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第26話 最強ボスと人魔模擬大戦-1-


【イベント『人魔模擬大戦』開始30分前となりますので『魔族陣営』のプレイヤーには特殊な仮面が配布されます。イベント開始までもう少しお待ちください。】


 

 イベント特殊ステージに集まったすべてのプレイヤーに聞こえるようにアナウンスがされる。メアリーのいる『魔族陣営』も時間が近づくにつれてどんどん殺気立っている。配布された仮面はつけると名前と顔が隠されるという効果があるらしく、これで人族に紛れているプレイヤーも安全にイベントに望めるようになった。


「血を見せろ!肉を割かせろ!」


「皆殺しにしてやるぜひゃっは~!」


 少々危ないプレイヤーも見かけるがそれは御愛嬌ということでメアリーは見なかったことにした。しかし、横にいるメイはそうともいかず、メアリーの姿を見てからはトーマの傍を離れメアリーの服を掴んでいる。


「あとちょっとの辛抱だから我慢しようね~。それにしても『魔族陣営』ってこんなにいたんだねぇ。」


「全プレイヤーがこのステージにいるせいですね。宝玉のイベントの時はいくつものサーバーで分けられているようでしたので。」

 

「あ、そうなんだ。じゃあ、あそこで一緒のサーバーにいたのって奇跡だったんだね。ありがとうトーマ。」


 メイの頭をなでながら開始の時間まで待つメアリー。時折絡んでくる猿どもを吹き飛ばしていると、何やら黒い天使の輪っかを頭に漂わせた少年がメアリーの元に近づいてきた。


「お久しぶりです。執行者様。」


「ん?久しぶり?こんな輪っかの子見たことあるっけ?」


 いくら何千何万というプレイヤーを倒してきたメアリーでもここまで珍しいプレイヤーを思い出せないわけがない。試しに自身の手で輪っかの部分を隠してみると一瞬だけなんか見覚えのあるような感じがした。


「ごめんやっぱリ思い出せないや。」


 結局数分考えても答えが出なかったメアリーは素直に輪っかをつけた少年に聞くこととした。少年はものすごく悲しそうな顔をしていたがそれでもしっかりと質問へ答えた。


「初めてこのゲームをプレイしていたときにガラの悪い連中に絡まれていたところを助けていただいた者ですよ。」


「……あ~、あ~!あの子か!君もおんなじ陣営だったんだね!いや~助けた甲斐があったよ!」


 「まあもともとは人族サイドだったんですけどね。いつか執行者様に恩を返したくて天使族になった後、堕天して堕天使族になったんです!」


「ん!?」


 いきなり明かされた衝撃の事実にメアリーは思わず言葉を失った。横で聞いていたメイは何のことかわからずはてなを浮かべていたが、その横にいたトーマはメアリー以上に驚きの表情を見せた。


「ど、どうやって陣営を変更したんですか!?初めの設定以外できないはずでは!?それに……」


「はい、ストップトーマ。もうすぐイベント始まるし、後ででいいでしょ。今は仲間、それに変にがっつくと嫌われちゃうよ。」

 

「いや、でも!……う~ん。分かりました。取り乱してしまって申し訳ありません。」


「いえいえ、執行者様の友人は僕にとっての恩人みたいなものです。どうぞお気になさらず。」


 メアリーは、メイとはまた違う、何か狂気じみた崇拝のようなものを感じた。ただ、こちらに危害がないようなので、ひとまず置いておくことにする。


「あ、失礼しました!自己紹介がまだでしたね。僕の名前はユウキと申します。よろしくお願いします。執行者様とそのお連れ様。」

 

 「よろしくユウキ君。知ってるかもしれないけど私はメアリー。ぜひ執行者様じゃなくてこっちの名前で呼んでほしいな。」


 「身に余る光栄。感謝いたします。」


 メアリーに続いてメイ、トーマが挨拶を済ませると開始の時刻まで残り数十秒というところまで差し掛かっていた。


「よし、この4人でがんばろ~!」


「「「お~!」」」


 4人とともにイベント開始の鐘の音が辺りに鳴り響く。


 ――と同時にメアリーたちを狙っていくつもの魔法が襲い掛かった。

 

「危ないじゃない。敵はあっちのはずよ?」


 どうやら狙われているのはメアリーだけではないようだ。あちこちでいくつも魔法の音が鳴り響いている。


 開始時点から鳴り響く『魔族陣営』による『魔族陣営』の奇襲。一瞬愚か者が暴れまわっているだけかのように見えるそれだが、最低限の統率が見て取れる。


「全く、悪魔より悪魔みたいなことしてるんじゃないのあの男。」


 メアリーは自分たちを狙ってきたプレイヤーを排除しながら、この作戦を企てた憎き敵を思い浮かべる。


「私先にアルバートって男を殴ってくるから3人で裏切り者を排除しておいて!吸血女王の飛翔(クイーン・バタフライ)


 そう言い残して空高く飛び立つメアリー。残された3人は無茶な要求とすら感じられるものを喜々として受け入れる。


「お掃除の時間なのです!」


 こうして、裏切り者を排除に一番の貢献をしたメイは、小さな英雄として一部のプレイヤーから崇められることとなった。


 



 

 「さて、目的のお城はあそこかな~。」


 少し離れたところ、飛んで大体5分くらいで大きなお城がメアリーの視界に写った。既に何人ものプレイヤーを上空から確認しているメアリー。一旦は無視をしてお城を目指すが、その途中で大きな川が流れているのを発見した。


「なるほど、向こうとこっちで随分と差があるんだね。」


 メアリーがリスポーンした場所は何もなく、何なら地面はでこぼこでところどころにひびが入っているような不毛の大地、それは川を境目として真逆の緑が広がる豊穣の大地へと変化していった。


 プレイヤーは川を渡るのに苦戦をしているらしく、川を過ぎ去ったあたりからたくさんのプレイヤーが見えていった。


「うわっ、何あの統率。上から見ても美しすぎでしょ。厄介そうだなあ。」


 遥か上空から見るだけでも明らかに格の違うプレイヤーというのは目に入る。メアリーは気づかれないようにそーっと上空を進んでいった。


「よっしゃぁ殴り込みじゃあ!」


 城の上空に来ればこちらのもの。メアリーは大胆にもお城で一番デカいであろうステンドガラスを破壊しながらお城の中に侵入していった。


「ビィ~ンゴ!やっぱりお城に籠っていると思ったよ。それじゃあ覚悟はいい?」


「っち、正面から来いや、イカレラスボスが。いいぜ、ここでお前をボコボコにぶちのめしてやるぜ。」


 アルバートと残り6名のプレイヤー。1人は私に初めて正々堂々と挑んできて驚異的なスピードに圧倒した『ケイトラ』だ。残りは見たことがないがそれでも油断のできないプレイヤーということは一目で見ただけで理解した。


「再戦だ。執行者、今度こそ、お前を完膚なきまでぶち殺してやらぁ。」


「高々雑魚7人で私に勝とうなんて甘いんじゃない?それに仲間がいないと勝てないなんて相も変わらずかわいそうな人ねぇ~。」


「ぶち殺す!」


 ――戦いは両者の壮絶な舌戦から始まった。

お読み下さりありがとうございます!


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