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学校へ向かう通学路。
昼はそんなにだけど。
朝と夜は寒く感じる。
そんな時期になってる。
吐くと白くなる息は。
しっかりと季節が変わってることを教えてくれる。
あっという間に本格的な冬になって。
冬休みなんてもうすぐ来ちゃうかもしれない。
12月にはみんなで天体観測に行く予定。
今はそれを楽しみに受験勉強を頑張ってる。
近頃は教室もぴりぴりってしてて。
私も受験が近づいてるから。
さすがに何時も通りってわけじゃない。
本当に大丈夫かなって心配になったり。
勉強疲れとかで食欲が少し減ってる気がする。
でも……。
そんな私に気を使ってくれるのがお母さんとたまこ。
私が何も言わなくても。
私が食べたいものを作ってくれる。
だから私は本当に恵まれてるよねって思った。
そして……。
カナ、ナツミ、たまこ、アイコ。
この4人も最近はちょっと変な感じがする。
妙に4人で固まって話をしてたりとか。
私が話をかけるとびっくりするとか。
最初は私が何かしたのかもって。
焦ってカナに聞いちゃったけど。
そういうのじゃないってカナは必死に言ってくれた。
いっちゃんには何も悪いことなんてないよ。
って。
その目はどこまで真剣で。
その声は限りなく誠実なものに聞こえた。
だから、私はほっと安心することができた。
きっと、みんな。
卒業とか受験とか。
そういうのが近づいてきて思うところかあるんだろう。
今日のカナもちょっと上の空って感じで。
何だかぼんやりしてるような、考え事をしてるような。
そんな様子に見える。
いつもはお喋りしながら歩く通学路だけど。
今日は違っていた。
多分、きっと。
何か大事なことを考えてるよね。
そう思ってると……。
「いっちゃん」
横から声が聞こえた。
当たり前だけど、カナの声。
その声はやっぱり真剣で。
大事な話をするんだねってすぐに分かった。
「どうかしたの?」
だから私は。
自分の声があまり暗くならないうように気をつけた。
カナがどんな話をするのかは分からないけど。
大事な話ならちゃんと聞きたい。
それに。
何かお願いごとならできるだけ叶えてあげたい。
そう思ってる。
「えっと……今日は塾なかったよね」
「うん」
スケジュールを思い出して言う。
塾がないからといって勉強しないわけじゃないけど。
でも、比較的余裕がある日。
「どこかに買い物行くとか?」
「ううん、そういうのじゃなくて……」
何だかもじもじしてる感じ。
いつも堂々としてるカナには珍しい。
何だか照れてるような、恥ずかしがってるような。
そんな姿に見えた。
「今日の放課後に部室に来て欲しいんだ」
「部室?」
「うん。そこでわたし達、いっちゃんに話したいことがあるんだ」
私達って……。
その言葉で思い浮かぶのは。
やっぱりいつもの4人。
みんなが私に話したいことがある。
……どんな内容なのかは本当にさっぱりで。
「今はまだどんな話をするかとかは言えないんだけど……」
カナもそう言う。
放課後のお楽しみみたい。
でも……。
カナの様子を見るとサプライズパーティーとか。
そういう楽しいばっかりのイベントでもなさそう。
カナって案外表情とかが顔にでるから。
隠し事とか苦手そうだしね。
「うん。分かった」
でも……。
どんな内容か分からないでも。
私が断るはずがなかった。
「放課後に部室だね」
どんな話でもしっかり聞こう。
そう心に決める。
「ありがとう、いっちゃん」
「まだ私は何もしてないんだけどね」
でも……。
カナは安心した表情を見せてくれた。
私は何だか胸がどきどきした。
どんな話を聞くのかは分からないけど。
私の一生を左右しそうな、そんなことになりそう。
何だかよく分からないけど。
不思議と私はそう思えた。
……
…‥……
………………
「朝起きて勉強してるんだ」
「夜より朝の方が集中できるから」
いつもの階段の場所。
いつものように私はたまこと美香と3人で話をしていた。
美香はおにぎりを食べなくなったけど。
お弁当は前と同じように作ってもらってるみたい。
それは私も同じで。
今日もとっても美味しいって分かるお弁当をもらった。
お昼休みが本当に楽しみだよねって思う。
「朝練がなくなっても自然と目が覚めるし」
「真面目なんだね」
「することがないだけ」
言いながら美香は大きく背伸びをする。
一所懸命やってた部活がなくなって。
ぽっかりと空いた穴を勉強で埋めてるんだろうって思う。
「でもアタシが真面目に受験勉強するとは思わなったけど」
「あの時の美香が自分を見たらびっくりするだろうね」
思わず思い出して。
本当に変わったよねって。
改めて思う。
「うるさいな」
って拗ねるようにいう美香。
きっといい記憶でもないんだろうなって分かった。
「だいたい何で志望大学が被ってるんだよ」
睨むように私を見てる。
まだそのことを気にしてるんだって。
私は何だか呆れちゃうような気分になる。
「大学までいつきと一緒なんて嫌なんだけど」
「言っておくけど私の方が先に決めてたんだからね」
「まぁいつきが受かると決まったわけじゃないしな」
「それは美香もでしょ」
「アタシはすでにA判定だから」
勝ち誇ったような笑み。
顔も格好良くて、スタイルも良くて。
それに運動神経も良くて、頭もそれなりに良くて。
本当に色々と羨ましいよねって思う。
羨ましいっていうよりずるいっていうのが大きいけど。
「私ももうすぐA判定だからね」
苦手なところを重点的にできてるおかけで。
最近はわりと点数が伸びてきてる。
「だから大学でもよろしくね」
「よろしくするわけないだろ」
「受験の日は一緒に大学行く?」
「行くわけないだろ」
どこまでも素直じゃないなって思う。
でも……。
同じ素直じゃないでもアイコと何か違うよねって思う。
美香の場合はかなり本音も混じってるってところが特に。
そして……。
私は横目でたまこを見た。
たまこは何だかもじもじした感じで私と美香を見てる。
いつもは積極的に会話に参加するし。
美香もいつもは私と話すよりたまこと話す方が多い。
でも、今日は違う。
挨拶とかはちゃんとしたけど、
その後はあんまり話さない感じ。
通学路でのカナと似てるなって思った。
それに、きっと。
カナが言ってた放課後の話っていうのが関係してるんだろうって思う。
美香がたまこに声をかけないところを見ると。
美香もそのことを知ってて。
しかもどんな内容の話なのかも知ってるのかも。
だけど、だからこそ。
そんなに悪い方面な話でもないんだなって分かった。
もしそうなら美香が黙ってないだろうしね。
相変わらずどんな話なのかは予想もつかないけど。
今はたまにの美香との会話を楽しもうって思った。
「そういえば美香の好きな食べ物って何?」
「なんでいつきに教えなきゃいけないんだよ」
「今度、英語を教えてくれない?」
「勉強ぐらい自分でやれ」
「次の日曜日に遊びに行かない?」
「絶対に嫌だ」
……美香の方はそう思ってないみたいだけど。
……
…………
………………
ちょっと眠い休み時間。
放課後のことが気になっちゃって。
授業もあんまり集中できてない。
みんなが私に話があるって言うけど。
やっぱりどんな内容なのかは考えても分からない。
「今日もぼけっとしてたわね」
そんな私に声をかけたのはアイコ。
呆れたような声がした。
「それで受験は大丈夫なの?」
「最近はぼけっとなんてしてなかったと思うけど」
今日はしてたけど、しょうがないよね。
汚い字だけど一応ノートは取れてるし。
「アイコの方こそ受験勉強は大丈夫なの?」
「そんなの大丈夫に決まってるじゃない」
「まぁそうだよね」
アイコは頭いいし。
その上とっても勉強も頑張ってるから。
「流石に今は漫画を書くのは我慢してるけど」
「そうなんだね」
「ネームはたまに書いてるけど」
アイコの中では漫画とネームは別みたい。
漫画を書くのはとっても大変だから。
短時間でできるネームを優先してるのかも。
「いつきは小説書いてるの?」
「たまにね」
息抜きっていうか……。
書かないと集中できないときに書くって感じ。
文化祭のやらなきゃっていう気持ちが。
まだ少し残ってるから。
「ずっと勉強してたら持たないからね」
「それはそうね」
何事もバランスが大事。
本当に追い込まれたらそうも言ってられないんだろうけど。
幸いにも余裕はある。
塾に行ってて良かったなって凄く思う。
受験勉強を始めるのが遅かったら。
今頃とっても大変だっただろうからね。
その点はやっぱり。
早めに将来やりたいことを見つけれたのが大きいと思う。
「……でも先に謝っておくわ」
「謝る?」
「カナから聞いたでしょ?」
「……うん」
今日の放課後のことだって分かった。
「いっきの負担になるかもしれないから」
「そうなんだね」
でも、それなら大丈夫だって思った。
みんなのおかげで今の私がいる。
だから……。
ちょっとぐらいみんなの負担が軽くなるなら。
私にできることならやりたいって思った。
「どんな内容かは……教えてくれないよね」
「当たり前じゃない」
真剣な表情でアイコは言う。
「せいぜい楽しみにしておくことね」
「それなりにね」
だってどんな話なのかさっぱりだから。
でも……。
やっぱりそんなに悪い話じゃなさそう。
アイコは何時も通りの感じに見えるしね。
だからアイコの言う通り。
楽しみにしておくって感じなのがいいかもねって思った。
……
…………
………………
昼休み。
特に約束とかはしてなかったけど。
私は部室でお弁当を食べていた。
部室に来た時は誰もいなくて。
たまにはこんな日もあるよねって。
そう思いながら私はお弁当を食べていた。
たまこが作ってくれたお弁当はやっぱり美味しくて。
いくらでも食べれちゃうよね。
そう考えながら卵焼きを飲み込んだ時だった。
「今日はいつき1人なの?」
扉が開いてナツミが部室に来たのは。
「うん。そうだよ」
「そうなんだねっ!」
ナツミは何だかおそるおそるって感じで。
私の前の椅子に座った。
今日のお昼ご飯は購買部で買ったみたい。
カレーパンとサンドイッチとフルーツジュースを持ってる。
今もたくさん運動してるのかも。
ナツミはたくさん食べても体型が変わらないのが羨ましい。
いつもはたくさんお喋りをしながら食べるんだけど。
やっぱり今日は違う感じ。
それはカナやたまこと似たような雰囲気。
やっぱり今日の放課後にはナツミも関わってるんだねって。
ナツミの様子から分かった。
アイコは何時も通りに近い感じだったけど。
もしかしたら無理してたのかも。
アイコってそういうのを過剰に隠そうとしてるから。
でも……。
何だか凄く食べづらい感じ。
ナツミが何だか顔を赤くして。
上目遣いに私を見ながらサンドイッチを食べてるから。
何だかその姿はとても女の子っぽくて。
思わずどきりってしてしまう。
少なくとも普段のナツミが見せる姿じゃないよねって思った。
「そういえばさ」
何だか変な空気になってしまったから。
私から声をかけることにした。
何で今日の日に限って2人っきりになっちゃったんだろう。
「うんっ!」
「最近は新しいアニメ見れてないけど何か面白いのあった?」
「そうだねっ!」
ナツミの表情がぱっと明るくなる。
「わたしが見てる中ではねっ!」
そしてナツミが好きなアニメを教えてくれた。
話してるうちにいつもの感じになっていって。
ナツミもリラックスしてるみたいだった。
「前にみたアニメはBGM代わりに流したりしてるんだけどね」
「それで集中力途切れないの?」
「日常系のアニメだからね」
ちょっと眠い時に効果あるやり方。
ラジオを聞きながらするのと同じだよねって思う。
「受験って本当に大変だよねっ!」
「うん。でも夢のためだからね」
「だねっ!」
何も目標とかなかったらこんなに頑張れない。
私はそんな感じだよねって分かってる。
基本はぐーたらしたいからね。
それからもアニメの話とかして盛り上がった。
最近はナツミと2人になることが少なかったから。
とっても楽しい時間を過ごせたなって思う。
「もうすぐ時間だねっ!」
「うん。教室に戻らなきゃね」
私とナツミは同時に立ち上がった。
あと少ししたら。
またここでみんなと話をする。
早くその時間が来てほしいような、そうじゃないような。
何だか不思議な気持ちだった。
……
…………
………………
そして放課後。
「アタシ達は先に言ってるから」
「準備ができたら呼んでくれるんだよね?」
「そうよ」
「分かった」
先にアイコが教室を出る。
とうとうその時が来たって感じがする。
結局、どんな話なのかは分からなかったけど。
相変わらず思いつきもしないでいた。
でも、それももうすぐ分かること。
ドキドキしながら連絡を待ってると。
思ったよりも早くメッセージが届いた。
部室に来て。
アイコらしい簡潔なメッセージ。
4人は今部室にいる。
みんなどんな表情で、どんな話をしてるんだろう。
そんなことを考えながら。
私は鞄を持って部室へと向かった。




