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次はどこに行こうとか、あれが美味しかったとか。

そんな声があちらこちらから声が聞こえる。

通り過ぎる教室から聞こえるのは。

とっても張り切った呼び込みの声。

本当に文化祭っていう感じの雰囲気の学校。

そんな楽しさに包まれながら5人で廊下を歩いていた。

5人といってもみんなが並んで歩いてるわけじゃない。

そんな風に廊下とかを歩いたら邪魔になっちゃうしね。

私の前を歩くのがナツミとたまこの2人。

私の横にはアイコがいて。

私とアイコの少し後ろをカナが歩いてる。

カナはなんだか遠慮してるのかなって思って。

ちらりとカナを見てしまったけど。

カナは凄く楽しそうに私達を見ていて安心した。

楽しそうなのは前を歩く2人も同じ。

明るい笑顔でお互いのスマートフォンを見せあってる。

2人が見ているスマートフォンの画面は見えないけど。

さっきみんなで撮影したコスプレの写真を見てるって分かる。

2日目の文化祭が始まってすぐに漫研部に行った。

待ち構えるように部室にいた藍姫に手伝ってもらって。

みんなが衣装に着替えて写真を撮ってもらった。

自分たちのスマートフォンとか。

漫研部が持ってる何だか凄いカメラとかで。

コスプレするのは初めてだったし。

撮影会みたいにぱしゃぱしゃって写真を撮られるのも初めてだった。

だから最初は凄く恥ずかしいなって思ったけど。

何枚か撮られているうちに。

何だか凄く楽しいとか心地いい気持ちに慣れたのも本当のところ。

なんとなくな感じでやってみたコスプレ撮影会だったけど。

コスプレの楽しさってこういうのなんだねって分かって。

本当に行ってみて良かったなって思えた。

みんなの可愛い格好とかも見れたしね。

藍姫にもとっても感謝されたし。

でも……。

あの時の藍姫は凄く興奮していて何だか怖かったけど……。

まぁみんな楽しそうにしてたからいいよね。

って思うけど。

アイコは私の横を歩きながら。


「本当に最悪だったわ……」


不満げな表情でぶつぶつと何か言ってる。

やっぱりコスプレしたのが不本意だったみたい。

でもちゃんと衣装に着替えて。

みんなと一緒にポーズを決めたりして。

ちゃんと撮影会をしてくれたから優しいよねって思う。

藍姫も家宝ができたみたいで凄く嬉しそうだった。


「でもすっごく似合ってたじゃない」


私はアイコのコスプレ姿を見ながら言う。

本当はスマートフォンで見たいけど。

きっと怒られるだろうなって思ったから我慢。


「凄く魔女っ子っぽくて良かったよ」


って褒めるけど。

やっぱりアイコは嫌そうな表情。

でも、きっと。

照れ隠しでそんな表情をしてるんだろうなって。

そう分かると何だか可愛い表情に見えるから不思議。


「でもアイコの性格はハードゴア・アリスっていうよりリップルみたいだよね」


「アタシはあんなにツンツンしてないわよ」


「そうかな」


「だいたいいっきも中身はウィンタープリズンとは真逆じゃない」


「それもそうだね」


言いながら思わず笑みが溢れる。

同じことを藍姫にも言われたから。

私達がしたのは魔法少女育成計画のコスプレ。

魔法少女育成計画の中でも無印と呼ばれるキャラのもの。

魔法少女育成計画は魔法少女が殺し合いとかする残酷なライトノベルだけど。

それぞれのキャラがしっかり描かれてて凄く好きな作品。

本編の他に短編集があって。

短編集は魔法少女の日常がメインだから。

私はそっちの方が好みだったりする。


「でもみんな本当に似合ったよね」


私はヴェズ・ウィンタープリズン。

カナはシスターナナ。

アイコはハードゴア・アリス。

ナツミはトップスピード。

たまこはたま。

って感じでコスプレをした。

みんな似合ってたけど。

特にたまこのたまはとっても可愛くて。

たくさんの人から写真を撮らせてってお願いされるぐらいだった。

きっとたまこのファンが多い運動部の人達が知ったら。

何だか凄いことになりそうだなって思った。


「似合う似合わないより露出がそんなに多くないコスプレで良かったわ」


「それはあるよね」


ウィンタープリズンの衣装は黒いコートだったから。

露出とかで恥ずかしさとかはなかった。

そのかわりに凄く暑かったけど……。


「カナとかナツミとかよくあんな服を着れたなって思うわ」


「ナツミはのりのりだったけどね」


箒がなかったのが不満だったみたい。

危険防止のためにそういうのは自粛してるって言ってた。

ハードゴア・アリスのぬいぐるみはちゃんとあったから。

アイコに無理やり抱こっさせていた。


「いっきもリップルにすればよかったのに」


「どっちか迷ったんだけど」


似合うのはどっちかかなって私も思った。

トップスピードの相棒がリップル。

ウィンタープリズンの相棒がシスターナナ。

そういう意味でもとっても悩んだ。

でもリップルは露出が多い格好だったし……。

そういうのはやっぱり恥ずかしいなって思う。

だから最終的にはウィンタープリズンを選んだ感じ。


「カナがシスターナナならウィンタープリズンかなって」


「まぁ2人とも似合ってたわよ」


っていうけど。

やっぱり不満そうなアイコの声と表情。

もしかしたらって思う。

気を抜いたら笑顔になっちゃうから。

無理に気を入れてそんな表情をしてるんじゃないかって。


「アイコも凄く似合ってたよ」


「そう言われたってもうコスプレはしないわ」


言いながらひらひらと手をふる。


「ナツミはすっかりはまりそうだけど」


「藍姫とイベントの話とかしてたもんね」


藍姫とナツミ。

今日が初対面だったけどすぐに仲良くなってた。

コスプレっていう共通の話題があったのもそうだけど。

ナツミの自然体な明るさのおかげだって思う。


「それでこれからどうするの?」


「そうだね」


言いながら私は時計を見る。

軽音部のライブが始まる前に体育館に移動したいけど。

まだ少し時間がある。


「アイコは何か行きたいところとかある?」


「行きたいところ?」


「コスプレに付き合ってくれたから次がアイコの行きたいところでいいよ」


3人にもそんな話をしてる。

コスプレの後はアイコに決めてもらおうって。


「そうね……」


少し考えた後。

アイコが嬉しそうに、意地悪そうに微笑む。


「それなら行きたいところがあるわ」


何だか嫌な予感がした。


「奈央達のクラスがやってるやつ」


「それって……」


お化け屋敷だった気がする。

みんな張り切って作ってるって奈央ちゃんが言ってた。

凄く怖い本格的な物にするって……。

アイコはちゃんと覚えてたみたい。

奈央ちゃん達がお化け屋敷をするってこともそうだけど。

私がお化け屋敷が苦手だってことも。

喜んでいいことなのかはちょっと分からないけど……。


「次に行くところが決まったわよっ!」


私が返事とかをする前にアイコが言った。

その声でナツミとたまこが振り返る。

みんなお化け屋敷とか平気そうだし、好きそう。

苦手なのは多分、私だけ。

でも……いいかなって思った。

みんなで行くなら楽しいかもしれないし。

それにお化け屋敷って言っても高校生が作ったもの。

そんなに怖かったり驚いたりなんてことはないよねって思った。


……

…………

………………


……凄く怖かった。

物凄く怖いお化け屋敷だった。

カナと行った遊園地のお化け屋敷よりずっと……。


「凄く怖かったねっ!」


明るい声で言うナツミ。

私達はお化け屋敷を出た後に。

それぞれで食べたいものを買って食堂に来てた。

文化祭中の食堂は休憩スペースになってて。

たくさんの人が買った食べ物とかを持って集まっている。

私の正面にナツミが座ってて。

私の横にアイコ、その横にカナ。

そしてナツミの横にたまこが座ってる。

みんな話すことはやっぱりお化け屋敷のこと。

それぐらい凄いお化け屋敷だった。


「あんなに怖いお化け屋敷だとは思わなかったよっ!」


「そうだよね」


思い出しただけでぞっとする。

大きな音が苦手だったけど。

奈央ちゃん達のお化け屋敷は純粋に怖さを追求したものだった。


「きっとホラーが凄く好きな人が作ってるんだろうね」


「だねっ!」


今は明るく喋ってるナツミだけど。

お化け屋敷の中ではとっても怖がってた。

アイコも強がっていたけど同じ。

悲鳴とかをあげるのをぐっと我慢している様子だった。

でも……。

カナとたまこは楽しみながら歩いてる感じがして。

2人は本当に怖いのとか大丈夫なんだなって思う。

カナはそんな感じがするけど。

たまこはやっぱり意外だなって思う。


「影に隠れてわって驚かすだけって思ってた」


「文化祭のお化け屋敷ってそんな感じだよね」


「そう思う」


それだけでもびっくりして怖かったって思う。

でも、奈央ちゃん達のお化け屋敷は違った。

そういうのだけじゃなかった。


「音と暗い雰囲気であんなに怖くなるなんて凄いよね」


思い出してまたぶるってなる。


「色々なところにスピーカーが仕掛けてあったんだよねっ!」


「うん。それで裏に隠れてる人が音を流してたんだって思う」


入った瞬間から女の人のすすり泣く声が聞こえる。

時折聞こえる悲鳴や助けを呼ぶ声が恐怖心を煽る。

一歩進むごとに聞こえる不気味な声が足をすくませる。

ちょっと油断したところでわっと出てくるお化け役の人達。

そして最後に聞こえた呪ってやるという小さな声。

思い出しただけでもやっぱりぞっとする。

みんなが一緒だったから良かったけど。

たまこが手をつないでくれたから良かったけど。

1人だったらきっとその場にしゃがみ込んで歩けなくなったって思う。

もっとも……。

1人だったら絶対にお化け屋敷になんて入らないけど。


「そういえば聞いたんだけど……」


「何を?」


「あのお化け屋敷、1日目はもっと怖かったんだって」


「……本当?」


あれ以上怖いなんて本当に信じられない。


「お化け屋敷が怖かったってバスケ部の人に送ったらさ」


「うん」


「そんな感じのメッセージが来たんだ」


言いながらナツミはスマートフォンを見る。

ナツミは買ってきたうどんとお好み焼きを食べ終えている。

私はカレーを買ったけどまだ食べ終えてない。

怖さが残っててあんまり食欲がない感じがする。


「えっと……お化け屋敷の途中で変なスペースがあったじゃない」


「うん。何だか血糊があったところだよね」


その血糊がとっても不気味で怖かったのをはっきり覚えてる。

怖かったけど今思えばやっぱりがらんとした変なスペースだったよね。


「あそこにリアルな死体の真似した人がいたんだって」


「……それは怖いね」


「他にも音声が変わってたり壁の文字が消されたりとか……」


「怖すぎてクレームが来たのかな?」


「やりすぎって文化祭実行委員に怒られたみたい」


「あれ以上ってなるとそうなるよね」


作った人たちは残念だったかもしれない。

委員会の人達を凄く怖がらせたって喜んでるかもだけど。

あのお化け屋敷より怖いお化け屋敷。

絶対に入りたくないけど……。

何だかちょっと気になるのが本音だなって思う。


「でもやっぱり思うんだよね」


私はカレーを一口食べて言う。

うん、しっかり美味しい。

そろそろ怖さも薄れてきたのが実感できる。

早く食べないと軽音部のライブに間に合わないから。

ちょっとだけ急ごうって思う。


「この学校って凄い人が多いよねって」


あのお化け屋敷を作った人は誰だか知らない。

きっと、知らないまま卒業しちゃうんだろうって思う。


「だよねっ! 本当にいい学校だよねっ!」


「うん。色々な人がいてこの学校はできてるんだなって思う」


とっても微力だけど。

私もその一員になれてるのがやっぱり嬉しい。


「これから見に行くライブとか舞台なんかもそうだよね」


にかって笑いながらナツミは言った。

その表情だけでとっても楽しみにしてるんだなって分かる。


「美香さんだっけ?」


「うん」


「学校の有名人だもんね」


「あんなに有名になるとは思わなかったけどね」


少しの間は悪い意味で有名だった。

それを努力で変えた美香は本当に凄いよね。

たまこが自慢の幼馴染だって思うのも当たり前って思う。

そして、今日は。

美香達の舞台を見ることができる。

全国大会に行ったことでみんなの期待が高まってるけど。

その期待を軽々と飛び越えて行きそう。


「その前にはありさっちのライブもあるしねっ!」


「うん。最後の文化祭だって凄く張り切ってる」


亜里沙の場合は張り切りが空回りしそう。

でも、きっと。

最後はびしっと決めてくれるよね。

決めれなくても亜里沙らしくていいとは思うけど。


「何だかわくわくでドキドキしてきたっ!」


「うん。私も」


自然と食べるペースも早くなる。

だって、早く体育館に行きたい。

そう思っちゃったから。

そして……。

まだ食べ終えてないのが私だけって気づいてしまって。

急いで食べたらじゃがいもが喉に詰まりそうになった。

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