は……」
「もらえなかった?」
「うん。やっぱり同好会だし、人数も少ないのが厳しいって」
「そこらへんはしょうがないよね」
部室が使えるってだけでも感謝しないとって思う。
天文部なんて使おうと思えばいくらでも使っちゃう部活だし。
「部誌を出す時はまた印刷代はもらえるみたいだけどね」
「それだけでももらえれば十分かな」
部員の数を増やせば部費ももらえるんだろうけど。
でも今のままでいいかもしれないって思った。
カナもそう思ってるだろうしね。
「生徒会長と話したことはこれぐらいかな」
「お疲れ様」
「あんまり疲れてはないんだけどね」
って明るくカナは言う。
でも私なら緊張して、ちょっと話しただけで疲れてただろうって思う。
カナはどんな人相手でも緊張とかしなさそうな強さがある。
私とは大違い。
「とりあえず来年も部室使えるって分かったし、天体観測の話する?」
私がそう言うとカナはすっごく嬉しそうな顔をした。
もしかしなくても、私よりカナの方が天体観測を楽しみにしているみたい。
初めてならそうなっちゃうよねって思った。
私も初めて連れてって行ってもらった時はとっても嬉しくてわくわくしたから。
あの時の私と今のカナがきっと同じ気持ち。
「とっても楽しみそうだね」
「うんっ! 楽しみっ!」
カナが楽しみにしてくれることが、すごく嬉しく思えた。
きっとあの時のお父さんとお母さんは今の私みたいな感じだったって思う。
「生徒会長との話のこととか終わったから、なんだかもうすぐだって気持ちになったんだ」
「あとは天体観測の日まで何も用事とか行事ないもんね」
天体観測の後は期末テストがある。
聞いただけで憂鬱な気分になる行事。
新月の日が天体観測の前で本当によかったって思う。
「それでねっ! 今度行く天体観測で今日考えたことがあるんだけどっ!」
「考えたことって?」
私は言うとカナはとっても嬉しそうに言った。
「天体観測をするところまで2人で行くのはどうかな?」




