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とっても静かだった。
部室には予想してた4人がいて。
みんな黙って、真剣な表情で。
私が来るのを待ってたみたい。
いつも部室にいるはずの1年生の姿はなかった。
多分、カナが部室を使わせて欲しいって頼んだんだって思う。
大事な話をしたいなら。
誰かが来るってことがない部室が1番いいよね。
「今日はいきなり呼んじゃってごめんね」
そう言ったのはカナ。
笑みを浮かべて私に言うのは。
私をリラックスさせたかったからだと思う。
「大事な話があるんだよね?」
だから私も。
みんなに笑みを見せながら言う。
「それならいくらだって時間を作るよ」
笑みのおかげかも。
部室の空気が少しだけ柔らかくなる。
「それでどんな話なの?」
「それは……」
カナはちらりと3人の顔を見る。
もしかしたら言いづらいことなのかも。
「えっとねっ!」
ナツミが一歩前に出る。
意を決したような。
そんな表情だった。
「あたし達ねっっ! その……つきに……」
でも……。
そこで言葉は止まる。
顔を赤くして。
口を開けたまま。
何だか固まっちゃたような。
そんな雰囲気だった。
「どうかしたの?」
やっぱりみんな何だか変。
こそこそしたり、恥ずかしがったり、黙ったり。
これじゃまるで……。
「私に愛の告白でもするつもりなの?」
冗談で言ったつもりだった。
すぐに否定されると思った。
そんなわけないでしょ……って。
それから本当の話が始まるんだって思った。
けど……。
みんな凄く驚いた表情を見せて……。
ううん、アイコだけいつもの意地悪そうな笑顔だった。
「いっきって本当に鈍感で鋭いわね」
そして嬉しそうに言った。
「鈍感で鋭いって……矛盾してると思うんだけど」
「だってアタシ達、今からいっきに告白しようと思ってるんだから」
「告白……」
今度は私がびっくりする番だったし。
アイコの言う鈍感で鋭いって意味がはっきりと分かった。
「それって……本当なの?」
分かってた。
みんながそんな嘘をつかないってことぐらい・
でも、思わず。
私はみんなに言った。
「みんなが私に告白するって……」
「本当ですっ!」
そう言ったのはたまこだった。
恥ずかしそうだけど。
とっても堂々とした感じに見えた。
「たまこ達はみんないっくんのことが……」
続く言葉は誰でも分かったって思う。
でも……。
たまこが言う前にナツミが慌ててたまこの口に手を当てる。
たまこはちょっと苦しそうにもがいた。
「たまちゃん、ちょっと声が大きいかも」
確かにそうだよねって思う。
あんな大きな声だと廊下に聞こえちゃうよねって。
「それに今本当に告白するのはルール違反でしょ」
ため息をつきながらアイコは言う。
「ルールって?」
「4人で作ったルールのことだよっ!」
カナは相変わらず笑顔。
「それじゃいっきが分からないでしょ」
「うん。そうだね」
みんなが私に告白する。
そう言われて、本当だって思うけど。
何だかいきなりのことだったし。
4人同時にっていうのも不思議だなって思うし。
まだうまく状況を判断できてないから。
何だかドキドキとかは全然なくて。
何だか変な感じっていう方が大きいなって思った。
「だから教えて欲しいな」
「分かったわ」
そして私は話を聞いた。
みんなが私のことを恋愛的な意味で好きだということ。
そのことをお泊り会の時に確かめあったこと。
その時は最低卒業まではみんな告白しないで置こうって決めたこと。
それはみんな仲良く過ごしたいから。
でも……。
9月に私が告白されて状況が変わった。
その時は私が告白を断ったけど。
また違う人に告白されて私が誰かと恋人になったら。
もし4人の誰かが告白しても断られると思った。
告白する前にチャンスもなくなるのは嫌だとみんな思ったこと。
でも抜け駆けされるのもするのも嫌。
だから今日、こうやって。
みんな同時に告白する日を作ったこと。
私には恋人になる誰か1人を選ぶか。
それか誰も選ばないかを選択して欲しい。
それがお願いだった。
恋人の人とは休日とかにデートして。
学校の中とかは何時も通りみんな仲良くしたいって。
みんな真剣な表情で説明してくれた。
話す説明とか話す順番とか。
ちゃんと決めてたみたい。
もしかしたら練習もしたのかもしれない。
だから……。
私はみんなが本当に真剣だって分かった。
「でもいっきの返事はいつでもいいわ」
補足するようにアイコは言う。
「いきなりのことだしいっきは悩むって思うから」
「うん。そうなると思う」
例えば……とっても卑怯だと思うけど。
誰か1人に告白されたなら。
きっとその人と恋人になってたと思う。
私はみんなが大好きだから。
それはあんまり悩まなかったと分かる。
そして……。
もし違う人に告白されたら。
もう恋人がいるからって断ると思う。
そういうのが嫌だから。
みんな同時に告白することにしたんだって分かる。
だからなのかって分かった。
あの時、アイコが謝ったのは。
「ほとんど自己満足だよ」
呟くようにカナは言った。
「いっちゃんは私達に告白してくれた」
「うん」
「だからわたし達も自分の気持をいっちゃんに伝えたい」
きっと、みんな。
言えないって気持ちを抱えてて苦しかったんだって思う。
私がそうだったから。
その気持は凄く分かった。
「だからねっ! 今からみんな1人ずついつきに告白していくんだっ!」
ナツミの顔は凄く赤い。
ナツミはモテそうだけど。
告白されたことは何度もありそうだけど。
自分がするのは初めてなのかも。
「みんな廊下に出てねっ! 1人ずつ部室に来て……」
「告白してくれるんだね」
「うんっ!」
決心したような声。
真っ直ぐな眼差しを感じた。
それはみんな一緒。
みんなが真剣な目で私を見てくれてる。
私は今までみんなの気持ちに気づいてなかった。
本当に恋人になりたいって思っててくれてたなんて。
少しも気づいてなかった。
私の今までの言動とかを思い返すと。
本当に酷いよねって思う。
だからこそ……。
今日はみんなの気持ちをちゃんと受け止めないとって思う。
みんなは。
私が宇宙人だってことを受け止めて。
私という存在を正面から受け入れてくれたんだから。
今日は絶対に目を逸らしちゃいけないし。
真剣に考えて答えを出さないといけないって分かった。
「たまこ達は部室を出ますから待っててくださいねっ!」
「うん。待ってるね」
状況とかが理解できて。
何だかドキドキしてきた。
これからみんなから告白されるんだって。
どんな言葉を言ってくれるんだろうって。
何だかちょっと浮かれちゃってる。
みんなは静かに部室を出て、扉を閉まった。
急に部室が静かになった気がした。
誰から来るんだろう……。
そう思ってると扉が開いた。
「順番を決めてなかったから少し待っててっ!」
カナが慌てて言って。
またすぐに扉が閉まった。
そんな大事なことを決めてなかったんだ……。
あれだけ説明とかきっちりしてたのに。
大事なところが抜けてるのが何だかおかしくて。
多分、私でもそうなっちゃうよねって思った。
きっと、今頃は。
誰が最初とか一所懸命に話してるんだろうって思う。
私はみんなの姿を楽しく想像しながら。
最初の人が入ってくるのを待っていた。
……
…………
……………
みんなが部室を出て5分ぐらい。
まだかなって。
誰が最初だろうって。
思いながら待っていたら。
「お待たせっ!」
扉を開けて勢いよくナツミが入ってきた。
元気よくっていうよりは。
どちらかというと恥ずかしさとかを誤魔化してる感じ。
そういう雰囲気って表情とかで分かった。
「最初はナツミなんだね」
なんだかほっとしたような。
しなかったような。
予想してた通りのような。
そうでもないような。
なんだかふわふわって感じの変な気分。
きっと。
今からみんなに告白してもらえるんだっていう。
そんな状況だからだって思う。
「じゃんけんで決めたの?」
「くじ引きだったよっ!」
「そうなんだね」
「アイコさんがじゃんけんは苦手だからって」
「じゃんけんに苦手も何もない気がするんだけど……」
「そ、そうじゃなくてっ!」
ナツミが慌てるように言う。
「今はそんな話をしてる場合じゃなくてっ!」
「そうだったね」
「そうだよっ!」
そう言った後に。
ナツミはすっと大きく息を吸った。
そして……。
ナツミは言った。
「あたしはいつきの事が好きですっ!」
人生で2度め目の告白。
まさかナツミからって思う。
だって……。
ナツミは入学した時からずっと。
あんな風に世界を好きになれたらいいなって。
私が憧れてた人なんだから。
「だか恋人になってくださいっ!」
凄くシンプルで。
とっても分かりやすい言葉。
本当にナツミらしいよねって思う。
本当はすぐにでも。
いいよって答えて。
ナツミと恋人になれたらいいのにと思う。
でも……。
そういうわけにもいかない。
みんなの告白を聞いて。
それからしっかり考えないといけないから。
「ありがとう、ナツミ」
私はそう言うことしかできない。
「本当に嬉しいよ」
「あたしねっ!」
「うん」
「初めて見た時からいつきの事が好きだったんだよっ!」
「初めてって……あの公園?」
私の言葉にナツミは頷く。
何だかとっても昔のことのように思える。
「あの時にいつきを見てね」
「うん」
「何だかこの人だって直感的に思ったんだ」
「だから話しかけてきたの?」
「うん」
「それで同じ学校で同じクラスだったんだね」
「本当に運命かもって思ったっ!」
でも……。
そうナツミは小さく言う。
もしかしたら……。
ナツミは私とカナが恋人だって勘違いしてたから。
ずっと電話だけのつながりしかなかった。
その時のことを思い出してるのかもしれない。
「いつきはみんなと色々あったかもしれないけどねっ!」
ナツミはいつの間にか笑顔になってた。
そして……。
しっかり前を見て、みんなを引っ張っていくような。
いつものナツミのまま言った。
「いつきを最初に見つけたのはあたしなんだよっ!」
って。
その言葉は何だか凄く嬉しくて。
思わず涙が出そうになった。
「だからあたしはいつきのことが大好きっ!」
「本当にありがとう」
「お礼を言いたいのはわたし達だよっ!」
ナツミは扉を見ながら言う。
「もしいつきが違う人と恋人になっても告白して良かったって思うっ!」
「ナツミらしいね」
「みんなそう思ってるよっ!」
言いながら明るい笑顔。
何だかすっきりしたような。
そんな感じに見えた。
「それじゃ次の人と変わるねっ!」
「うん」
「今日は本当にありがとねっ!」
「うん」
「またねっ!」
そう言って。
ナツミは部室を出た。
またね……。
何だか凄くナツミらしい言葉。
やっぱり私は。
ナツミに凄く憧れてるんだなって分かった。
……
…………
………………
「こ、こんにちはですっ!」
「うん。こんにちはだね」
2人目はたまこだった。
見るからに緊張してて。
顔が赤くておどおどした感じで。
何だか初めて見たたまこを思い出すよね。
「あのっ! たまこはっ!」
「うん」
「いっくんの事が……だ、大好きですっ!」
すぐに言おうって消えてたんだって思う。
たまこは恥ずかしがり屋だから。
告白するのもとっても勇気がいることだって分かる。
それにたまこはとっても勇気があることも知ってる。
その勇気がなかったら。
今の私達の関係は絶対になかった。
「たまこはその……魅力とかそういうのは全然ないけど……」
そんなことないよって。
すぐに言いたかったけど。
私はぐっと我慢してたまこの言葉を聞いた。
「でもたまこは料理は得意ですっ!」
「うん」
「だからたまこはこれからずっとずっとっ!」
たまこが一歩私に近づく。
くりっとしら目で。
上目遣いで私を見ている。
「いっくんにたまこが作った料理を食べて欲しいですっ!」
たまこが作ってくれた料理を。
たまこと一緒に食べることができる。
それはとっても幸せなことだって考えなくても分かる。
「たまこができるのはそれぐらいですっ!」
すぐ近くにたまこがいる。
たまこの息遣いが伝わるぐらいに。
たまこは本当に可愛くて健気で愛おしくて。
すぐにでも抱きしめてあげたくなるのを我慢しなくちゃいけなかった。
「だけど……たまこはいっくんの恋人になりたいですっ!」
そう言ってくるりと振り返って扉の方を見る。
「ふつつか者ですがどうかご検討をお願いしますっ!」
そう言って。
とてとてって感じで。
たまこは走って扉を開けて……。
そのまま出て行ってしまった。
とっても恥ずかしかったから。
勢いで言って勢いで出ていったんだって思う。
最後の言葉も何だか変だったし……。
でも……。
そういうのもとっても可愛くて。
一緒にいたら凄く楽しんだろうなって。
何だかほっこりするような気持ちになれた。
……
…………
………‥……
3番めはカナだった。
ゆっくり入ってきて、私の前に立っている。
カナは前の2人と違って。
あんまり緊張とか照れとかはない感じだった。
そんなカナはぼそりと言う。
「わたしね、本当は告白しないようにって思ってたんだ」
「それは……みんなに酷いことをしたから?」
私の言葉にカナは頷いた。
「わたしなんかにいっちゃんと恋人になる権利なんてないって……」
「そんなことは……」
ないよって言いたかった。
でも……。
私がそう言っても意味がないことも分かってた。
だから代わりに言った。
「でも、今日こうやって告白してくれるんだよね」
「うん」
また、静かに。
カナは頷いた。
「色々あったんだよ」
「そうなんだね」
きっと。
前に聞いたアイコの声も。
その色々の1つなんだろうなって思う。
「アイコさんに怒ってもらえてナツミさんに慰めてもらえててたまこさんに励ましてもらえて……」
私の知らないところでも。
4人の世界は回ってたんだなって。
改めて思った。
「わたしはいっちゃんに告白することができるんだ」
「うん」
「だから、言うね」
「……うん」
「わたしはいっちゃんの事が大好きです」
真っ直ぐな目でカナは私を見てくれる。
いつも私のそばにいてくれた。
カナがいてくれたから私は……。
「ずっとずっといっちゃんの横を歩きたいです」
カナの目から涙が流れる。
「いっちゃん……この世界に生まれてきてくれて……ありがとう」
「私も同じこと思ってるよ」
私は思い出す。
カナとのこれまでの日々を。
「あの落書きを書いてくれなかったら、カナがいなかったら、私は自殺してた」
地球人を信じれなくて。
悪夢に心を支配されて。
でも……。
そうならなかったのは、カナがいたから。
「カナがいたから今の私がいる。そのことは忘れないで欲しいな」
だから……。
自分を責めるのは辞めてほしいって思う。
「今の私が言うのも何だけど……」
「うん」
「一緒にもっともっと世界を好きになろう」
世界を信用できなかった私。
世界が嫌いだったカナ。
その2人だからこそ。
見える世界がきっとあるって思う。
「わたしももっと世界を知りたいって思う」
カナは涙を拭って私を見る。
「いっちゃん、本当にありがとうっ!」
さっきまでとは違って。
明るい笑顔と声だった。
何だか凄く吹っ切れたような表情。
「それじゃアイコさんを呼んでくるねっ!」
「うん」
みんな私に告白して。
心の中にあったもやもやとかが消えてるのかな?
私がみんなに告白して安心できたみたいに。
もしそうなら。
みんなに恩返しができてるみたいで。
嬉しいよねって思えた。
……
…………
………………
「本当に貧乏くじをひいたわ」
何だかいつもの感じだった。
アイコは不満そうな表情で私の前に立ってる。
「最後だなんて完全にオチ扱いじゃない」
「そんなことはないと思うけどな」
って私は思わず苦笑い。
今までの雰囲気と違いすぎて。
何だか変な感じがする。
「今まで真面目な告白されてきたんでしょ」
「それは……そうだけど」
「アタシが同じようにやっても意味がないじゃない」
「そんなことはないよ」
アイコに告白されたら。
やっぱり嬉しいって思う。
「だいたいもう誰にしようかとか決めてるんじゃないの?」
「それは……まだだよ」
みんな大好きだから。
その中の1人を選ぶのは凄く難しいって思う。
「でしょうね」
言いながらアイコは微笑む。
「それならアタシも告白をちゃちゃっと終わらせるわ」
「ちゃちゃっとって……」
きっと照れ隠しなんだろうって思う。
そういうのも凄くアイコらしくて。
何だか嬉しい。
「でもアタシは何度も大好きとか言ってるし言われてるのが問題なのよね」
「それは……そうだったね」
「だから違う言葉を言うわ」
アイコは私に近づいてくる。
顔を赤くして、いつもと違う様子。
「1度しか言わないからちゃんと聞きなさいよ」
そして。
私のすぐ前で止まって言った。
「いっき、愛してるわ」




