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ある日の出来事。
1人でお弁当を食べていた。
部室には誰もいなくて何だか凄く静か。
よくあるってわけじゃないけど。
たまにこういう日だってあるよね。
電話で誰かに一緒に食べようってお願いしたら。
きっと部室まで来てくれるだろうって分かってる。
でも、やっぱり。
私は何だか1人で考えたい気持ちだったから。
1人でお弁当を食べようって思った。
もう11月も半分をちょっと過ぎたぐらい。
だから窓から入ってくる風も寒く感じる。
何だかその寒さもちょうどいい気がした。
私はもぐもぐって卵焼きを食べる。
ぐるぐるって4人の顔が浮かんでは消えていく。
私は、まだ。
あの日の答えを出せないでいる。
みんなに告白してもらえたあの日。
何だか自分の妄想とかに思えて。
思い出すと凄くふわふわとした気持ちになっちゃうけど。
ちゃんと現実なんだから。
しっかり考えないとって思う。
みんなは待っててくれるって言ってくれた。
でも、いつまでも宙ぶらりんのままでいるのも駄目だって思う。
あの日からずっと。
私達はいつもの日常を暮らしている。
カナと一緒に学校へ行く。
たまこにお弁当を作ってもらう。
アイコとお喋りをする。
ナツミと長電話をする。
びっくりするぐらい変わらない日々は。
みんながそうしようって守ってできてるもの。
だから私が誰か1人を選んだとしても。
そんな日々がずっと同じように続いていく。
少なくとも卒業の日までは。
みんなそのことが分かってるから。
私に告白できたと思う。
私も真剣に考えることができる。
去年に大変なことがあった。
だかららこそ、みんながみんなを信じれるって思う。
風の音が聞こえる。
もうすぐ12月。
12月になったらあっという間に冬休み。
3学期になったらあんまり学校に来なくなる。
だから……。
12月になる前にちゃんと決めないといけないよねって。
私は思った。
……
…………
………………
ある日の出来事。
放課後。
廊下でばったりって感じで藍姫とお喋りをした。
放課後のこの時間に聞こえるのは。
一所懸命に部活を頑張ってる声。
そんな声を聴くのはやっぱり好き。
「藍姫はやっぱり知ってたんだよね?」
私はグラウンドを見ながら言った。
グラウンドにはたくさんの人がいて。
もうすぐ冬だけど、たくさんの汗を流している。
みんなが私に告白したって藍姫は知ってる。
藍姫はカナ以外の3人と仲良くしてるから。
色々と勘づくところがあったんだって思う。
もしかしたら誰かに聞いたのかもしれないけど。
「アイコが私のことを好きだって」
「そりゃね」
言いながら藍姫は笑った。
最近、新調したっていう眼鏡。
赤くて細いフレームが何だかおしゃれ。
「私がアイコに告白したじゃない?」
「うん」
去年の夏休みのこと。
ずっと前のこと。
だけど、はっきりと覚えている。
「あの時に聞いた」
「そうなんだね」
でも……。
私は思い出しながら言う。
「アイコの好きな人って誰か知らないって言ってなかった?」
「言えるわけ無いでしょ」
「……それはそうだね」
「まぁアイコに聞く前からなんとなく分かってたけどね」
「そうなの?」
「あのアイコが自分から声をかけるなんてねって」
言いながら。
外を見ながら。
藍姫はため息をついた。
「でもいいですねー」
今度は意地悪そうな表情。
「いつきさんはモテモテで」
「茶化さないでよ」
今度は私がため息をつく番だった。
「とっても真剣に考えてるんだから」
「真剣に考えるぐらいいいじゃない」
藍姫の視線が私に戻る。
にこやかに微笑んでるけど。
何だかちょっと怖いような気もした。
「誰を1番好きかって悩めるのは贅沢なことだよ」
「……そうだけどね」
「みんな可愛くていい子だからね」
「うん」
「私的にはナツミさんを押すけどね」
「ナツミ?」
「可愛くて明るくてアニメ好きでコスプレもしてくれておっぱいも大きいって最高じゃないっ!」
……何だか興奮気味。
そういえば最近凄く仲良しだよね……。
それに……。
「おっぱいは関係あるの?」
「おおありに決まってるでしょっ!」
興奮気味に詰め寄ってくる藍姫。
「私もナツミさんに告白されたいっ!」
「藍姫だからアイコだって言うと思ったんだけど」
「私はまだアイコのことが好きだからね」
「……そうだよね」
「振られたアイコにもう一度告白してやろうとか思ってないから」
「思ってるんだ」
「しょうがないじゃない。にんげんだもの」
「そうだよね」
駄目だったから次の人。
って言うわけにいかないのが難しい。
「でも告白して振られた人間から言うとね」
「うん」
「やっぱり告白してよかったって思う」
「うん」
「それは4人だって同じだと思う」
「そうだといいんだけどね」
「そうに決まってるでしょ」
とても自信満々な声。
藍姫だから……。
愛の告白をした人だから分かることなのかも。
「振られたからって告白した事実がなくなるわけじゃない」
「振られたからって好きだったって感情が嘘になるわけじゃない」
「振られたからってこれまでの、これからの関係がなくなるわけじゃない」
「だからいつきは真剣に考えて答えを出せばいいと思うよ」
「それがみんなのためになるから?」
「そういうこと」
藍姫はにっこりと微笑む。
今度は怖さとか全然ない。
ほっとするような笑顔。
そんな笑顔で藍姫は言った。
「まぁせいぜいたくさん幸せに悩むことね」
……
…………
………………
ある日の出来事。
「本当に楽しみだねっ!」
「ですねっ!」
「何だか中途半端な日付ね」
「その日がちょうどいいだよねっ!」
「新月だから星も綺麗に見えるって思う」
お昼休み。
今日はみんなで集まって。
12月に行く天体観測のことを話してた。
行くのは1年生の時に。
カナと一緒に行った星野村。
あの時は凄く綺麗に星が見えたから。
また行きたいなって思ってた。
だから、今度はみんなと行けるのはとっても嬉しい。
「ただやっぱり天気が心配だけどね」
ちょっと先のことだから。
天気がどうなるかとかはやっぱり分からない。
「もしその日がほぼ雨だったら……」
ナツミはサンドイッチを食べながら言った。
他のみんなは食べ終わってるけど。
ナツミは少し遅れてきたからちょうど食べてるところ。
「その時は延期するの?」
「うん。そうだね」
雨が降ってたらプラネタリウムを見ることもできるけど。
やっぱり日付をずらして本物の星を見たいよね。
ベストじゃなくてもベターな日付ならばっちり星も見えるから。
「でもその日がいい天気になるといいですねっ!」
「そうだね」
たまこの言葉に。
カナは笑顔を浮かべて返事をする。
「でもきっと大丈夫だって思うよ」
「何だか随分と自信がある感じがするわね」
「うん。てるてる坊主だってちゃんと作るしね」
「てるてる坊主って……」
「たまこも作りますよっ!」
「あたしも作るよっ!」
「……いっきも?」
「そうだね」
みんなでてるてる坊主を作るのは楽しそう。
それに……。
家で作るのもいい気晴らしになりそうだなって思った。
「……それならアタシも作らないといけないじゃない」
「別に作らないとってわけでもないと思うけど」
「雨が降ってアタシのせいにされても困るからねっ!」
「別に誰もそんなこと思わないと思うけどな」
って言うけど。
何だかその気持は分かるような気がする。
「みんなでてるてる坊主を作ればきっと晴れますよっ!」
たまこは凄く嬉しそう。
とってもにこにこしながら言ってる。
それだけ楽しみにしてくれてるんだなって。
私も凄く嬉しい気分になる。
「あたしはみんなでお出かけってだけで楽しみっ!」
「また電車で行くんだよね?」
「うん。電車がいいかなって思ってる」
「電車っ!」
ぴょんって飛び跳ねながらたまこが言う。
「たまこは電車乗るのも好きですっ!」
「よく電車に乗るの?」
「家族でお出かけする時に乗ったりしますっ!」
「家族でお出かけっていいわね」
「アイコさんの家はあんまり行かないんですか?」
「全然行かないわね。だってびん……」
そこでアイコは言葉を止める。
そして嬉しそうに笑った。
「結局こういうのも言い訳してたってことよね」
「よく分かんないんだけど」
「受験が終わったら親を誘ってどこかに行こうってこと」
「それは凄くいいことだって思いますっ!」
私もそう思う。
きっとあのお母さんも喜ぶだろうなって。。
「どうせならお泊まりもしたいよねっ!」
ナツミはカナとタブレットを見てる。
タブレットはナツミが最近買ったもの。
アニメを見るのにとっても便利って言ってた。
「星野村にも泊まるところあるみたいだしっ!」
「お泊りもいいですねっ!」
またぴょんって感じで。
たまこは飛び跳ねながら言う。
「あんた今日はやたらテンション高いわね」
「だって楽しみですからっ!」
「アイコさんもテンション高くすればいいのに」
「テンション上げるにはさすがに日付が遠すぎるわよ」
「それじゃ近づけば見れるってことかな」
「カナは余計なこと言わなくていいから」
「テンションが高いアイコさんも見てみたいなって思って」
「逆にアタシはテンションが高いカナを見てみたいわ」
「テンションが高いカナさんはよく見ると思うんだけど」
「いっきに関することはね」
みんなが楽しそうにおしゃべりをしてる。
みんなが話してるのを見たり聞いたりするのは楽しい。
凄く幸せな気分になれる。
「いつきっ! またぼーってしてるねっ!」
「あ……。ごめん。考え事してた」
「いっちゃんはそういうところが可愛いからねっ!」
「ですっ!」
「あたしはもう少ししゃっきとしてくれた方がいいかなっ!」
「アタシもどっちかというとそんな感じね」
私は……。
もう少し大人っぽくなりたいなって思う。
大学生になったら大人になれるかなって思うけど。
きっとこのままなんだろうなっていう。
何だか嫌な予感もあった。
「とりあえず第一候補の日付をスケジュールに入れとくねっ!」
タブレットを操作するナツミ。
それを合図にみんなスマートフォンとかを操作する。
私もみんなと一緒に。
スマートフォンで天体観測の予定をスケジュールに入れた。
とっても大事なことだから。
ちゃんと大事って分かるマークをつけて。
「これで後はてるてる坊主を作りながら待ってるだけだねっ!」
「アタシ達は受験勉強もあるのを忘れずに」
「忘れてないけどね」
しっかりと勉強してるし、この前はA判定も取れた。
たまに美香に教えてもらえてるのが大きいかなって思う。
美香は言葉は乱暴だけど。
意外にも教えるのがとっても上手だった。
それに分かってたけど。
美香って凄く面倒見がいいよねって思う。
「それにっ! あっちの方も……」
ナツミが何かを言いかけてすぐにやめた。
あっちの方って言葉が何を指してるのか。
ここにいるみんなが分かってるって思う。
「大丈夫だよ。しっかり考えてるからね」
でも、今言えるのは本当にそれだけ。
待つ人の気持ちは私には分からない。
だけど、急いで、あせって答えを出しても駄目だって思う。
だから私はお願いするしかできないよね。
「だからもうちょっとだけ待っててね」
って。
……
…………
………………
ある日の出来事。
「お母さんはね」
「うん」
「お父さんを選んだんだよね」
「そうね。たくさんの人の中でお父さんと結婚したわ」
「……お父さんが1番だったの」
「当たり前じゃない」
「お父さんは優しいもんね」
「それだけじゃないわ」
「そうなの?」
「優しいだけの人なんて世の中にはいくらでもいるわ」
「そうかな?」
「そういうものよ」
「じゃあ何でお父さんを?」
「お父さんとなら自分が自分でいられるって思ったからよ」
「ありのままってこと?」
「ありのままというのも少し違う気がするわね」
「それなら自然体っこと?」
「そっちの方が近い気がするわ」
「お父さんとお母さんは幼馴染なんだよね」
「そうよ。といっても中学卒業してからはしばらく合わなかったわ」
「お母さん、不良だったから?」
「そうそう。お父さんは凄く頭が良かったからね」
「よく再会できたね」
「そう決まってたんだわ」
「運命の人みたいな?」
「そんな感じかな」
「運命の人と結婚ってなんかいいよね」
「いっちゃん、悩んでるでしょ」
「ちょっとね」
「そこで見栄をはるのが悪いとこだと思うわ」
「……とても悩んでる」
「悩んで出した答えなら絶対にそれが正解だわ」
「そうかな?」
「だからたくさん悩みなさい」
「うん。でも……私もお母さんとお父さんさんみたいになれるかな?」
「なれるわよ。忘れなければ」
「忘れなければって何を?」
「隣にいる人が自分の運命の人だってことを」
……
…………
………………
ある日の出来事。
私はスマートフォンを持っていた。
電話をしようと思っていた。
心臓が凄くばくばくって動いていて。
何だか頭がクラクラしそうな感じ。
私は今日、告白の返事をする。
明日から12月。
今日誰かに電話をするって。
その人が私の恋人になる人だって。
みんなには伝えてある。
きっとみんなも。
私と同じような気持ちでいるんだろうな。
電話をする相手はもう決めてる。
凄く悩んで、悩んで、悩んで、決めた。
どうしてその人にしたのか。
そう追求されると凄く難しい。
だけど私はみんなの中から1人を選んだ。
それは凄く残酷なことかもしれないけど。
そう決めることが大事だって。
考えてるうちに分かったような気がした。
私はゆっくりとスマートフォンを操作する。
あとボタンを押せば。
私に人生初めての恋人ができる。
何年後でもその人が運命の人だって忘れない。
ずっとずっとその人が隣にいて欲しいから。
私は電話をかけた。
すぐにその人の声が聞こえた。
きっと握りしめて待っててくれてたって分かる。
スマートフォンから聞こえる声は。
泣いてるような、喜んでいるような、そんな声だった。
宇宙人の私に、地球人の恋人ができる。
あんなに怖いって思ってた地球人と恋人になれる。
少し前の私には信じられないこと。
でも、本当はそんなことは関係ないのかもしれない。
私が好きで、私を好きだって言ってくれる。
それがとっても大事なことで。
宇宙人とか地球人とか、そういうのは些細な問題。
だから私は生まれて始めて告白をした。
「大好きです。ずっとずっと隣にいてください」
そして聞こえた返事の言葉や声を。
私はずっとずっとずっと忘れないって思った。




