↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
156/156

最終話

今日の天気予報はばっちり晴れ。

スマートフォンで天気予報をずっと見てたから。

見ながらにやにやってしてたから。

お母さんにおかしいって笑われた。

でもあんまり気にならない。

だって今日はみんなで天体観測に行く日だから。

今日がばっちり晴れるのはが凄く嬉しくて。

大抵のことなら許せちゃうって思う。


「もう準備できてるの?」


お母さんの声。

今日はヨーグルトを食べてるみたい。

お父さんの知り合いからもらった少し高いもの。

私はまだ食べてないから。

全部お母さんが食べてしまわないかちょっと心配。


「まだ待ち合わせの時間には凄く余裕あるでしょ?」


「そうだね」


私は時計を見る。

今の時間は8時をちょっと過ぎたくらい。

待ち合わせの時間は10時30分だから。

あと2時間ぐらいは余裕がある。


「でも凄く楽しみだったからね」


わくわくであんまり眠れなかったぐらい。

いつものことだけどね。



「勉強に天体観測に……デートに」


お母さんは凄く嬉しそうな表情。

特に最後の言葉に力を込めてる感じだった。


「本当にいっちゃんの高校生活は充実してるわね」


「うん。自分でもびっくりするぐらい」


11月30日に私は初めての恋人ができた。

そして2回、デートをした。

デートって言っても。

買い物をしたり、映画を見たり、水族館に行ったりって。

今までやってたことと変わらないことだけど。

隣にいるのが恋人っていうだけで。

何だか見えてる景色やふれて感じるものが違うから。

不思議だなって思う。

今はそれだけで凄くどきどきできて。

それ以上のことは高校を卒業してからって約束してる。

それに恋人ができたからって。

いつもの日常が変わるってわけじゃない。

それまで通りに高校生活を送ってるし。

昼休みにはみんなで部室でお弁当を食べたりしてる。

私達が恋人同士なのは秘密にしようねって。

そう約束してるのもあるかもしれない。

高校を卒業したらみんなに言うつもりだけど。

なぜかお母さんにはもうバレてる。

お母さんには告白されたことも何も言ってないのに。

この前ずばり言い当てられて本当に心臓が止まるかと思った。

そういうのは母親の勘なのかな?

それともお母さんが凄いのかな?

もしかしたら私が単純で分かりやすいだけで。

もうみんなにばればれだけど。

みんなが気を使ってくれてるのかもしれないけど。

それならそれで嬉しいよねって思う。


「だから本当にねこじょで良かったなって思ってる」


「そのねこじょ生活ももう少しで終わるから楽しみなさいよ」


「今日も楽しんでくるよ」


「お土産よろしくね」


「うん。お小遣いももらっちゃったしね」


私は時計を見る。

あんまり時間は経過してないから。

まだまだ余裕はあるよねって思う。

いつも通り早めに出るとしても。

もうちょっと家で時間を使わないといけないよねって思う。


「時間までちょっと勉強してるね」


「今日ぐらい勉強休めばいいのに」


「勉強してる方が気が楽になるんだよね」


きっと、絶対。

今が人生で1番勉強してるよねって思う。

受験が終わっちゃったら。

今みたいに勉強は絶対にしないって分かってる。


「勉強に熱中して待ち合わせ時間に遅れないようにね」


「そこまで集中できないだろうから大丈夫だよ」


勉強するって言っても。

英単帳をめくって覚えるぐらいだって思う。

それに、結局。

待ち合わせよりずっと早い時間に家を出ちゃうよねって。

そして待ち合わせ場所でぼんやりしてるっていう。

そんな感じの。

いつものパターンになりそうって思った。


……

…………

………………


ちょっとだけ勉強をして。

忘れ物がなにか最後の確認をした後に。

私は家を出て目的地へ向かった。

外はやっぱり少し寒いけど。

まだ寒いねって笑いあえぐらいの寒さ。

見上げる空は綺麗な青空が広がっていて。

これなら星野村でも綺麗な星空が見えそうって思えた。

歩く道のりはとっても気分が良くて。

今日はずっとこんな感じなんだろうなって凄くわくわくする。

そんな感じで待ち合わせ場所についたけれど……


「おはようございますっ!」


「おはよう。早かったね」


「さっきついたところですっ!」


ぴょんって飛び跳ねる感じで。

いつもの可愛い笑顔でたまこは言った。

今は待ち合わせ時間の20分前ぐらい。

てっきり私が最初に着くかなって思ってたけど。

そうじゃなかったみたい。

何だか凄く前からいたみたいな雰囲気もあるけど。

そんなことはもちろん聞けないよねって思う。

たまこは大事そうに大きなバッグを持っている。

きっとあれは……。

って見てたら。


「あっ! これが今日のお弁当ですっ!」


私が見てるのに気がついたんだろうって思う。

たまこはバッグを前に差し出しながら言った。


「5人分のお弁当だから張り切って作っちゃいましたっ!」


「本当にありがとね」


お昼ご飯はたまこが作ったお弁当。

大きな池の近くでお弁当が食べれるみたいだから。

そこでみんなで食べる予定。


「本当にすっごく楽しみ」


「お口に合えば嬉しいですっ!」


「合うに決まってるよ」


だってたまこが作ったお弁当だから。

すっごく美味しいに決まってるよね。


「たまこはカナさんのお菓子が楽しみですっ!」


「うん。そっちも楽しみだよね」


たまこのお弁当とカナのお菓子。

何だか想像しただけでお腹が空いてくる。

でも……。

星野村に着くまでちゃんと我慢しないと、だよね。


「でも1番楽しみなのはやっぱり星空ですっ!」


笑顔で空を見上げるたまこ。

今はまだ星は見えない空だけど。

きっとたまこの想像にはたくさんの星があるんだろうなって思う。


「早くみんなで見たいですっ!」


「うん。そうだよね」


もうすぐみんながここに来る。

みんなで美味しいお弁当やお菓子を食べて。

みんなでたくさん遊んで。

みんなでとっても綺麗な星空を見る。

これ以上は思いつかないってぐらいに。

素敵な1日だよねって思う。


「ナツミさんですっ!」


大きく手を振りながら。

明るい笑顔でたまこは言う。

きっと、ナツミも。

とびっきりの笑顔で走ってきてるんだろうなって分かった。


……

…………

………………


聞こえる電車の音は何だか心地良い。

私達は普通電車に乗ってとりあえず羽犬塚駅へ向かう。

よく駅に停まって。

ゆったりとした移動だけど。

同じ車両には誰もいなくて。

のんびりとお喋りできるから全然退屈にならない。


「学校行事以外でこんなに遠くまで来たのは久しぶりだわっ!」


窓の景色を見ながらアイコは言う。

何だか珍しく興奮してるみたい。

目が凄くキラキラしてるしね。

何だかいつもよりお喋りな気もする。


「たまこも久しぶりに電車に乗れて嬉しいですっ!」


「地下鉄には乗るけど電車はあんまり乗らないよね」


カナはいつものにこやかな感じ。


「駅で降りてバス移動なんだよね?」


ナツミも思ったよりはしゃいでなくて。

ゆったりとした雰囲気で楽しんでるみたい。


「うん。そうだよ」


って私は言った。

1年生の時に行った天体観測を思い出しながら。


「バスに乗って40分ぐらいだったかな?」


「もっと遠かった気もするっ!」


「そんなに遠いんだねっ!」


「うんっ! いつ着くだろうって不安になったよねっ!」


「そうだね」


話しながら。

もう2年も前のことなんだねって。

とってもびっくりしてしまう。

あの時の私は。

2年後なんて凄く遠い未来に思ってたのにね。


「途中で何もないところをずっと走ったよね」


「うんっ! 本当に着くのかなって思ってたっ!」


「何だか聞いてて怖くなってきた……」


「アタシはむしろわくわくしてきたわっ!」


「たまこは着いたら池の鯉に餌をあげたいですっ!」


「そんなのあるんだね」


「はいっ!」


「調べたらキャンプ施設もあるみたいだわ」


「キャンプっ!」


そう大きな声を出したのはやっぱりナツミ。

キャンプとかバーベキューとか好きそうだもんね。


「みんなでやりたいねっ!」


「そうだね。すっごく楽しいと思う」


「たまこはみんなでお料理したいですっ!」


「いっきが料理するのは怖いんだけど」


「私は食べる係だからね」


「だねっ! いっちゃんのためにみんなで美味しいご飯を作るよっ!」


「たまこもはりきって作りますっ!」


「アタシはそこまで甘やかすつもりはないわっ!」


「私に料理させたいのかさせたくないのかどっちなのよ」


「両方だわっ!」


「意味が分からないんだけど……」


「でも本当にみんなでキャンプしたいよねっ!」


「アタシはテントよりロッジとかの方がいいわ」


「どうせならテントの方が楽しいよっ!」


「アタシは快適さを重視するタイプだから」


「ロッジならみんなで同じ部屋に泊まれるのはいいよね」


「ですねっ!」


「泊まりならずっと天体観測のがいいよね」


言いながら私は想像する。

みんなで料理を作って。

みんなで天体観測をして。

みんなでお泊りもする。

何だか考えただけでわくわくする。


「うん。絶対にそういうのしたいよね」


「来年の夏とかいいと思う」


「来年?」


「そう。学校がバラバラになるからこうやって集まるのも難しくなると思うわ」


「だから今のうちに決めとこうってことですねっ!」


「わたしも凄くいいと思うっ!」


「だねっ!」


「うん。またみんなで行けるなら凄く嬉しい」


今日は時間があると思うから。

ロッジとかキャンプ場も見ておくのもいいかもねって思った。

来年の夏休み。

みんな変わってるんだろうなって思うけど。

今からは全然想像できなくて何だか楽しみ。


「もっとも大事なのは来年のことより今だけどっ!」


「来年に行こうって言ったのはアイコじゃない」


「それはそれ。これはこれ」


「あたし達はまだ星野村に行ったことないんだしねっ!」


「早く鯉に餌をあげたいですっ!」


「鯉って何を食べるの?」


「何でも食べますっ!」


「恋愛の恋と同じだねっ!」


「意味が分からないんだけど……」


楽しいお喋りが響く電車。

ゆっくりだけど、着実に。

電車は星野村の方に走ってる。

今はみんな来年のことじゃなくて。

今日の話をしてる。

着いたら何をしようとか、そういうの。

私もそれに加わって思う。

今日は凄く楽しい時間。

でも楽しい時間は、って……。


……

…………

………………


……やっぱり。

楽しい時間はあっという間に過ぎて。

すっかり夜の時間になったから。

私達は星が1番よく見える場所に移動中。


「まだつかないのっ!」


聞こえるアイコの声。

私達はみんなで手をつないで歩いていた。

私とカナだけはちゃんと目を開けて。

他の3人には目をつぶってもらってる。

あの時のカナみたいに。


「目をつぶって歩くって怖いんだけどっ!」


「本当にもうすぐだから我慢して」


「たまこはドキドキして楽しいですっ!」


「わたしもっ!」


「そのドキドキは恐怖のドキドキだわっ!」


「アイコ、うるさいんだけど」


「しょうがないじゃないっ!」


「目を開けたら素敵なものが見えるから我慢してね」


ひゅんって風が吹いた。

冬の風は寒くて。

みんなの体が震えるのが伝わってくる。

その伝わりが私達の絆みたいで。

何だか凄く嬉しく思えた。


「ここだよね?」


ってカナは小さく言う。


「うん。ここだったよ」


ここがあの時に。

カナと2人で夜空を見た場所。

そして、今日は。

みんなで夜空を見るところ。

私もカナも地面を見てる。

夜空はみんな一緒に見たいから。


「ついたけどまだ見ないでね」


私は言った。

見なくてもみんなが頷くのが分かった。

それを確認して私は。

ゆっくりとカウントダウンをする。

そして……。

私達は夜空を見た。

空を包み込むように星は輝いていて。

たくさんの星達の引力で。

どこまでも吸い込まれてしまいそうな気分。

やっぱり私は何も言えずに。

ただ黙って夜空を見上げることしかできなかった。

それは、みんなも同じ。

みんなが同じ夜空を見て……。

この夜空を見るために。

みんなでここにいるために。

本当に色々なことがあったよねって。

溢れる涙が止まらなかった。

みんなで同じ夜空を見てる。

そのことが嬉しくて、嬉しくて。

私は間違えて地球に生まれた。

だから私は人を信じることができなくて。

たくさんの悪夢を見て、何度も死にたいって思った。

でも……そんな私をずっと苦しめてきたことさえ。

今はこの瞬間のためだって分かる気がする。

宇宙は広い。

みんなが想像しているよりずっとずっと広い。

そして……。

私が想像してるよりずっとずっとずっと広い。

そんなとてつもなく広い宇宙の中で。

私達は出会うことができた。

こうやって同じ夜空を見ることができた。

それは凄く奇跡的なことだって分かる。

でも、宇宙は。

どんな奇跡だって叶えてくれる場所。

だから……。

私達がこうやって夜空を見てるのも必然なのかもしれない。

そう思いたい。

来年もその次も。

十年後も二十年後もずっとずっとその先も。

ここで、みんなで。

今日と同じ夜空を見たいって。

見なきゃいけないって思った。

あの時みんなここにいたよねって。

笑いあうために。

だから私は生きていく。

この地球で生きていく。

もう絶対に。

間違えて地球に生まれたなんて思わない。

だって、私は。

この地球が大好きだから。

この世界が大好きだから。

みんなのことが大好きだから。

だから、私は伝えたい。

これまで会った人達に。

これから会う人達に。

もしかしたら会うことができない人達に。

全ての人に伝えたい。

夜空は全てをつなぐ。

過去も未来も場所も全てをつなぐ。

だから私は夜空に思いを乗せる。

みんなに伝わるように願う。

昔の私のように。

自分はひとりぼっちだって思う人のために。

あなたは1人じゃないよって。

あなたが見ている夜空を。

私もちゃんと見ているよって。

伝えたいから。

これからもずっとずっと夜空を見て思い続ける。

私はここにいる、って。

約1年間の更新でした。

大量にある誤字脱字などを修正してノベルゲームにします。

おまけシナリオもかければいいなーと思います。

完成したらどうかよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。